ドッグフードで便秘になったら

ドッグフードで便秘になったら

私たち人間にとって、「便秘」は身体のトラブルの中でも、最も身近なものに分類されるのではないでしょうか。 実は犬も、人と同じように便秘になります。 飼い主さんの中には、「最近うちの子、あまり便が出ていないな」と心当たりのある方もいらっしゃるかもしれません。 たかが便秘、されど便秘です。 うまく排便ができないということは、腸の働きが活発でなかったり、身体に何らかの問題を抱えている証拠です。 または何か重大な病気のいち症状として、「便秘」が現れているのかもしれません。 一時の体調不良であったとしても、そのまま便秘を放置しておけば、腸閉塞などの深刻な病気を引き起こしてしまう可能性もあるのです。

そして便秘の原因は、ドッグフードにある場合があります。 特に病気の症状はないのに愛犬が便秘がちだと感じたら、まずはドッグフードを疑ってみるとよいかもしれません。

考えられる原因

この項目では、便秘の原因がドッグフードにあると仮定して、話を進めていきます。 ひとくちに原因といっても、考えられるものはいくつかあります。 一度、ドッグフードの原材料表示を確認して、要因を絞り込めるようにしましょう。 原因によって、対応も変わってきます。

繊維質が足りない、または質が悪い

食物繊維は便秘に効果的であるという話を、一度は耳にしたことがあると思います。 食物繊維とは「胃腸では消化されず、そのまま排出される」成分で、腸内の有害物質を吸着させて排出させたり、便に適度な水分を含ませて排出しやすくする働きがあります。 そのため食物繊維が不足すると、固くなった便が腸の中に長時間とどまってしまい、排便が難しくなってしまいます。 「便秘の時は食物繊維を摂ろう」とよくいわれるのもこのためです。

犬の場合も同様で、食物繊維の不足は便秘を招きます。 食物繊維が豊富に含まれているのは野菜や豆類です。 愛犬が便秘がちだと感じたら、それらが適切に含まれているかどうか、ドッグフードの成分表を確認するようにしましょう。 野菜スティックなどを別途で与えてあげてもいいかもしれませんね。

しかし中には、食物繊維がかえって便秘を助長させているケースもあります。 食物繊維は確かに便秘に効果的ですが、それは適切な種類の食物繊維を適量摂取した場合の話です。 必要以上に食物繊維を摂取すると、便が大きくなりすぎて腸内で詰まってしまったり、便が固くなることで便秘になってしまう可能性があります。 そして食物繊維の種類とそのバランスも、重要な要素となってきます。 わんちゃんの便秘を予防・改善するために、まずは食物繊維の種類について知っておきましょう。 食物繊維は水に溶けるか否かで、水溶性食物繊維不溶性食物繊維の二種類に分類することができます。

水溶性食物繊維

水溶性食物繊維はその名の通り、水に溶けるタイプの食物繊維です。 わかめなどの海藻類や果物、こんにゃくなどに多く含まれており、触るとぬるぬるとしているのが特徴です。 水溶性食物繊維は腸の中で水分を抱え込み、水に溶けるとドロドロのゲル状になります。 それにより、便に適度な水分を与え、排便を促す効果があります。 便は固くなると体外に排出するのが難しくなりますが、水溶性食物繊維を摂取すればそれを解消することができます。 しかし摂りすぎは下痢の原因になりますので、注意しましょう。

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維は水溶性食物繊維とは反対に、水に溶けないことが特徴の食物繊維です。 主に穀類やイモ類、野菜類、豆類などのいわゆる「繊維質」な食べ物に多く含まれています。 胃や腸で水分を含むと、繊維が膨らむのが特徴です(イモ類などがお腹にたまりやすいのはこのためです)。 膨らんだ食物繊維が腸壁を刺激し、蠕動運動(消化した食べ物を腸内で移動・排出する動きのこと)を活発にする効果があるのです。 また、水分で膨らんだ繊維は便のかさ増しにも役立ちます。

