ドッグフードの成分表示(粗灰分)

ドッグフードの成分表示(粗灰分)

ワンちゃんや私たちの健康維持に欠かせない栄養素である「ミネラル」は、別名を「灰分(かいぶん)」や「無機質」といいます。 「灰分」とは、食べ物を燃焼させた後に残る灰の中に、大量のミネラル類が含有されていることから、名付けられました。 ドッグフードのパッケージには、「ミネラルがどの程度含まれているか」を必ず表示しなければならないことになっています。 その際の表示名は「粗灰分(そかいぶん)」です。 ここでは、「灰分」に「粗」を付けて表示する理由や、保証値の記述方法に関する決まり事、また、灰分(ミネラル)の種類などをご紹介していきたいと思います。

粗灰分の意味と表示方法

粗灰分は「ミネラル類のおよその量」を意味する

ドッグフードのパッケージには、「タンパク質」、「脂肪」、「灰分」、「繊維」、「水」の5種類が、どのくらいの割合で含まれているかが表示されています。 これは、ペットフード安全法( 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律 )(※1)という法律で定められているため、どのようなフードにも必ず記載されていなければなりません。 5つの栄養素は、それぞれの性質に合わせた測定方法によって含有量が求められ、「保証分析値」としてフードパッケージに記載されます。

※1 ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)・・・日本国内で飼育されている犬と猫の健康を、粗悪なペットフードの害から守るための法律です。2009年6月1日より施行されました。ペットフードのパッケージに必ず記載しなければならない項目、使用してよい添加物の量や種類(犬用、猫用によって若干の差異があります)、違反品が出た場合の対処法など、さまざまなことが定められています。この法律ができたきっかけは、2007年に起きた、メラミン入りのペットフードで多くの動物たちに被害が出た事件です。 ペットフード安全法に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。→ドッグフードに関する法律

ドッグフードの灰分(ミネラル)含有率の求め方は、550~600℃もの高温で、一定量のドッグフードを燃やし、燃え残った灰が冷えてからその分量を測定します。 この灰の構成成分のほとんどはミネラルです。 ところが灰の中には、燃え切らなかった炭素がわずかに残っていることがあります。炭素は有機物を構成する成分であり、ミネラルには該当しません。 さらに、本来であればミネラルの一部として測定しなければならない塩素やイオウが失われてしまっています。 つまり、ドッグフードを燃やすことによって得られる灰は、「大部分はミネラルであるけれども、一部が失われていたり、それ以外の物質が混ざった状態」なのです。 この灰の重量をまとめて測定した値が、粗灰分として表示されます。 すなわち「粗灰分」の「」とは、「純粋なミネラルだけではなく、ごくわずかに他の物質も混入した値です」ということを現しているのです。

「粗」は、「粗い」や「欠陥・欠点」、「おおざっぱ」など、あまり良い意味を持たない漢字です。 そのため、「粗灰分」という言葉を目にして、「体に良くない成分」や「品質が悪いミネラル」といったイメージを持ってしまう方もいることでしょう。 しかしあくまでも「粗灰分」とは、「ミネラルのだいたいの割合はこのくらいですよ」ということを表現しているにすぎません。

粗灰分の割合は必ず「以下」で示される  

粗灰分の記載を見ると、「粗灰分・・・〇〇%以下」などと表示されていることに気付きます。 この表示方法も法律によって規定されており、メーカーが勝手に、「以下」を「以上」に書き換えたりすることはできません。 保証分析値に関する記述方法は、日本国内だけでなく、世界中で統一されています。 そのため、日本で販売されている外国製のドッグフードのパッケージにも、必ずこの方法でミネラル類の含有割合が載っているのです。 英語圏の記載では、「以下」は「min.」と表示されています。

保証値を示すことを定められている5つの栄養素のうち、含有割合が「以下」で表現される成分は、灰分と繊維、水の3種類です。 これら三つの栄養素は、ドッグフードに過剰に配合することにより、他の栄養素の体内吸収を阻害したり、フード自体の栄養価の低下を招くリスクがあります。 例えば、ミネラルの一種であるリンを多く摂り過ぎるとカルシウムと結合し、吸収率を低下させます。そして、そのリンもまた、過剰な食物繊維によって吸収が妨げられるのです。 鉄分は亜鉛や銅と競合し、互いに吸収を邪魔し合います。 また、フード内の水分が多いということは、その分他の栄養素(タンパク質や脂質など)の含有量が減るということです。したがって、大量に食べなければ栄養素やカロリーが摂取できません。

