ドッグフードの着色料「緑色3号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「緑色3号(ファストグリーンFCF)」

緑色3号は、食品を華やかなグリーン色に演出することが可能な合成着色料です。
光や熱、酸などにも強いため(ただし、アルカリ性には弱いという欠点もあります)、長期間の食品保存でも退色が少ないというメリットがあります。
また、少量でもきれいに均一な着色が可能である、非常にコストパフォーマンスに優れた色素です。

緑色3号は、ドッグフードだけではなく、私たちが口にするメロンソーダや緑色のかき氷シロップなどに用いられることもあります。
これらの食品を飲み食いした後に、舌や唇の色がグリーンに染まってしまった経験のある方も多いのではないでしょうか。
一度着色されてしまうと、うがいをしてもなかなか色が落ちないですし、あまり気分の良いものではありません。

このような経験から、「緑色3号は食べても体に害はないのか?」、「愛犬に与えるフードに入っていても大丈夫なのか?」と心配になることもあるかと思います。
今回は、緑色3号についての安全性や具体的な用途について、詳しくみていくことにしましょう。

緑色3号の用途と使用状況

緑色3号の原料は石油から得られるナフサ

前述した通り、緑色3号は、食品を鮮やかなグリーンや青緑色に染める働きを持つ着色料です。
常温下では粉末状の個体を保ち、ニオイがないため、食品の風味を邪魔する心配はありません。

緑色3号の別の呼び名として、ファストグリーンFCFという名称があります。
「FCF」が何を意味しているのかははっきりとは分かっていません。
有力な説に「For Coloring Food(食べ物に用いられる色素)」の頭文字を取ったものではないか、というものがありますが、「初めに名付けた人が、あまり深く考えずに用いた名前ではないか」とも考えられています。

昔は、石炭からコークスという燃料を作る際の副産物である「コールタール」を原料として合成されていたため、緑色3号を含む合成着色料はタール(系)色素と呼ばれていました。
現在でも慣習的にその呼び名は使われていますが、原料は石炭から石油へと代わっています
2018年現在、合成着色料を作る際に用いられるのは、石油を蒸留した際に得られるガソリンの原料となる油の「ナフサ」です。

ジュースやお菓子に利用されるが頻度は低い

緑色3号は、ドッグフードの他にも、動物用・人間用の医薬品のカプセルや錠剤、人間が食べるお菓子や清涼飲料水など、さまざまな商品に使用されています。
また、口紅やアイシャドウなどの化粧品、ヘアトニック、歯磨きペーストに洗口剤など、食品以外の商品にも、さわやかで涼しげな印象を与える目的で添加されることがあります。

緑色3号の色調をご紹介するうえで最も分かりやすいのは、上の写真のような、メロン味のソーダに代表される「明るく鮮やかなグリーン」ではないでしょうか。
その他にも、下の写真のようなメロン味のかき氷シロップ、キャンディーやグミ(こちらもメロン味やミント味が多いです)など、子供が大喜びしそうなお菓子類に使用される傾向が強い着色料です。

とはいえ、こうしたお菓子類に緑色をしたものは多くはありません。
キャンディーやドロップ、グミなどでポピュラーなものはイチゴ味やレモン味、グレープ味などです。
これらの味に比べると、メロン味のようなグリーンの色調を必要とするお菓子は少ないため、緑色3号は日本においてそれほど頻繁に使われる着色料ではありません

また、緑色を着色する際には、クロロフィル(※1)を用いた色素か、黄色4号(タートラジン)と青色1号(ブリリアントブルーFCF)を混ぜ合わせて使われることが多く、緑色3号の出番はさらに少なくなります。
ただし、黄色4号と青色1号の混色では、パッと華やかで濁りのないグリーンが出しにくいため、人目を引くような鮮やかな緑色を付けたい場合には緑色3号の出番となるようです。

この傾向はドッグフードにおいても同様です。
ワンちゃん用の食品にも緑色3号が使用された商品はあまり見つけることができません

※1 クロロフィル・・・ホウレンソウや大根、ニンジン、クロレラ、スピルリナ(藻の一種)などから抽出される葉緑素です。葉緑素は、植物が光合成を行う際に必要となります。クロロフィルをもとに作られた着色料は、食品を緑色に染めることが可能です。