しかしこの不溶性食物繊維は、体調によっては便秘を悪化させてしまうことがあります。 前述した通り、不溶性食物繊維は腸の動きを活発にしたり、便の量を増やす効果がありますので、「少食やダイエットなどにより、便が少なく腸が動かないために便秘になっている」場合には効果的です。 しかし、水分不足による便秘の場合は、不溶性食物繊維が便の水分をさらに吸収して(奪って)しまい、「腸は活発に動いているけど便が出ない」という事態になりかねません。 わんちゃんの便が固くて少量しか出ない場合は、不溶性食物繊維の摂取を少し抑えたほうがよいでしょう。 逆に水溶性食物繊維を摂らせてあげると、便が水分を含み排出しやすくなります。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、1:2の割合で摂取することが好ましいとされています。 ワンちゃんの体調を観ながら調節するようにしましょう。

ビートパルブやセルロースに注意

ドッグフードの原材料表示に、「ビートパルブ」や「セルロース」という文字を見かけたことがある方は多いのではないでしょうか。 ビートパルブはサトウダイコンの搾りかす、セルロースは地球上のほぼすべての植物に含まれる繊維質で、両者とも不溶性食物繊維です。 安価なドッグフードには、これらがかさ増しや甘味料として必要以上に含まれている可能性があります。 必要以上の不溶性食物繊維は便秘を招くことがありますので、原材料表示にビートパルブやセルロースなどの文字を見かけたら、注意するようにしましょう。

水分不足

便秘の原因として考えられるもののひとつに、「水分不足」が挙げられます。 便をスムーズに排出するには、水分が必要不可欠です。 しかしドライタイプのドッグフードを食べているわんちゃんは、水分不足になりやすいというのが現状です。 犬は人間と違って言葉が通じません。 そのためいくら「水を飲みなさい」と言っても通じませんし、無理やり水を飲ますこともできません。 十分な量の水分を摂れているわんちゃんは、私たちが考えるよりもずっと少ないのではないでしょうか。 愛犬に便秘の症状が出たときは、水分不足も疑ってみてください。 フードをふやかして与える・スープをかけてあげるなどすると、手軽に水分不足を解消できます。 ドッグフードを切り替えるよりも簡単に行うことができるので、水分不足による便秘なのかそうでないのか、しっかりと見極めることが大切です。 固くて量の少ない便が出る場合は、水分不足が原因である可能性が高いです。

粗悪な原材料が使用されている

粗悪な原材料や添加物が使用されている場合も、便秘を引き起こす可能性があります。 ゴミ同然の原材料を使用したり、それをごまかすために大量に添加物が投入されているなど、ドッグフードそのものの質が良くないケースではわんちゃんの胃腸に負担がかかり、胃腸の働きが弱まってしまうのです。 胃腸機能の低下は便秘の原因になります。 安すぎるドッグフードを与えていないか、普段与えているドッグフードがどの程度のグレードなのかを一度確認しておくようにしましょう。

穀物が使用されている

ペットショップやスーパーのペット商品売り場などで見かけるドッグフードのほとんどが、主原料に穀物を使用しています。 しかしご存知の通り、犬は肉食動物ですので穀物の消化を得意としません。 そのため穀物メインのドッグフードは、決して犬の身体に優しいとはいえないのです。 穀物が犬にとってまったく不要というわけではありませんが、それでも必要以上の穀物は犬の身体に負担をかけます。 うまく消化しきれず腸内に残った穀物が、排便の邪魔をしてしまうのです。

便秘気味のワンちゃんに与えているのが穀物メインのドッグフードだった場合、フードの変更を検討してみましょう。 肉が主原料のドッグフードや、グレインフリーのドッグフードがおすすめです。

ドッグフードを急に変更した場合

ドッグフードの切り替えを行ったあとも、わんちゃんが便秘になることがあります。 特に、従来のフードと新たなフードを少しずつ混ぜながら切り替えるのではなく、新しいものに突然切り替えてしまうと起こりやすいです。 私たちが海外旅行などに出向いて食生活が急変すると、お腹の調子が悪くなることがあるのと同じように、腸が急激な変化に対応しきれなくなってしまうのです。 例えば、穀物や添加物が大量に使用されたフードで便秘になってしまったからといって、突然無添加で品質のよいフードに切り替えてしまうのはあまりよくありません。 はやる気持ちは分かりますが、わんちゃんの身体のためにもフードの切り替えはゆっくりと行うようにしましょう。

