ドッグフードの原材料「ミルク」
「ミルク」と聞いて、私たち日本人が真っ先に連想するのは牛乳ではないでしょうか。
しかし「ミルク」という言葉は、生き物の乳全般を表しており、その中には犬や人間の乳ももちろん含まれます。
犬は他の哺乳類と同様、生後しばらくはお母さんのお乳や人工乳などを飲みながら育ちますが、成長とともに肉や魚、穀類、野菜などを食べるようになります。
しかし、適度に脂肪を含んだ香りの良いミルクは、おとなになったワンちゃんからも人気が高いのです。
おいしく手軽に栄養補給ができる便利なミルクですが、愛犬に与える際に気を付けたいポイントもあります。
そうしたことも踏まえつつ、ミルクについて詳しく解説していきたいと思います。
ドッグフードに幅広く利用される牛乳とヤギミルク
ミルクの中で、ワンちゃん用のフードやおやつに頻繁に用いられているものには、牛乳とヤギミルク(ゴートミルク)が挙げられます。
牛乳が市民権を得ている日本において、ヤギミルクは非常にマイナーな存在です。
実物を飲んだことはおろか、見たこともないという飼い主さんも多いことでしょう。
しかし、ヤギミルクは栄養価は牛乳とほぼ同等、さらにカルシウムは牛乳より多く、ワンちゃんの体にも馴染みやすい飲み物です。
体に馴染みやすいとはどういうことかといいますと、ヤギミルクは牛乳に比べて犬の母乳の成分に似ており、アレルゲン(アレルギーを発症させる物質)となりにくいのです。
しかも、ワンちゃんの下痢や腹痛の原因となりうる乳糖(「4.ワンちゃんの乳糖不耐症について」にて後述します)も少なく、非常に犬の体に優しい成分組成になっています。
こうしたミルク類は、犬用の飲み物としてはもちろん、ドライフードやウェットフードといった主食や、ビスケット、ジャーキー、卵ボーロ、ゼリー、歯磨きガムなど、さまざまなワンちゃん向けのおやつにも利用されています。
また、ペースト状になったシニア犬向けの介護食に入っていることもあり、高齢のワンちゃんの栄養補給にも役立ちます。
牛乳は飲料、主食、おやつ問わず頻繁に使われますが、ヤギミルクは飲料とおやつに利用されることが多いです。
ヤギミルクを使った犬用ミルクは、缶や袋入りの粉末状のもの(いわゆる粉ミルク)が主流ですが、瓶詰めされた液体の状態で販売されているケースもあります。
粉ミルクは授乳期の子犬のためのもの、というイメージがありますが、ワンちゃん向けの粉ミルクの中にはグルコサミンやコンドロイチン、各種乳酸菌など、成犬やシニア犬の健康維持に嬉しい成分を添加した商品も作られています。
ミルクをドッグフード類に使用する一番の理由は栄養価を高めるためですが、その他にも大切な目的があります。
それは、ワンちゃんのフード(またはおやつ)への嗜好性をアップさせることです。
いうまでもなく、牛やヤギから絞られたミルクは動物性食品です。
雑食性を身に着けたとはいえ、いまだ肉食寄りのワンちゃんたちは、動物性の食べ物を好みやすい傾向にあります。
そのためミルクの匂いを喜ぶワンちゃんは多く、フードに加えることによって、食い付きを良くする効果が期待できるのです。
特にワンちゃんたちに人気なのは、チーズや全脂粉乳(※1)などのような、脂肪が多めに含まれている製品です。
反対に、脂肪分の少ないタイプはあまり喜びません。
脂質の低い乳製品には、粉ミルクに欠かせない脱脂粉乳(※2)や、ドライフードに頻繁に利用される乾燥ホエイ(※3)といったものが挙げられます。
※1 全脂粉乳・・・生乳(加熱や殺菌を行っていない、絞ったままの動物の乳)や牛乳(牛の生乳を加熱などによって殺菌処理したもの)の成分バランスをいじらずに、乾燥させ粉末にしただけのものを指します。脱脂粉乳のように乳脂肪分を除去していないため、脂質は多くなりますが、ワンちゃんの嗜好性が高いことが特徴です。
※2 脱脂粉乳・・・動物の乳から水分と乳脂肪分を取り除き、パウダー状に加工したものです。脂質が少なくヘルシーであり、保存性にも優れています(水分は細菌が増殖しやすい環境を作り出し、脂質は酸化されやすいため、これらの割合が大きい食品ほど長期保存には向きません)。
※3 乾燥ホエイ(乾燥ホエー)・・・ホエイ(ホエー)とは乳清のことです。ヨーグルトの上に浮いている水分や、チーズの製造過程で出てくる水分がホエイです。タンパク質やカルシウム、乳糖に富んでおり、筋肉を作るアミノ酸も豊富です。「ホエイパウダー」、「ホエイプロテイン」といった名称でドッグフードに頻繁に配合されています。
ミルクの栄養素
牛乳とヤギミルクの栄養素含有量
