ドッグフードの素材(米)

ドッグフードの素材(米)

米は、私たち日本人の食卓とは切っても切れないほど深く結びついている食品です。 しかし、常日頃ドッグフードを食べているワンちゃんたちにとっては、それほど馴染みのある食べ物ではないでしょう。ドッグフードには小麦やトウモロコシが使われていることがほとんどであり、米を使用したフードの種類はそれほど多くありません。 しかし甘い香りや味を持つ米は、ワンちゃんの嗜好にマッチした食品でもあるのです。 ここでは米(主に白米)の特徴や栄養素、ドッグフードへの利用状況などを解説していきたいと思います。

米の種類とアレルギーについて

上の写真は、2種類の米を収めたものです。 向かって右側が白米、左側が玄米となります。玄米は茶色い皮に覆われており、それを取り除くことで白米が作られます。

さまざまな米

ひと口に「米」といっても、色々な種類があります。 日本で最もよく食べられている白米から、栄養価の高さでヘルシー志向の人たちから人気の玄米や黒米、さまざまな穀類をブレンドした雑穀米などが代表的でしょうか。 それぞれの特徴を簡単に表にしてみました。

米の種類とそれぞれの特徴
種類 特徴
白米
(精白米)
玄米から胚芽(米の根っこや芽のもととなる部分)や、表面の皮(糠・ぬか)を除去したものが白米です。硬く、若干クセのある部分が取り除かれることにより、口当たりも味も良くなります。消化性もアップしますが、ビタミンやミネラル、食物繊維が減少してしまうというデメリットもあります。
玄米 玄米は、籾(もみ)から殻を取り除いただけの状態の米です。食物繊維が豊富で、血糖値が急激に上昇しにくいというメリットを持ちます。ビタミン、ミネラルも白米よりも豊富ですが、消化性では劣ります。表面の糠がそのままであるため、残留する農薬のリスクが指摘されています。
黒米
(古代米)
日本の米の先祖ともいえる、古来の米の特徴を残した米です。表皮にはアントシアニンと呼ばれるポリフェノールが豊富に含まれており、濃い紫がかった外観が特徴的です。アントシアニンには、活性酸素抑制効果や、血流促進効果などがあり、特に眼精疲労を緩和する作用に優れているといわれています。
雑穀米 色々な穀類を組み合わせたものです。使用される穀類には、玄米や黒米の他、粟やヒエ、キビ、もち麦、押し麦、アマランサス、小豆、ゴマなどさまざまな種類が挙げられます。配合バランスは製造するメーカーによって千差万別ですので、好みのものがみつかるでしょう。栄養補給目的として、白米に混ぜて食べることが一般的です。

こちらは黒米の写真です。 アントシアニンの影響で、表面が黒っぽい紫色をしていることが分かります。白米に黒米を混ぜて炊いたご飯は、生の黒米よりも明るく鮮やかな紫色になります。

米はアレルゲンになりにくいといわれる

米は、ワンちゃんに対しても人間に対しても、比較的アレルギーを起こしにくい食材であるといわれています。 上記の表の中で最もアレルゲン(アレルギーを誘発する物質のこと)となりにくいものは白米です。 しかしもちろん、白米でもアレルギーを起こしてしまうワンちゃんもいますので、油断は禁物です。 玄米や雑穀米は、白米よりは若干アレルギー症状を誘発しやすいといわれていますが、小麦やトウモロコシよりもリスクは低いとされます。

いずれにしても、他の食品と同様、米をワンちゃんに与える際にもアレルギーへの警戒は必要です。目や耳、足先、お腹の皮膚などに赤みは出ていないか、かゆがっていないかなどのチェックは欠かさないようにしましょう。