 →ドッグフードの切り替え方法

このように、ひとくちに「ドッグフードが原因」といっても様々な要因が考えられます。 わんちゃんの様子やドッグフードのパッケージをよく確認して、原因を特定するようにしましょう。 原因が分かれば、きちんとした対処をすることができます。 それに関しては事項で説明いたしますので、みていきましょう。

便秘解消のためにできること

便秘の原因が多々あるように、便秘を解消する方法も数多く存在します。 便秘の原因を特定したら、しかるべき対処をしてあげるようにしましょう。

ドッグフードを替えてみる

ドッグフードによって便秘が引き起こされてしまう原因の多くは、ドッグフードに含まれる原材料や添加物にあります。 そのため便秘を解消するために最も手っ取り早いのが、「ドッグフードを切り替える」ことです。 とはいえ、やみくもに替えるのでは意味がありません。 便秘の原因となっている穀物や不要な繊維質、添加物が含まれていないか、原材料表示をしっかりとチェックしてから選ぶ必要があります。

また、どんなに良いものを与えてもフードを突然切り替えた場合は、便秘や下痢を起こしてしまうかもしれません。 その際は焦ってまた別のものに替えることはせず、数日間は経過を見てあげましょう。 長期にわたって症状が続くようであれば、新しいフードがワンちゃんに適していない可能性がありますので、再度フードの見直しをしてあげてください。

 ★原因がこんなときに有効…ドッグフードの添加物のせいで便秘になっている/原材料が粗悪なフードを与えている/フード内の繊維質が多すぎる/穀物が主体のドッグフードを与えている場合 など

普段のドッグフードに一工夫する

普段与えているフードでは便秘を解消する成分が「足りない」場合は、フードにひと工夫「加えて」あげることをおすすめします。 常食させているドッグフードが便秘症状を除いてワンちゃんに合っている(食いつきがいい、毛並みがいいなど)場合などは、むやみに別のフードに切り替えないほうがよいためです。

例えば水分不足による便秘の場合は、ドッグフードをふやかしたり、出汁やスープを加えることで手軽に水分補給を促すことができます。 また、食物繊維不足が原因であれば繊維質の豊富な野菜や海藻などをトッピングすることで、食物繊維を補うことができます(トッピングが多すぎると栄養バランスが崩れる恐れがありますので、2割以下にとどめるようにしましょう)。

 ★原因がこんなときに有効…日頃与えているフードでは特定の栄養や成分が足りない場合 など

サプリメントを活用する

あまり馴染みはないかもしれませんが、便秘解消のために「サプリメントを与える」という方法もあります。 「えっ?犬にサプリメントを与えてもいいの?」と驚かれる方もいらっしゃると思いますが、必要な栄養を必要な分だけ与えることのできるサプリメントは、ワンちゃんの健康維持のための心強い味方となります。 犬専用のサプリメントなども売られていますので、ペットショップや専門店に出向いた際は、一度確認してもよいでしょう。 便秘解消に効果的とされるサプリメントは、酵素や乳酸菌が配合されています。 とくに酵素は、通常のドッグフードからは摂取が難しい成分です。 サプリメントなどで積極的に摂ることにより、症状の改善が期待できるでしょう。 多くは粉状・粒状のものですので、普段のフードにトッピングするなどして、手軽に治療を行うことができます。

そんな便利なサプリメントですが、これらをワンちゃんに与える際には、いくつか注意しなければならないことがあります。

サプリメントは医薬品ではない

まず留意しておくべき点は、「サプリメントは薬品ではない」ということです。 薬品であれば、効果や副作用、使用容量などが農林水産省の管轄のもと厳しくチェックされます。 しかしサプリメントはその範疇外ですので、本当に効果があるのか、身体によいのかどうかを裏付ける確固たる証拠を得ることは難しいのです。 サプリメントはあくまでも「健康食品」であり、「病気を治す」よりも「健康をサポートする」ものだという意識を忘れないようにしましょう。過信は禁物です。

