ドッグフードの原材料「さつまいも」は食物繊維が豊富!

ドッグフードの原材料「さつまいも」

秋から冬の寒い時期にかけて、ホックリと焼かれたさつまいもを食べるのが毎年の楽しみといった方も多いことと思います。
料理に使ったりおやつにしたりと、私たち人間に大人気のさつまいもですが、犬たちも大好きだということをご存じでしょうか。
さつまいもは美味しいだけでなく、人にも犬にもさまざまな健康効果が期待できる優れた食材なのです。

さつまいもとはどんな素材か

ナス目ヒルガオ科サツマイモ属に分類されるさつまいもは、9月から11月にかけて旬を迎えます。
しかし、2~3ヶ月程寝かせたほうが甘味が増すために、さつまいもが本格的に美味しくなる季節は冬だといえるでしょう。
さつまいもに花が咲くイメージはあまりないかもしれませんが、ヒルガオ科というだけあり、薄い紫色からピンク色をした、小さめのアサガオのような見た目の花を咲かせます。

さつまいもは60~70℃程度の温度でじっくりと加熱することによって、甘味がより増幅します。
温度が上がるとさつまいもの中に含まれるデンプン質とβ-アミラーゼという消化酵素が反応し、麦芽糖という糖分を作り出すのです。
石焼き芋やふかしイモが、ゆでただけのさつまいもよりも甘く美味しくなる理由はこの麦芽糖にあったのです。
ちなみに私たちやワンちゃんが普段口にする、赤紫色の皮に包まれたいわゆる黄色い「イモ」の部分は、さつまいもの根に当たります。

肉類と比べると価格が低めに設定されているイモ類ではありますが、さつまいもは決して安価であるとはいえません。
そのため、安く売ることを前提としたドッグフードを作る際には、コスト面から避けられがちな素材です。
さつまいもはどちらかといえば、高価格帯のドッグフードによく使われている食材なのです。
また、ワンちゃんの食事を手作りしている飼い主さんたちにとっても、非常に人気のある素材となっています。
その理由は事項でも取り上げる、「栄養価の高さ」にあります。

さつまいもの栄養素と犬への健康効果

時にホクホク、時にねっとりとした濃厚な甘さを持つさつまいもは、甘味を敏感に感じ取るワンちゃんたちにとって「ごちそう」ともいえる食材です。
しかしさつまいもの持つ数々の栄養成分も、味に負けず劣らず魅力的なのです。

食物繊維

さつまいもといえば、「便秘の解消に良い食材」と連想されるかたも多いことと思います。
さつまいもには便通に影響を及ぼす、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれているのです。

水溶性食物繊維はその名の通り水に溶ける性質を持った繊維です。
腸内の水分を吸収するため便が柔らかくなり、スムーズに排出しやすくなります

また、水溶性食物繊維は水に溶けた際、ネバネバとしたゲル状に変化します。
粘つくことにより犬の体に不要な有害物質や老廃物を取り込んで、便と一緒に外へと出してくれる作用があるのです。

さらに、塩分やコレステロールの吸収を抑制したり、血糖値の上昇速度を緩やかにしてくれるなどの働きも持ちます。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病を持ったワンちゃんにも、嬉しい成分といえるでしょう。
水溶性食物繊維は腸内細菌のエサになりやすいため、結果的に善玉菌が増え、愛犬の腸内環境の向上も期待できます。

一方、不溶性食物繊維は水に溶けません。
そのため、ワンちゃんの腸や胃の中で水分を吸収し、自らがどんどんと膨らんでいきます。
これにより便の量が増え、適度な硬さとなります。
同時に、腸が刺激されよく動くようにもなるのです。

水溶性食物繊維は粘つくことにより自らに老廃物をくっつけて排出しますが、対して不溶性食物繊維は、ある程度の硬さを保ちながら腸内を移動し、有害物質を巻き込みます。

食物繊維の最も良い摂取バランスは水溶性:不溶性が1:2の割合だといわれています。
皮のついたさつまいも100g中に含まれる水溶性食物繊維は約0.9g、不溶性食物繊維は約1.8g程度ですので、さつまいもの繊維バランスはまさに理想的であるといえます。

