ドッグフードの定義
「ドッグフード」という言葉は、犬を飼っている方でなくても一度は目にしたり耳にしたりしたことがあると思います。
スーパーマーケットへ買い物へ行けば、「ペットフード売り場」にドッグフードが並んでいる光景を簡単に見ることができます。
しかし、「そもそもドッグフードとは何か」と聞かれたときに、的確に答えることのできる人はそう多くないのではないでしょうか。
「犬が食べるものがドッグフードではないの?」
と思われる方もいると思いますが、人の食べ残しを犬に与えてもそれは「ドッグフード」とは定義されません。
それでは実際、「ドッグフード」とは何を指す言葉なのでしょうか。
ペットフード公正取引協議会による定義
ペットフード公正取引協議会の定めた、「ペットフードの表示に関する公正競争規約」において、ペットフードは以下のように定義されています。
ペットフードとは、穀類、デンプン類、糟糠類、糖類、油脂類、種実類、豆類、魚介類、肉類、卵類、野菜類、乳類、果実類、きのこ類、藻類、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、その他の添加物等を原材料とし、混合機、蒸煮機、成型機、乾燥機、加熱殺菌機、冷凍機等を使用して製造したもの、又は天日干し等簡易な方法により製造したもので、イヌ・ネコの飲食に供するものをいう。
ペットフード公正取引協議会 公式HPより引用
※文中の「簡易な方法により製造したもの」とは、乾燥ササミ(チキン)や乾燥タラなどを指します。
上記に定義された「ペットフード」のうち、犬に食べさせるためのものを「ドッグフード」といいます。
少々言い回しが難しいですがこれはつまり、ドッグフードとは「犬に食べさせるもの全般」を指すのではなく、「犬に食べさせるために加工したもの」のことを指す、ということです。
「犬に与える人間の食べ残し」がドッグフードに含まれないのも、こういった理由があるのです。
ドッグフードに含まれないものとしては、
- 水のみでできた犬用の天然水(水に栄養や嗜好性物質などを加えた場合は、ドッグフードに含まれます)
- 遊び用のおもちゃとして使われる、動物の皮や骨など
- 食用肉(副産物も含む)を、加工や添加をせずに冷蔵あるいは冷凍しただけのもの
- 歯を丈夫にするガム
- 主食でも副食でもない、栄養補助剤(ある時期に特定の目的で使用されるもの)
などが挙げられます。
上記以外の「犬用に加工されたもの」をドッグフードといいます。
ペットフード安全法における定義
ペットフード安全法におけるドッグフード(ペットフード)の定義は、ペットフード公正取引協議会の定めたものと少々異なります。
ペットフード安全法の第二条では、「愛がん動物用飼料」に関して「愛がん動物の栄養に供することを目的として使用される物をいう」としています。
ペットフード公正取引協議会の定めた定義とは異なり、栄養に供する目的のものであれば、加工の有無は問わないとしていることが特徴です。
つまり、犬用のミネラルウォーターや生肉、ガムなどもこの場合は「ドッグフード」の定義の範疇にあるという扱いになります。
言い換えれば、該当しうるドッグフードはすべて、ペットフード安全法が適用される範囲内のものとなるということです。
ペットフード安全法について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
→ドッグフードに関する法律の内容と問題点
定義 | 加工しないもの | |
---|---|---|
ペットフード公正取引協議会 | 犬用に加工されたものを指す | 含まない |
ペットフード安全法 | 犬の栄養に供するものを指す | 含む |
ドッグフードと家畜用飼料の違い
「動物に与える食べ物」は、ペットフードに限らず「家畜に与える餌」などもあります。
しかし私たちは犬猫に家畜用飼料を与えたりはしませんし、牛・豚・鶏などの家畜にペットフードを与えたりはしませんよね。
両者の間には明らかな線引きがあり、完全に別物なのです。
それでは、ドッグフードと家畜用飼料には、具体的にどのような違いがあるでしょうか。
用途による違い
ドッグフードと家畜用飼料では、そもそも用途が違います。
家畜は商品ですので、ただ世話をするのではなく経済効率を追求する必要があります。
そのため、なるべく短い期間で育成・飼育をすることを念頭においているのです。
逆に犬などのペットには、そのような経済効率性は一切重視されません。
「とにかく健康で長生きをしてもらう」ことを目標に、栄養が調整されたのがドッグフードなのです。
こういった意識の差は、飼料における薬品の扱いや栄養設定にも反映されています。
まず、ドッグフードには抗生物質や抗菌剤の使用は認められていませんが、家畜の場合は最終生産物に残留しない範囲内であれば、生産効率を向上させるために使用が認められています。
栄養面に関しても、ドッグフードは犬の健康を考えられた栄養基準が定められているのに対し、家畜飼料は生産効率も配慮された栄養基準となっています。
このように、使用目的の違いから成分にも大きな差が生まれているのです。
加工方法の違い
ドッグフードと家畜用飼料とでは、その加工方法も異なります。
一般的に、ドッグフードを含むすべてのペットフードは加熱加工がされています。
同時にデンプンもα化(※)され、消化吸収がしやすいような作りになっています。
この加工は人の食べるものと同程度の仕上がりであり、使用される機械も同様のものが使われているのです。
フードの形状も多種多様で、それぞれの個体やライフステージに合った細かい配慮がされています。
それに対し家畜用の飼料は、ペレットやフレーク以外のものは加熱処理がされず、デンプンのα化も行われていません。フードの形状も、ライフステージに合わせて粒の大きさを変える程度です。
要するに、家畜飼料にはない細かい配慮や工夫が、ドッグフードにはされているということです。
この背景には、ドッグフードを与える根本的な目的である、「犬に健康に長生きをしてもらいたい」という思いがあるのです。
※α化…別名「糊化(こか)」ともいいます。 デンプンは水で溶いて加熱すると、結合が溶けて糊状に変化しますが、これをα化といいます。 この状態のデンプンは犬や猫でも、自身の消化酵素でも容易に消化・吸収することができます。
ドッグフード | 家畜用飼料 | |
---|---|---|
用途 | 犬が健康に長生きするための食事 | 生産性・効率を重視した飼料 |
抗生物質・抗菌剤の有無 | 使用は認められない | 一部使用が認められる |
加熱 | 必ず行われる | 一部にのみ適用 |
α化 | 必ず行われる | 一部にのみ適用 |
形状 | 用途に合わせて多種多様 | 種類は少ない |
栄養基準 | 健康をとくに配慮 | 生産効率も考慮 |
種類 | ライフステージ・嗜好・用途によって様々なものがある | ライフステージによってわずかな差があるのみ |