適量を与えることが大切

医薬品ではないとはいえ、特定の成分が凝縮されたサプリメントは扱い方には注意しなければなりません。 どんな栄養・成分も、摂りすぎれば身体に毒となります。 サプリメントを与えることは、純度の高い栄養分を直接ワンちゃんの体内に入れるということです。 そのため容量を誤ると、思いもよらない副作用が発生してしまうかもしれません。 犬用のサプリメントならばパッケージなどに容量が表記されているはずですので、よく読んだうえでしっかりと遵守するようにしましょう。

また人間用のサプリメントでも代用可能な場合がありますが、人間と犬の身体は異なります。 独断で与えることはせず、獣医師さんなどプロの判断を仰ぐようにしてください。

 ★原因がこんなときに有効…特定の栄養が足りずに便秘を起こしてしまっているとき など

便は健康のバロメーター

言葉を発しないわんちゃんにとって、便のコンディションは犬が飼い主さんに身体の具合を伝えるための数少ない手段です。 たかが便秘と軽視して放っておくと、ワンちゃんの発する貴重なサインを見逃してしまうことになります。 日常的に便の状態や回数を確認して、愛犬の体調を把握しておくようにしましょう。

正常な便との見分け方

正常な便には、主に以下のような特徴があります。 正常な状態から離れれば離れるほど、わんちゃんの身体のどこかにトラブルが発生している証拠です。日頃からよく観察するようにしましょう。

濃くもなく薄くもない茶色です。

便に血が混じっていたり、赤色や黒色の場合は、消化器官の炎症・出血の可能性があります。

大きさ

ワンちゃんによって個体差がありますが、相対的に「いつもと同じ大きさ」が理想です。

小さすぎると便秘の可能性が、また大きすぎると過剰な食物繊維などにより便が肥大している可能性があります。 普段のドッグフードを見直してみるようにしましょう。

形や固さ

細長く、適度に丸みを帯びてまとまっている形が理想です。

テッシュなどで便を取り上げても形が崩れず、少しだけ付着する程度の硬さです。 固すぎるものは腸に長く留まりすぎて(=便秘になって)いる証拠ですし、水気の多いものは下痢便です。 また、断面が丸くなく平たい形のものは、腫瘍や前立腺肥大などにより腸管が圧迫されている可能性がありますので、病院に連れていくようにしましょう。

におい

食事内容によって差はありますが、基本的に「いつもと同じ臭い」であれば安心です。

明らかに匂いが変化した場合は、病気の可能性も疑ってみましょう。

回数

明確に「この回数ならば正常」という基準はありませんが、最低でも1日一回は欲しいところです。一般的には、食事の回数+1~2回ほどがよいとされています。

決まった時間に排便せているとなお良いです。 反対に、排便があまりに不規則だったり、3日以上便が出ない場合は便秘の可能性が高いです。 あまりにもひどいようであれば、内臓などに疾患があるかもしれません。 その場合は、はやめに獣医さんに診てもらうようにしましょう。

便秘症状とは

この記事では、わんちゃんの便秘を主題に取り扱ってきましたが、そもそも「便秘」とはどういうもので、何をもってその状態を指すのでしょうか。

「便秘」とは、主に大腸機能などの低下により長い期間便が排出されない、または出ても正常な便ではない状態を指します。 大腸は消化の最終処理を行う器官で、ここで食べ物の残りかすは水分が吸収されて便となり、体外へ排出されます。健康な大腸は蠕動運動(弛緩の繰り返しにより前後運動を促すこと)によって消化物を動かしますが、自律神経の乱れや筋力低下などの原因で、この運動が満足に行われないことがあります。 すると体外に便を排出する力が弱くなり、便秘になってしまうのです。 また、蠕動運動が強くなりすぎると腸がけいれんを起こしてしまい、この場合も便が詰まることがあります。

期間に関しては、犬の場合3日以上便が出ない状態が続くのであれば、明確に便秘であるといえるでしょう。 5日以上排便がない場合は、ただの便秘ではなく、消化器官に何らかの異常をきたしている可能性が高いです。 きちんと病院で診てもらうようにしましょう。

まとめ
便秘は身近な症状ではありますが、たかが便秘と侮ってはいけません。 ワンちゃんが発せられる数少ないサインに気づいてあげられるよう、日頃から注意しておくことが大切です。