緑色3号が使用されている商品の原材料欄には、ハッキリと「緑色3号」と書かれている場合もありますが、「緑3」などと省略された記述もみられます。

緑色3号の安全性

発がん性、催奇性、変異原性は確認されていない

2018年1月現在、緑色3号に関しては、発がん性、生まれてくる赤ちゃんへの催奇性(※2)、変異原性(※3)ともに、各種実験を通じて確認されてはいません。
また、緑色3号を長期間摂取し続けた際に現れる健康上の悪影響などについても、現在のところ得られているデータはありません。

※2 催奇性(さいきせい)・・・ある物質がその作用や毒性によって、母体の中の胎児に奇形を発生させることを意味します。

※3 変異原性(へんいげんせい)・・・生き物の遺伝情報を司る染色体やDNA(デオキシリボ核酸)などに、異常を引き起こす性質のことです。

JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)(※4)やIARC(国際がん研究機関)(※5)による試験や評価でも、発がん性は確認されていないとなっています。
唯一、ラットを用いた実験において、緑色3号を皮下に注射したところ、その部分に肉腫の発生が確認されています。
しかしこれは、同じ場所に幾度も注射を繰り返した刺激が影響したものであり、緑色3号の影響ではないとされているため、あまり参考にはならないでしょう。

※4 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)・・・FAO(食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)により作られた組織です。1955年に設立されました。
汚染物質や食品添加物に詳しい専門家らが各国から集い、添加物や医薬品(動物用も含みます)に関する安全性評価、摂取量の基準値などを話し合います。

※5 IARC(国際がん研究機関)・・・WHO(世界保健機関)に属している組織です。がんに関する数々の調査(発病原因やがん化の仕組み、治療法の検討など)や検討を行っています。

EU諸国で緑色3号の使用が禁止されている理由

日本やアメリカ、カナダ、韓国、台湾などにおいては、食品への使用が認められている緑色3号ですが、EU諸国では使用が禁止されています。
これは、緑色3号に毒性があることが明らかであるから、というわけではありません。
EUは「健康に対して害はないかもしれないが、メリットもない食品添加物は、子供たちに与えるべきではない」とする考え方を持っています。
緑色3号が使用される可能性が高い食品は、子供たちの口に入る機会の多いお菓子類です。
そのため、EU各国ではこの考えに基づいて、緑色3号の添加が禁止されているのです。

EU以外の国では、オーストラリアやニュージーランド、ブラジルなどにおいても、緑色3号を使用することは認められていません。
日本においても、味噌や醤油、野菜類、豆類、昆布やワカメなど、緑色3号(その他の合成着色料も含みます)を使用してはいけない食品も存在します。
これらはいずれも日本人が口にする機会の多い食品であり、知らない間に緑色3号を過剰に摂取してしまうことを防ぐために、定められています。

しかし、ワンちゃんたちのフード類に対しては、ここまで厳しい使用制限は設けられていません。
法律で取り締まられていない以上は、私たち飼い主が独自に摂取のルールを決めて、管理をしていくことが大切です。

残留不純物とアルミニウムレーキのリスクについて

現段階で、緑色3号に関する懸念事項があるとすれば、原料由来の不純物と、アルミニウムレーキに関してでしょうか。
ひとつずつ詳しくみていきましょう。

石油由来の不純物によるアレルギー発症への懸念

緑色3号に限らず、化学的に合成された「○色△号」と名の付く着色料は、原料に含まれている不純物が15%までは残留していてもよいという決まりになっています。
緑色3号という着色料自体の安全性については検証されていても、その中にどのような不純物がどの程度含まれており、それが健康被害をもたらすか否かといった踏み込んだ部分までは調べられてはいないのです。
そのため、「残留している不純物に反応して、アレルギー疾患などが誘発されるリスクはゼロではない」という意見もみられます。

アルミニウムの健康被害の可能性について

緑色3号は、水酸化アルミニウムと化合させて作られた緑色3号アルミニウムレーキとしても用いられます。

合成着色料をわざわざアルミニウムレーキにするメリットには、

  • 着色料の粒子が細かくなる
  • 水に溶けにくくなる
  • 伸びが良くなり、ムラなく着色できる
  • 光や熱への耐性がアップし、変色を防ぐことができる

などが挙げられます。

植物などから得られる天然着色料よりも、原材料の状態に左右されにくい合成着色料は、そのままでも使い勝手の良い色素です。
アルミニウムレーキ化すると、その性質がさらに向上するため、メーカー側にとっては非常に魅力的な着色料となることでしょう。