米の栄養素は炭水化物だけではない 

肉類や魚類を用いた食事をメインとするワンちゃんにとっては、米を口にする機会は多くはないでしょう。人間の中でも、「炭水化物は太る」という認識や、「パンや麺類の方がおいしい」などといった理由から、米をあまり食べない人も増えています。 しかし、古来より日本人が主食としてきただけあり、米にはさまざまな栄養素が含まれているのです。 参考までに、白米に含まれる主な栄養素含有量と働きを一覧にしましたので、ご覧ください。

白米の主な栄養素含有量とその働き(可食部100g当たり)
栄養素 単位 含有量 働き
エネルギー kcal 356 タンパク質と脂質、糖質から生み出される、体の動力源です。エネルギーは、運動や食事といったアクションを起こす際には当然多く必要ですが、ただジッとしているだけでも消費されています。
タンパク質 g 6.1 肉や血液、爪、被毛、ホルモン、酵素から免疫物質まで、ワンちゃんの体を形作るありとあらゆる部分に含まれます。また、体を動かすためのエネルギー源としても利用されます。
脂質 g 0.9 タンパク質や炭水化物よりも少ない量で多くのエネルギーが生産できる脂質は、効率の良いエネルギー源です。腸内を刺激して、スムーズな排便もサポートしてくれます。
炭水化物 g 77.1 炭水化物は、糖質と食物繊維に分けられます。一般的に炭水化物量は、このふたつの合計が記載されています。糖質には、砂糖などのいかにも甘い食べ物だけではなく、米やトウモロコシ、イモ類などに含まれているデンプンも該当します。こうした糖質は、タンパク質や脂質よりも短時間でエネルギーへと変わることが可能です。
ビタミンB1 mg 0.08 ブドウ糖をエネルギーへと変換する際に不可欠なビタミンです。その他の作用としては、筋肉の収縮や脳神経機能の正常化、疲労回復効果などが挙げられます。 ビタミンB1の働きについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。→ドッグフードの栄養添加物(ビタミンB1)
カルシウム mg 5 血液の凝固やホルモン合成、心臓の規則的な拍動のサポートなど、カルシウムの役割は多岐に渡ります。骨や歯に多く蓄えられており、血液中のカルシウムが欠乏すると、骨から流れ出て補給されるシステムになっています。
mg 0.8 鉄は貯蔵鉄と機能鉄に二分されます。貯蔵鉄は、体の鉄分不足に備えて、普段は肝臓や骨髄に蓄えられています。機能鉄はヘモグロビンやミオグロビンの原料となる鉄であり、酸素の運搬や筋肉内への蓄積を担っています。
mg 0.22 鉄からヘモグロビンが作られる際に働くセルロプラスミンという酵素を構成する成分のひとつです。セルロプラスミンは鉄を酸化させて、ヘモグロビン合成に活用できる状態にしてくれます。
食物繊維 g 0.6 2種類の食物繊維のうち、不溶性食物繊維が大部分を占めます。不溶性食物繊維は、便の量を増やして腸壁を刺激し、排泄をうながす働きを持ちます。便を柔らかくして出しやすくする作用のある、水溶性食物繊維の含有量はごくわずかです。
モリブデン μg 69 健康維持には不可欠な栄養素ですが、その必要量は非常に少ないことが特徴です。尿酸の生成に関連する3種類の酵素の原料となります。また、脂質や糖質の代謝にも関わっていると考えられており、不足すると貧血を起こすことも確認されています。

このように、とかく炭水化物が多く太りやすいというイメージのある米ですが、その他にもカルシウムや鉄、あまり耳馴染みのないモリブデンという微量栄養素まで、色々な栄養素を含んだ食品なのです。

体内で消費されなかった糖質は皮下脂肪として蓄積されてしまうので、米を愛犬に与え過ぎることはもちろん肥満の原因となります。 また、ワンちゃんたちにとっては肉類よりも米の消化が難しいことも事実です。 しかし米はさまざまな栄養素が補給でき、そのほのかな甘みもワンちゃんの嗜好に合っているため、食い付きの良い食事となる可能性が高い食べ物です。