一般的に、さつまいものサイズが小さいほうが食物繊維が豊富に含まれている傾向にあります。
便秘気味のワンちゃんに与える際には、小さめのさつまいもを購入されたほうが効果的です。

ヤラピン(ヤラッパ樹脂)

さつまいもを切った時に切り口から出てくる白い液体の正体は、「ヤラピン(ヤラッパ樹脂)」と呼ばれる糖脂質(脂肪酸と糖などが合わさったもの)です。
このヤラピンは、イモ類ではさつまいもにしか発見されていない成分で、胃の粘膜を保護してくれる作用があります。
このことから、さつまいもは消化器系が弱まっているワンちゃんにも優しい食材であることがわかります。
しかもヤラピンには、便を柔らかくしたり腸の蠕動運動を促す作用もあるため、食物繊維とともに摂ることで更なる便通改善効果が期待できるのです。

ビタミンC

さつまいもには、ビタミンCもたっぷりと含まれています。
ビタミンCは、茹でたり煮たりする時に水に溶け出ていきやすい栄養素です。
しかし、さつまいもの豊富なデンプン質にガッチリと守られているビタミンCは、調理後も70%以上が残っているといわれています。
ビタミンCは免疫力を強くしたり、ストレスに強い体を作る働きを持ちます。

私たち人間と異なり、犬は自分の体内でビタミンCを作り出すことができます。
このため昔から、「犬にビタミンCの摂取は必要ない」というのが定説でした。

しかし、病気や日々のストレスなどにより、ビタミンCは大量に消費されてしまうのです。
そうなった時、犬の体の中で合成される量だけでは足りなくなり、ビタミンCが欠乏する可能性が出てきます。
ビタミンCが不足すると、疲れやすくなる、カゼをひきやすくなる、食欲不振、歯ぐきや皮下の出血などさまざまな症状がみられるようになります。
ビタミンCを含有した食品を犬に与えることは、決して無駄ではないのです。

またビタミンCには強力な抗酸化作用もあり、ビタミンEとの相乗効果で老化の原因となる活性酸素が体をサビつかせることから守ってくれます。
ビタミンEも、さつまいもの中に多く含まれている栄養素のひとつです。
すなわち、さつまいもを適量与えることによって、愛犬のアンチエイジングや生活習慣病の予防効果が期待できるというわけです。

さつまいもを市販のドッグフードにトッピングしたり、手作りフードの材料として使う場合には、皮ごと使用することをオススメします。
上でご紹介したヤラピンもビタミンCも、さつまいもの皮のすぐ下に最も多くの量が集まっているのです。
さつまいもの皮にはデンプンを分解してくれる酵素が含まれているため、皮ごと与えることによって消化も良くなります。
特に、さつまいもを食べた後のオナラやお腹の張りが気になるワンちゃんには有効です。

さつまいもを含んだドッグフードを与える際の注意

さつまいもの与えすぎは、肥満や下痢、便秘を招く

さつまいもは炭水化物を多く含んだ食材です。
腹持ちが良いので、ひっきりなしに食事やおやつを要求する食いしん坊なワンちゃんや、ダイエット中で多くのフードを食べられない子に食べさせることにより、満足感を与えることができます。
また、小型で痩せ気味のワンちゃんや、妊娠・授乳中の母犬など、炭水化物が多めの食事が推奨されているワンちゃんたちにとってもぴったりな食材です。

しかし、いくら健康に良く犬も喜ぶからとはいえ、度を越した量を与えることは愛犬の肥満を招きかねませんので注意が必要です。
また、さつまいもの豊富な食物繊維も取り過ぎると効果が裏目に出てしまい、下痢や便秘を誘発してしまう可能性もあります。
同時にカルシウムや鉄の吸収を阻害してしまい、栄養不足に陥るケースもあるのです。

食後にオナラが増えることがある

また、さつまいもをワンちゃんにあげることで、「オナラが増えて困っている」という飼い主さんも多いです。
これは、消化し切れなかったさつまいもが腸まで達してしまうことによって起こると考えられています。