ミルクは、タンパク質、炭水化物、脂質といった三大栄養素だけではなく、ビタミンAやビタミンB群、そしてミルクの代名詞ともいっても過言ではないカルシウムなど、多くの栄養素を手軽に取れる優秀な食品です。
下の表は、ドッグフードやワンちゃん用のおやつに使用される頻度の高い牛乳とヤギミルクの主な栄養成分量と、その簡単な働きを一覧にしたものです。
栄養素 | 単位 | 牛乳 | ヤギミルク | 各栄養素の主な働き |
---|---|---|---|---|
エネルギー | kcal | 67 | 63 | タンパク質、脂質、炭水化物が体内で代謝されることによって生み出されます。 生物の筋肉、内臓、脳などを動かす、生きるための動力です。 |
タンパク質 | g | 3.3 | 3.1 | 肉や血液、内臓、被毛に爪など、ワンちゃんの体を構成するさまざまな部位に使われます。 ミルク類のタンパク質には、食品から摂取することが不可欠なアミノ酸(必須アミノ酸)も豊富に含まれています。 |
脂質 | g | 3.8 | 3.6 | 少量でも大きなエネルギーを生みだすことが可能な栄養素です。 ミルク類の脂質は、他の食品に比べて消化吸収しやすいといわれています。 |
炭水化物 | g | 4.8 | 4.5 | 牛乳に含まれる炭水化物のほとんど(99%以上)は乳糖です。腸内の善玉菌を増やしたり、鉄分やカルシウムの吸収率をアップさせる効果が期待できます。 ただし、ワンちゃんは乳糖の分解が苦手なケースが多いため、注意が必要です。(詳しくは「4.ワンちゃんの乳糖不耐症について」をご覧ください) |
ビタミンA(レチノール) | μg | 38 | 36 | 主に動物性食品に多く含有されるビタミンAは、レチノールという種類になります(対して植物に多いのはβ‐カロテンです)。 レチノールはβ‐カロテンに比べて作用が強く、体への吸収性も高いことが特徴です。 目や皮膚の健康維持、粘膜の強化などの働きを持ちます。 詳しくは→ドッグフードの栄養素「ビタミンA」の働きとは?過剰摂取に注意 |
ビタミンB1 | mg | 0.04 | 0.04 | ブドウ糖が代謝されエネルギーとなる際に活躍する栄養素です。 また、ワンちゃんの心拍数や血圧を正常に保ったり、脳機能を維持するために必要な「アセチルコリン」という神経伝達物質の合成にも関与します。 詳しくは→ドッグフードのビタミンB1の働きとは?欠乏した犬はどうなるの? |
ビタミンB2 | mg | 0.15 | 0.14 | タンパク質、脂肪、炭水化物を効率よく燃焼させ、エネルギーに変えることをサポートします。その中でも特に、脂肪燃焼時に多く必要な栄養素です。 また、白内障にかかりにくくしたり、被毛や皮膚を丈夫に保ってくれます。 詳しくは→ドッグフードの栄養素「ビタミンB2」の働きと欠乏の危険性 |
ビタミンB12 | μg | 0.3 | 0 | 「造血のビタミン」という通称通り、体中に酸素を運搬する赤血球(血液内の成分)を作り出すために働く栄養素です。 末梢神経の傷みをケアし、肩こりや冷えの緩和にも効果を発揮します。 詳しくは→ドッグフードの栄養素「ビタミンB12」の働きと欠乏のリスクとは? |
カルシウム | mg | 110 | 120 | 丈夫な骨や歯を維持するためには不可欠なミネラルです。 野菜や魚と比べて、牛乳に含まれるカルシウムは吸収率が非常に高い(約40%)ことが特徴です。 牛乳のカルシウムとリンの含有比率は1:1という、吸収性アップに適した絶妙なバランスなのです。 |
こうしてみると、牛乳の栄養素含有量の方が全体的にやや高いものの、両者にそれほどの違いは見受けられません。
唯一特徴的な部分は、牛乳には0.3μgのビタミンB12が入っているところ、ヤギミルクはゼロであるということくらいでしょうか。
しかし、ヤギミルクは牛乳に比べて「エネルギー量が少なく、カルシウムが多い」というメリットがあります。
加えて、前述通り、ヤギミルクはアレルゲンともなりにくく、乳糖も少ないという特徴を持ちます。
「牛乳を与えてはいけない」ということではありませんが、愛犬にどちらを与えようか迷った時には、ヤギミルクを選ぶようにするとよいでしょう。
脂肪分の摂り過ぎにはご注意
動物の種類や飼育環境、搾乳の季節などによっても異なりますが、一般的にミルク類は脂質の含有量が高めです(低脂肪乳や無脂肪乳などの、脂肪量が調整されている商品は除きます)。
私たち人間よりも活発に動く傾向のあるワンちゃんにとって、脂質は効率の良いエネルギー源となります。
また、犬は本来は肉食性であったために、動物性脂肪の消化も比較的得意です。