昔の日本人が、炊いた米に残り物の味噌汁をかけたもの(通称「猫まんま」)を犬のごはんとしていたことからも分かるとおり、米はワンちゃんにとって害となるものではありません()。適度に与える分には、普段とは一風変わった食事となり、ワンちゃんも喜んでくれることでしょう。

いつものドッグフードに米を混ぜる場合には、通常の1割から2割程度フードを減らし、その分を米で補うくらいが適切であるといわれています。 しかし、この数値はあくまでも目安です。肥満気味のワンちゃんであればもっと減らした方がよいでしょうし、愛犬の状態に合わせて加減してみてください。 完全な手作りフードを作る場合には、米だけではワンちゃんの必要な栄養素は賄えませんので、肉類や野菜などと組み合わせることが大切です。

※米に味噌汁をかけた「猫まんま」は、塩分の多い味噌が使われている、肉や魚などのタンパク源が少ない、米の割合が多く糖質過多となりやすいなど、ワンちゃんのごはんとしてはさまざまな問題点があります。ドッグフードが普及した現在、こうしたごはんを犬に与えているご家庭はほとんどないとは思われますが、猫まんまはワンちゃんの栄養バランスを崩しやすく、塩分糖分の過剰摂取にも繋がるため、与えないようにしましょう。

ドッグフードには米粉や米油も利用されている

日本人の主食である米ですが、その価格は決して安くはありません。 そのため、米を使用した日本産のドッグフードの種類は、小麦やトウモロコシを使ったものに比べて多くはないのです。 しかし、アレルゲンになりにくいとされる米は、小麦やその他の食品にアレルギーを持つワンちゃん用のドッグフードには頻繁に用いられています

米を使ったフードは、ドライ状のもの、缶やパウチに入ったウェット状のもののどちらも販売されています。 白米に玄米、黒米、雑穀米と、上でご紹介した全ての種類がドッグフードの原料となりますが、その中でも最も多く使用されるのは玄米です。玄米を使ったフードは、糠や胚芽も一緒に交じっているため、米の栄養素がしっかりと詰まっています。 米は炭水化物を多く含み、温めると粘り気が出るため、フードの粒の成形が容易になるという利点もあるのです。

また、米から抽出された米油が配合されているフードも販売されています。 米油は、玄米を白米に加工する過程で出る米糠から得られた油です。サラッとしていて香ばしく、熱や酸化にも強いという特徴を持ちます。

ワンちゃん用のおやつには、米そのものよりも米粉(米から作られた粉)を使用して製造された商品が多く売られています。 米粉は、歯磨きガムのベースとなったり、低脂肪・低アレルゲンをうたったジャーキーなどに使われていることが多いです。また、ワンちゃん用に焼かれた米粉クッキーも、カボチャやサツマイモ、おからが使用されるなど、バリエーション豊富です。 他にも、黒米や雑穀米を使ったワンちゃん用のお煎餅など、私たち人間が食べるおやつと同じような商品も出ています。

米のα化について

私たち人間やワンちゃんが消化不良を起こさずに米を食べるには、デンプンの「α化(アルファ化)」を行う必要があります。ここではそのα化について、簡単にみていくことにしましょう。

米に含まれるデンプンの構造

米に多く含まれているデンプンは、構造の違いによってアミロースアミロペクチンの2種類に分けられます。 α化のご説明の前に、このふたつのデンプンについて解説します。

アミロース

数十から数百という数のブドウ糖が、一本の鎖のように繋がった状態です。 少しだけ水に溶ける性質を持ち、冷えると急速に結晶化します。 アミロースが多く含有された米は、硬くパサパサとした食感となります。しっかりとした歯ごたえと細長い形が特徴のインディカ米(通称「タイ米」)は、このアミロースを多く含んだ品種です。

こちらがインディカ米の写真です。 日本で一般的に食べられている米よりも、ひょろりとした縦長の形が見てとれます。 アミロースの含有量が多いため加熱しても粘り気が少なく、パラパラとした質感です。チャーハンやピラフ、パエリアといった料理によく合うとされています。

