ドッグフードの素材(水牛(バイソン))

ドッグフードの素材(水牛(バイソン))

バイソンの肉は、私たち日本人の食卓にそうそう上るものではありません。 しかし、ドッグフードの材料としては比較的多く使用されているため、飼い主さんはバイソンを一度も口にしたことがないけれども、愛犬は食べたことがあるというご家庭も多いことと思います。 口にしたことがないどころが、そもそもバイソンとはどういう生き物なのかと疑問に思われている方もいるのではないでしょうか。 ここでは、バイソンとはどのような動物なのかといったことから、バイソン肉がワンちゃんに与える健康効果、ドッグフードへと利用される際の表記の問題などについてご説明していきます。

バイソンとは

混同されやすい「バイソン」、「水牛」、「バッファロー」

まず始めに、バイソンの定義からご説明します。 それというのも、日本においてはバイソンと水牛、そしてバッファローの区別が曖昧で、頻繁に混同されて呼ばれているためです。 それぞれの違いを簡単にまとめました。

水牛
ウシ目ウシ科アジアスイギュウ属の牛です。野生の水牛はタイやインド、ネパール、ブータンなどの国々で見ることができます。その他アジアのさまざまな地域で家畜化もされています。
バッファロー
英語で「水牛」を意味します。アジアスイギュウ属の他、アフリカ大陸に生息するアフリカスイギュウ属の牛なども含まれます。
バイソン
ウシ目ウシ科バイソン属に分類される牛です。アメリカやカナダに分布するアメリカバイソンと、ロシアやポーランドに生息するヨーロッパバイソンに分かれます。

アメリカにおいては、バイソンのことを「アメリカン・バッファロー」などと呼ぶことが多いのですが、これは正式名称ではなくあだ名のようなものなのです。

ドッグフードに使用されているのはアメリカバイソン

ドッグフードのタンパク源として用いられているのは、「アメリカバイソン」です。 ヨーロッパバイソンは人間によって生息地を追われ、また乱獲の影響などもあり、野生下のものはいなくなりました。人間の手によって繁殖された固体は存在しますが、絶滅危惧種として指定されており、食用にはできません。 そのため、ここでは「バイソン」=「アメリカバイソン」のこととして、解説をしていきたいと思います。

アメリカバイソンも、ヨーロッパバイソンと同じように乱獲された歴史を持ち、19世紀末頃には500頭ほどにまで数が激減しました。 現在では準絶滅危惧種に指定され、アメリカにあるイエローストーン国立公園などの保護区域で守られています。その他にも野生下で生きるバイソンや、牧場で飼育されている個体もおり、全てを合わせると生息数も50万頭程度まで回復しているという見方もあります。そのため、昔のように()再び食肉として活用されるようになったのです。

※アメリカの先住民であるネイティブ・アメリカンの人々はバイソンを狩り、肉を食料とし、毛皮や骨を衣服や武器に加工して利用していました。

バイソンの特徴

(アメリカ)バイソンの体長は小さなメスで2メートル程度ですが、4メートル以上に成長する大きなオスもおり、体重も1000キロを超えるケースまであります。 2本の角の生えた頭はやや黒っぽく、体は明るめの茶色をしています。大人になると頭や肩周り、前脚に細かくカールをした被毛が見られることが特徴的です。バイソンの持つ密度の濃い被毛は防寒効果も高く、雪の降る寒い冬でも耐えることが可能なのです。

野生のバイソンはアメリカやカナダの草原や雑木林などに生息し、草や木の芽、葉、樹皮などを食べる完全な草食動物です。食糧が無くなる冬には、コケ類を食べてしのぎます。こうした食性が、バイソンの肉質を非常にヘルシーなものにしているのです。

バイソンの肉には、「サシ」が入っていません。 「サシが入る」とは、脂肪分が肉全面に適度に広がり、網目状に見える状態のことを指します。「脂肪交雑」ともいい、いわゆる和牛に多い霜降り肉の状態です。 サシが入った肉は、とろけるような食感と脂の甘さから日本人のファンが多いですが、当然カロリーは高くなりがちです。 その点、サシとは無縁のバイソンは牛肉に比べて低脂肪でカロリーも低いのです。

野生のバイソンだけではなく人の飼育下にある個体も、基本的には放牧されて育てられます。そのため、バイソンの肉質は非常に良質であるといわれています。 牛舎に詰め込まれた状態で育てられていないことにより、さまざまなメリットがあるのです。