保存状態や部位によっても異なりますが、米やトウモロコシ、小麦などの穀類と比較して、さつまいものデンプンの分子サイズは大きめです。
また、他の植物に比べてさつまいもの細胞壁(※1)は壊れにくいのです。
このふたつの事実から、さつまいもは消化に時間がかかる食品であるということがわかります。

消化されなかったさつまいもが腸まで達すると、これを分解しようとして腸内細菌が増えます。
そして増加した腸内細菌たちがさつまいもを分解する際に、ガスが大量に発生するのです。
このガスがワンちゃんのオナラやお腹がコロコロと鳴る原因となります。

ちなみに、さつまいもに含まれる食物繊維にも腸内細菌を増やす作用があります。
さつまいもは、お腹にガスが溜まりやすくなる条件を兼ね備えてしまっているのです。

愛犬のオナラの原因がさつまいもだとハッキリしている場合には、市販のドッグフードならばさつまいもが入っていないものに変更したり、手作りフードであれば量を減らすなどして対処できます。
さつまいもの筋っぽい部分には特に食物繊維が多いので、筋の少ない部分を使うこともよいですね。
また上記の通り、さつまいもの皮にはデンプン質の分解酵素が含まれていますので、皮ごと与えてみることも有効です。

※1 細胞壁…細胞の周囲を覆って、形や硬さを保つ役割をする組織。

アク抜きは基本的に不要だが、体質に合わない犬もいる

植物のアクは、外敵から身を守るために生成されるものです。
したがって、生物にとって毒性のある成分が含まれていることが一般的です。
しかしさつまいものアクの正体は、ヤラピンやタンニン、クロロゲン酸といった、体に有益な成分です。
タンニンとクロロゲン酸は、ポリフェノール(※2)の一種で、抗酸化作用が期待できる物質です。
さつまいものアクは下処理をして除かなくても問題はないどころか、積極的に取りたい成分であるといえます。

とはいえ、アク抜きをしないさつまいもは色が黒ずんでしまい、見た目もよくありません。
また、ワンちゃんの中にはこれらの成分が強すぎると皮膚のかゆみなどの異常が出る子もいるようです。
愛犬にそうした症状がみられる場合には、しっかりとアク抜きをしてあげましょう。

さつまいものアク抜きは、皮をむき15分ほど水に浸します。
ヤラピンやポリフェノール類は空気に触れると黒ずんでくるので、途中で水が汚れてきた場合にはキレイな水と取り替えるようにしましょう。
さつまいもを小さく切れば切るほど、効率的にアク抜きができます。

※2 ポリフェノール…植物が光合成をする際に、有害な紫外線から自分の身を守るために生成する物質。

さつまいもの調理法

さつまいもは生のままでも犬に与えることが可能ですが、火を通した方が消化が良くなるのでオススメです。
ゆでたりふかした後に潰すことによって、さつまいもの甘い香りが際立ち、ワンちゃんが喜んで食べてくれるという効果も期待できます。

また、干し芋を買ったり自作したりして愛犬に与える飼い主さんもいらっしゃいますが、少量に留めておいたほうが無難です。
天日に干されることにより、さつまいもの栄養素が凝縮された干し芋は、とても高栄養な状態です。
体に必要な栄養素も、取りすぎると害となる可能性があります。
さつまいもにはカリウムも豊富に含まれていますが、凝縮されて高濃度となったカリウムは腎臓疾患のワンちゃんなどには悪影響※3)となります。

※3 腎臓疾患とカリウムの関係…カリウムは腎機能によってのみ排出されるため、腎臓の働きが衰えた状態では体内に溜まる一方となってしまう。

まとめ
さつまいもは体に有益な栄養素が詰まっているうえに、ワンちゃんが喜んで食べてくれるというメリットの多い食材です。
しかし、その高い栄養価ゆえに摂取にはいくつかの注意が必要となります。
ワンちゃんの体調をよく観察しながら、その子に合ったさつまいもの量を調節してあげることが大切です。そうすることでさつまいもは、愛犬の健康維持の大きな味方となってくれることでしょう。