アミロペクチン

ブドウ糖が連なっていることはアミロースと同様ですが、その数は数百から数十万という非常に大きな値となります。さらに、鎖状のブドウ糖が何本も組み合わさり、方々に枝分かれした状態で結合していることが特徴です。 不溶性で、冷えても硬くならずにゲル状となります。 アミロペクチンの割合が多い米は、柔らかくネバネバとした食感を持ちます。お餅の材料となるもち米には、アミロペクチンしか含まれていません。

一般的に、米が最もおいしくなるデンプンのバランスは、アミロースが2割、アミロペクチンが8割とされています。 私たちが日頃食べる機会の多いうるち米(スーパーなどでも売られている一般的な米)は、品種によって若干の差はあるものの、ほとんどがこの割合となるように作られているのです。

α化は水分と熱を使って行われる

米に含まれているアミロースとアミロペクチン(デンプン)は、非常に硬く結びついています。このせいで、生米は硬く、水も容易には寄せ付けません。この状態のデンプンはβデンプンと呼ばれます。 そこで、加水と加熱を行います。米に、水と同時に熱を加えてあげることによって、アミロースとアミロペクチンの結合が緩み、水分を受け入れやすくなるのです。これをデンプンのα化といいます。    α化を行うことによって、米が柔らかく、消化しやすく変化します。炊飯器などで米を炊く目的は、このα化をすることにあるのです。この時のデンプンをαデンプンと呼びます。

各メーカーにおいても、α化の工程を経てドッグフードが作られています。 エクストルーダー(加熱加圧押出機)という機会を用いて材料に温度や圧力を加え、デンプンのα化を行うことで消化性に優れたフードが完成するのです。

ちなみに、一度炊いた米が冷えるとカチカチに固まるのは、α化したデンプンが再びβデンプンに戻ってしまうためです。この状態の米はミネラルの一部が壊れていたり、消化性も悪くなるので、 炊いた米は固まる前になるべく使い切るようにしましょう。

犬に与える際はα化をしっかりと行う

古来より米を食べ続けてきた私たち人間でさえ、生の米を食べることはしません。 穀類の消化が苦手なワンちゃんに米を与える際には、消化が良くなるように人間以上に気を使ってあげなければならないでしょう。 もちろん生米を食べさせることは厳禁ですし、芯が残っている状態の米も与えないようにしましょう。ワンちゃんによっては消化不良を起こし、下痢や腹痛、嘔吐などに繋がる危険性があります。

ワンちゃんには、多めの水分を使ってしっかりと火を通した米を与えるようにしてください。 調理時に肉や野菜のスープで煮込んであげると、米にうま味や香りが移り、ワンちゃんも喜んで食べてくれるでしょう。 特に消化器系の不調を抱えるワンちゃんや、消化能力が落ちてきた高齢のワンちゃんなどには、お粥状にしてあげるなど、胃腸に負担をかけにくい調理法を選んであげましょう。

中には、米の粘りが歯に付いて気持ち悪がるワンちゃんもいます。また、粘つきがひどいと、ワンちゃんが飲み込んだ時に喉に詰まらせる危険性も否定できません。 このような時には米を洗ってぬめりを減らしてあげたり、多くの水分で柔らかく煮込み、サラサラと食べられるようにしてあげると、食べやすくなることがあります。

まとめ
米について、さまざまな側面から解説してきました。 炭水化物を多く含んでいる米は、与え過ぎは愛犬の肥満の素となります。しかし、量に気を付けて上手に利用することで、ワンちゃんの嗜好性アップが狙えますし、トッピングや手作りフードのレパートリーも広がります。 日本人の主食である米は、スーパーでもコンビニでも手軽に入手できることも大きな魅力です。米のデンプンのα化をきっちりと行い、消化しやすい状態で愛犬に与えることを心がけましょう。