放牧することで、バイソンに対して以下のような好影響が期待できます。

  • 自由に運動ができるため、脂肪が燃焼され赤身が増える
  • 充分に日光浴をすることで、体内におけるビタミン合成が促進される
  • 狭く自由のない環境からもたらされるストレスが少なく、健康が保たれやすい(加えて、もともとバイソンはストレス耐性が高い動物だといわれています)

こうした環境に置かれるために、程よい弾力を持った栄養たっぷりの肉となるのです。 さらに抗生剤やホルモン剤の投与が行われていないため、バイソンの肉は安心してワンちゃんに与えられる食材でもあります。

バイソンの栄養

低脂肪、低アレルゲン

草を食べ、適度な運動をしながらのびのびと育ったバイソンの肉は、低脂肪、低カロリーであることが最大の特徴です。 下の表は、バイソンと各肉類・魚類の100g当たりの栄養素含有量をまとめたものです。

食材の名称 カロリー(kcal) 脂質(g) コレステロール(mg) 鉄(mg)
バイソン 143 2.42 82 3.42
牛(もも) 246 17.5 77 1
豚(もも) 183 10.2 73 0.7
鶏(もも) 200 14 135 0.4
ラム(もも) 217 14.4 68 2
110 2.5 65 4.3
138 4.5 74 0.4

脂肪分の少ないバイソンに合わせて、それぞれの肉類の部位は、脂質が控えめで赤身の多いもも肉の数値を掲載しています。

この表を見るとバイソンのカロリーは馬や鮭に次いで低く、脂質は最も少ないことがわかります。コレステロールは鶏の次に多いですが、比較対象である肉類の部位が異なれば、また結果が変わってくるため、これだけを見て「バイソンはコレステロール量が多い」ということはできません。 また、鉄分は2番目に多く含有しています。

人よりも運動量が多く、エネルギーを消費しやすいワンちゃんたちにとって、脂質は大切なエネルギー源です。そのため、いたずらに低脂肪の食品を食べさせればよいというものではありません。 しかし太りやすい体質や肥満気味のワンちゃん、活動量の少ないワンちゃんなどには脂肪分の少ないバイソンが適しています。 また低脂質なだけではなく、消化がしやすくタンパク質はしっかりと摂れるところもバイソン肉の魅力です。 部位によっても異なりますが、バイソンは牛肉以上のタンパク質量を誇るとして高く評価されているのです。

またバイソンは、アレルギーの原因となりにくい低アレルゲン食品であるといわれています。 他の肉類でアレルギー反応が出た経験のあるワンちゃんでも、安心して食べることができる可能性が高いのです。同じウシ科には属しますが、バイソンと牛は異なる動物のため、牛肉のアレルギーがあるワンちゃんでも食べられるケースもあります。

鉄分とビタミンB12が豊富

バイソンは低脂肪、低カロリーなだけではありません。鉄分ビタミンB12も豊富に含んでいるのです。 それぞれの健康効果をみていきましょう。

鉄分

鉄分は、血液中や筋肉、腎臓などに多く含まれているミネラルです。 鉄分はヘモグロビン(※1)やミオグロビン(※2)の材料となる成分で、微量必須ミネラルに分類されます。微量必須ミネラルとは、生物が生きていくためには欠かせない成分でありながらも、体内ではごくわずかしか必要としないミネラルのことを意味します。

鉄分不足になると起こる症状に貧血があります。ワンちゃんに、

  • いつものような元気がない
  • ちょっとしたことで息を切らす
  • 毛ヅヤが悪くパサパサしている
  • 下痢を繰り返す
  • 歯ぐきや皮膚の色が白っぽい

などの異常がみられたら、鉄欠乏による貧血を起こしている可能性があります。 それとは反対に、鉄分が過剰になった場合には、嘔吐や下痢などの症状が出ると報告されています。

バイソン肉に含まれる鉄分は「ヘム鉄」と呼ばれ、ワンちゃんの体内への吸収性に優れています。 対して、植物性の食品に含まれる鉄分は「非ヘム鉄」といい、ヘム鉄に比べて吸収率が悪いのです。 それぞれの吸収率はヘム鉄で10~25%、非ヘム鉄ではわずか1~6%程度であるといわれています。