灰分も繊維も水も、ワンちゃんが生きていく上では欠かすことのできない成分です。 しかしこのように、過剰摂取やそれぞれの供給バランスが崩れることにより、犬の要求量を満たすだけの栄養が補給できない恐れがあるのです。 したがって、これらの栄養素は、「たっぷりと入っていたほうがよい」ものではありません。 そのため、「〇〇%以下」という表現を用いて、「これ以上は含まれていません」ということを保証しているのです。

対して、タンパク質と脂肪は、「以上(英語ではmax.)」で表示しなければなりません。 タンパク質はワンちゃんの体を構成するための大切な材料となり、多くの量が必要です。 私たちの間では避けられることの多い脂肪も、人間よりも活発に動き、カロリーを消費しやすいワンちゃんたちにとっては、重要なエネルギー源となります。 体の維持や動力源といった最も基本的な役割を持つこれら2種類の栄養素は、いわばワンちゃんの命の源です。そのため、他の栄養素よりもさらに重要性が高いと考えられています。 保証値においては、タンパク質と脂肪の含有率を「〇〇%以上」と表記することによって、「最低でもこれくらいは含まれていますから、安心してください」と示しているのです。

灰分(ミネラル)の種類と働き

そもそも、灰分やミネラルと呼ばれる栄養素とは、どのようなものなのでしょうか。 ミネラルとは、動物の体を形作る炭素と酸素、水素、窒素の4元素を除いた、生体内に存在する元素の総称です。

ミネラルは、必須ミネラルと非必須ミネラルに分類されます。 例えば、Aというミネラルがあるとしましょう。 Aが欠乏することによってワンちゃんの体に異常が生じ、再びそのAを摂取させると症状が回復する場合、「Aは必須ミネラルである」と判断できます。 ミネラルの中には、生体に対する作用の全てが解明され尽くしていないものも存在するため、これから研究されていく中で、さらに必須ミネラルの種類が増える可能性も大いにあります。

さらに、必須ミネラルには、多量ミネラル微量ミネラルがあります。 多量ミネラルはその名の通り、動物の生体内に多く存在する、要求量が高いといった特徴を持つミネラルの総称です。 対して微量ミネラルは、ごくわずかな量があれば十分に効果を発揮できるミネラルを意味します。 各種ミネラルを多量と微量に分類するための厳格な基準は存在せず、おおまかに分けられているのが現状です。 ちなみに、粗灰分の値は、多量ミネラルと微量ミネラルを合わせた重さから算出されています。