しかし、アルミニウム(※6)を大量摂取することによって、生殖器の正常な発達が阻害される、腎臓や膀胱、神経系の機能に悪影響が及ぼされる、握力が低下するなどといった健康被害のリスクが、ラットの実験によって確認されています。
こうした実験結果を受けて、人間においては、アルミニウムの摂取は「1週間で、体重1kgに付き2mgまで」という制限が設けられているのです。

ドッグフードやワンちゃん用のおやつに緑色3号アルミニウムレーキが使われている場合でも、パッケージの原材料欄には「アルミニウムレーキ」と表示しなくてもよいことになっています(これは人間の食品でも同様です)。
そのため、「食用緑色3号」や「着色料(緑3)」などと書いてあっても、それがアルミニウムレーキであるのかどうか、私たちには判別ができません。
また、緑色3号だけでなく、他の種類の合成着色料のアルミニウムレーキも存在します。
したがって、「アルミニウムを極力愛犬に摂取させたくない」と考える飼い主さんは、合成着色料を使用したフードそのものを避けた方が安心でしょう。

※6 アルミニウムは着色料の他、ホットケーキやスポンジケーキ、ドーナツなどの膨張剤や、漬物の変色防止、煮物の品質保持などに利用されています。

こうした緑色3号の(不確かな)リスクからワンちゃんを守ることは難しくはありません。
前述通り、緑色3号を使用したドッグフードや犬用おやつの種類は少ないため、原材料欄を注意して確認していれば避けることは容易です。
「緑色3号を愛犬に食べさせたくはないけれど、あのフードにもこのフードにも添加されていて避けようがない!」といった状況になることはないでしょう。

とはいえ、色鮮やかなきれいな見た目のフードやおやつには、他の着色料が使われている可能性も多々あります。
その中には、動物実験において変異原性やアレルギー誘発が確認されているものや、注意欠如多動性障害(ADHD)の症状を悪化させると指摘されているものなども含まれます(※7)。
緑色3号以外の着色料の安全性もよく確認し、愛犬に悪影響を及ぼしかねない添加物を使用したフードは極力避けるというのも、ワンちゃんの健康を守るうえでは有効な対策です。

※7 動物や人間への健康被害のリスクが指摘されている合成着色料には、赤色102号(ニューコクシン)や黄色4号(タートラジン)、黄色5号(サンセットイエローFCF)などがあります。
これらの着色料についての詳細は、こちらの記事でご確認ください。
ドッグフードの着色料「赤色102号」の用途と犬に対する安全性
ドッグフードの着色料「黄色4号」の用途と犬に対する安全性
ドッグフードの着色料「黄色5号」の用途と犬に対する安全性

まとめ
緑色3号の食品への使用状況や安全性についてご説明しました。
緑色3号は現在のところ強い毒性が確認されていない食品添加物であるため、知らずに愛犬に食べさせてしまっていたとしても、健康被害についてそこまで心配する必要性はないでしょう。
とはいえ、発がん性や催奇性が確認されていないことが、安全性が高いという証明になるわけではありません。
あくまでも「現段階では」健康被害のデータはない、とされているだけであり、これから先、何らかの毒性を示す研究結果が発表されないとも限らないのです。

ドッグフードへの着色料使用は、あくまでも私たち人間のためのものです(※8)。
着色料によってきれいに色付いたフードを見て、ワンちゃんの食欲がアップするようなことはありません。
緑色3号の利用を禁じているEUの、「害はないかもしれない。しかし、健康にとって役に立たない添加物は、子供たちに摂取させないようしよう」という考え方はそのまま、私たちの愛犬にも当てはめることができるのではないでしょうか。

※8 ドッグフードへ着色料を使用する目的としては、まず、商品をきれいに見せて飼い主さんの購買意欲を高めることが挙げられます。
また、自然の色を生かしたフードは原材料の色に左右されがちです。例えばトウモロコシは、収穫時期や産地、品種、その時の気候などによって、鮮やかな黄色から白っぽい色までさまざまな色調のものが収穫されます。
こうした原料の色の影響を受けやすいフードを、着色料を使い年間を通じて一定の色に保つことで、「この間買った時とフードの色が違う。不良品ではないのか?」といった購入者側からのクレームを防止することができるのです。