非ヘム鉄も、ビタミンC(アスコルビン酸)と一緒に摂取した場合には吸収性がアップします。ワンちゃんは体内でビタミンCを合成できるため、非ヘム鉄でも問題なく吸収できるのではないかと思われがちですが、自ら作り出すビタミンCだけでは足りなくなることもあるのです。 例えば、ワンちゃんが病気やストレスなどの要因でビタミンCを大量消費しているとします。そのような状態で非ヘム鉄を摂取しても、ビタミンCの量が足りないために鉄分の吸収効率は上がらないと考えらえます。 このように、非ヘム鉄を含む食材ばかりを多く与えていると、知らず知らずのうちに鉄欠乏に陥ってしまう可能性もあるのです。

しかし、ヘム鉄はそのままでも高い吸収性を持ちます(ヘム鉄においては、ビタミンCを併用することによる吸収率上昇効果は確認されていません)。 鉄分を効率よく摂取させ、ワンちゃんの貧血を予防するには、ヘム鉄を含むバイソンのような肉類をしっかりと食べさせることが大切なのです。

※1 ヘモグロビン・・・赤血球の中に存在し、全身に酸素を運搬する赤い色素です。血液が赤い色をしているのは、このヘモグロビンのためなのです。

※2 ミオグロビン・・・筋肉の中で、ヘモグロビンが運んできた酸素を受け取る働きをします。

ビタミンB12(コバラミン/シアノコバラミン)

ビタミンB12は植物にはほとんど含まれていないため、動物性の食品から摂り入れる必要があります。  ビタミンB12は葉酸(※1)と協力し、赤血球を作り出す作用を持つ、水溶性のビタミンです。 ビタミンB12と葉酸のどちらか片方が欠けてしまうと健康な血液を作り出すことができなくなるため、愛犬には両方をバランスよく摂取させることが大切です。 その他にも、ビタミンB12には脳の機能を正常に保つ効果もあります。

肉を多く摂る動物であるワンちゃんにとって、ビタミンB12が足りなくなる可能性は低いです。しかし愛犬に植物性食品ばかりを食べさせているケースにおいては、ビタミンB12の欠乏リスクが高まります。

ビタミンB12が欠乏すると、赤血球が充分に作られなくなるために貧血を起こしやすくなります。さらには脱毛や、食欲不振からの体重減少、子犬の場合には発育が遅れてしまうこともあるのです。 反対に、ビタミンB12を摂りすぎても尿と一緒に排出されます。そのため、規定量を守った食事をさせている限りは、ビタミンB12の摂りすぎによるワンちゃんの健康被害は確認されていません(※2)。

※1 葉酸はビタミンB12とは対照的に、植物性の食品に多く含有されている傾向にあります。葉酸を多く含み、なおかつワンちゃんが食べられる食品には、レバーやブロッコリー、そら豆などが挙げられます。

※2 大量のビタミンB12を非経口投与(成分を血管に直接注入するなど、消化器官以外から体内に送り込むこと)した場合には、健康被害が出るといわれています。

バイソンのドッグフードへの利用状況

鶏肉や牛肉などのメジャーな肉類には及びませんが、バイソン肉を使ったドッグフードは比較的多くの種類が販売されています。 バイソンは単独のタンパク源としてよりも、他の肉類や魚類と組み合わされてドッグフードに配合されることが多い傾向があります。 タンパク源がバイソンのみとうたっているドッグフードは、アレルギーを持つワンちゃんに向けて作られているケースが多いようです。

パッケージに書かれている呼び名はさまざまで、「バイソン」とあるだけの場合もあれば、「バイソン(水牛)」ということもあり、「バッファロー肉」などという書き方をされている場合もあります。ドッグフードの原材料欄にこれらの表記があれば、アメリカバイソンを使っているとみてよいでしょう。

まとめ

バイソン肉は、低脂肪で低アレルゲン、正常な血液を作るには欠かせないふたつの栄養素(鉄分とビタミンB12)を豊富に含んだ、ワンちゃんにとって安全で健康的な食材です。 特に肥満気味のワンちゃんや、あまり活動的ではなく消費エネルギーの少ない子にとってはピッタリの食材です。反対に、スポーツをするワンちゃんや使役犬(盲導犬や警察犬、災害救助犬、牧羊犬、猟犬など)などにとっては、バイソンの肉はややヘルシーすぎるかもしれません。 バイソン肉に限らず、肉類はそれぞれ栄養素の含有量に個性を持ちます。成分比率などを他の肉類と比較して、愛犬の状況に最適な食材を使ったドッグフードを選んであげたいですね。