以下に、多量ミネラルと微量ミネラルの種類と簡単な働きを表にしてみました。

多量ミネラルの種類とその働き (50音順)
名称
(カッコ内は元素記号)
主な働き
イオウ(S) 皮膚や爪を丈夫に保ち、ワンちゃんの被毛を艶やかにしてくれます。また、ビタミンB1などと結合して、エネルギーの産生を助けます。
塩素(Cl) 胃内の消化酵素の働きを助けたり、分泌を促します。
カリウム(K) 細胞の活動に必要な水分量を調整し、常に一定のバランスを保ちます。この働きには、カリウムとナトリウムが揃っていなければなりません。
カルシウム(Ca) リンと結合して丈夫な骨や歯を形成する栄養素です。心臓を始めとした筋肉の収縮や血液凝固などにも関与します。 カルシウムについての詳細は、こちらの記事をご覧ください。→ドッグフードの栄養添加物(炭酸カルシウム)
ナトリウム(Na) カリウムと協力して、体内の水分量を調節することで、細胞の正常な働きを維持するミネラルです。筋肉をスムーズに伸縮させる働きも持ちまます。
マグネシウム(Mg) 体内のナトリウムとカルシウムのバランスを調節し、血圧の上昇を抑えてくれます。また、頑丈な骨を作る際のサポート役にもなります。
リン(P) カルシウムとともにハイドロキシアパタイトを形成し、歯や骨の構成成分となります。また、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー源の材料にもなります。
微量ミネラルの種類とその働き (50音順)
名称
(カッコ内は元素記号)
主な働き
亜鉛(Zn) 体の中でさまざまな働きを担う200種類以上の酵素の構成成分となるミネラルです。犬の被毛の生え変わりやタンパク質の合成などにかかわります。
詳しくは→ドッグフードの栄養添加物(炭酸亜鉛)
クロム(Cr) クロムの働きについては、2018年3月現在、まだ研究途上です。しかし、体が糖質をエネルギーとして利用する際に働くインスリンの働きをサポートすることが判明しています。インスリンがしっかりと働き、糖がスムーズに消費されることで、血糖値の上昇が抑えられます。
コバルト(Co) ビタミンB12となり、葉酸と協力して赤芽球を分裂させ、赤血球を作り出します。 コバルト単体での働きは、2018年3月現在、確認されていません。現段階においては、コバルトの作用や欠乏症は、ビタミンB12と同様とお考えください。
ドッグフードの栄養添加物(硫酸コバルト)
ドッグフードの栄養添加物(ビタミンB12)
セレン(Se) 別名をセレニウムともいいます。グルタチオンペルオキシダーゼと呼ばれる抗酸化物質を形成し、細胞の酸化(錆び付き)を抑制します。セレンが体に必要なミネラルであるということはハッキリしていますが、体内でどのように作用しているのか、その全貌は解明されていません。
鉄(Fe) 体中に酸素を運ぶ赤血球や、筋肉の中で酸素を受け取り貯蔵するミオグロビンなどの構成成分として活躍します。鉄分は吸収率が悪いミネラルですが、肉類や魚類に含まれるヘム鉄は、吸収率が30%前後と高めです(数値は食材の種類によって変動します)。
銅(Cu) 酵素タンパク質の一種であるセルロプラスミンを構成し、鉄を体内で使用可能な状態にします。また、酵素の一種であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の原料ともなり、活性酸素と戦います。 銅の詳細についてはこちらの記事をお読みください。→ドッグフードの栄養添加物(硫酸銅)
マンガン(Mn) スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)という酵素を構成し、活性酸素を無害化することで、ワンちゃんの健康を守ってくれます。 詳しくはこちらをご覧ください。→ドッグフードの栄養添加物(炭酸マンガン)
モリブデン(Mo) アルデヒドオキシダーゼを始めとする、3種類の酸化酵素の材料となります。尿酸の代謝や健康的な血液を合成するために働くことがわかっていますが、モリブデンには、まだ解明されていない作用があるとも考えられています(2018年3月現在)。
ヨウ素(I) 甲状腺から分泌されるホルモンである、T3 (トリヨードサイロニン)やT4 (サイロキシン)の成分となるミネラルです。T3 やT4 といった甲状腺ホルモンは、新陳代謝やタンパク質の合成などに関与します。

このように、同じミネラル類に属する成分でも、骨や歯の材料となるものから、血圧や血糖値の上昇を抑えるもの、酵素の働きをサポートするものなど、役割はさまざまです。 これらの栄養素のうちのどれかひとつが欠けただけでも(または多すぎても)、ワンちゃんの体調に悪影響を及ぼしかねません。 多様なミネラルが各々の役割をきちんと果たしてくれているお蔭で、ワンちゃんもわたしたちも、毎日健康的に生活することができるのです。

まとめ
粗灰分について、さらに灰分(ミネラル)の種類と働きについてご説明しました。 摂り過ぎても不足しても、ワンちゃんの体に悪影響を与えてしまう粗灰分の割合は、「5%以上、10%以下」程度が適切であるといわれています。 しかし、2018年3月現在、粗灰分の合計量でフードの良し悪しは決められない、ともいわれるようになってきました。

前述通りミネラルの中には、成分量のバランスが崩れることによって、互いに体内吸収を邪魔し合う関係性のものが存在します。 これを防ぎ、全ての栄養素にきちんと働いてもらうためには、「g」や「mg」、「μg」などで表示されるそれぞれのミネラルの含有量や、どのような物質をミネラル供給源として用いているかなどが大切であると考えられ始めているのです。

例えば、カルシウムとリンの比率は2:1~1:1が理想的とされ、このバランスの時に最も効率的に体内で働くといわれています。 また、ただ単にフードにミネラルを配合しても、体へはあまり吸収されません。 そのため、ミネラルを吸収されやすい形に変化させる「キレート化」という技術が用いられることが増えてきました(これは、「キレート化ミネラル類」や「キレート銅」といった表現で、フードの原材料欄に記載されています)。 キレート化をすることにより、ミネラルの吸収率が2倍程度にアップするといわれています。 さらに、メーカーによっては、独自の技術でさらに吸収性をアップさせたミネラルを配合しているところもあります。

このように、各種ミネラルの含有量や吸収性にこだわったフード作りを行っているメーカーは、フードパッケージや店頭リーフレット、各社のホームページなどで「我が社はこのような工夫をして、ミネラルを効率よく摂取できるようにしています」と公表していることが多いです。 ドッグフードは、愛犬が一生涯を通じて毎日摂取する物です。せっかく食べさせるのであれば、このように細部にまで気を配って作られたフードを食べさせてあげたいですね。