とはいえ、脂質を過剰摂取すると、使い切れなかった分が体内に蓄積され、肥満の原因ともなります。
また、中性脂肪やコレステロールは脂質を原料として作られます。
そのため脂質が多すぎると、これらの成分も多く合成されてしまい、血中に大量に含まれるようになってしまうのです。
血中に中性脂肪やLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロールです)が増え過ぎ、反対にHDLコレステロール(善玉コレステロール)の量が減少してしまうと、脂質異常症(高脂血症と表現されることもあります)となります。
これを放置しておくと、ワンちゃんの場合、神経麻痺や膵炎、目の障害などが起こりやすくなるため、脂質の摂りすぎには注意が必要です(※4)。
肥満傾向にある子、獣医さんにコレステロール値などで注意を受けている子、膵炎を患っている子などには、ミルク類は控えたほうがよいでしょう。
もしくは、無脂肪や低脂肪のミルクなどを選んであげましょう。
※4 犬は本来、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)よりもHDLコレステロール(善玉コレステロール)の値が高いため、人間と比べると脂質異常症になるリスクは低いといわれています。ただし、犬種によっては脂質異常症になりやすいケースもあるため、脂肪分の摂り過ぎに注意することは大切です。
ワンちゃんの乳糖不耐症について
乳糖が充分に分解できなくなる乳糖不耐症
ワンちゃんにミルク類を与える際に最も気をつけなければならないのは、乳糖不耐症です。
乳糖不耐症とは、ミルクに含まれる乳糖(ラクトース)が体内で充分に分解できず、腸内に溜まった乳糖によって体調に影響が出てしまうことです。
もう少し詳しくご説明しましょう。
体内に入った乳糖は、ラクターゼと呼ばれる乳糖分解酵素によって「ガラクトース」と「ブドウ糖」というふたつの物質に分けられ(=分解され)、体内で吸収・利用ができるようになります。
しかし、ラクターゼの分泌量が少ない、働きが悪いといったことが起こると、乳糖がしっかりと分解されにくくなるのです。
分解されそこなった乳糖は体内に吸収されず、そのまま大腸まで進んでいきます。
大腸に達した乳糖は、腸内の浸透圧を上げて水を大量に引き込みます。
すると、便にも多くの水分が含まれてしまい、軟便や下痢といった症状が現れるのです。
また、大腸内には乳糖を好む腸内細菌が生息しています。
こうした細菌が大量の乳糖を分解することにより、乳酸やメタン、二酸化炭素など多くの物質が生成されます。
これらが腹痛やお腹の張り(コロコロと音が鳴るなど)、オナラの増加、げっぷなどの原因となるのです。
ミルクを飲んで育つ子犬たちのほとんどは、ラクターゼをきちんと分泌できます。
しかし、離乳期を迎え、成犬になるにつれて段々と分泌量が減り、乳糖不耐症となってしまう子が多いのです。
ワンちゃんがどの程度まで乳糖を分解できるかは、その子の体質や体調、体格、年齢などさまざまな条件によって異なります。
そのため、少しのミルクを口にしただけでもお腹を壊してしまう子もいれば、ある程度の量を摂取してもケロリとしている子もいます。
ご自分の愛犬はどのようなタイプなのか、しっかりと把握しておくことが大切です。
この乳糖不耐症は、ワンちゃんたちだけの問題ではありません。
私たち日本人も、成人の4人に1人程度の割合で、乳糖不耐症の人が存在します(※5)。
とはいえ、乳糖不耐症は病気ではありません。
ほとんどの哺乳類に起こる可能性のある、自然な現象なのです。
子どもがいつまでもお母さんのお乳を飲んでいては、お母さんは栄養を奪われる一方で、いつまでたっても次の命を産むことができません。
そのため、赤ちゃんは次第に乳糖の分解が苦手になり、お乳以外の食べ物を食べるように(離乳するように)プログラミングされているのだといわれています。
乳糖不耐症にはこうした背景があることから、ワンちゃんがミルクを飲んでお腹の調子が悪くなることを、「病気ではないか?」と必要以上に心配する必要はありません。
もちろん一時的に胃腸の調子が悪くなり、消化能力が落ちている可能性もありますが、乳糖不耐症であれば上手に付き合っていくことが大切です。
※5 国や民族ごとの乳糖不耐症の人の割合は、乳製品の平均摂取量などによって異なります。日本人は代々野菜や穀類を多く食べ、ミルクを口にする機会が少ない環境で育つケースが多いため、乳糖不耐症になる人が多いといわれています。ただし乳糖不耐症には、遺伝ではなく食習慣が影響するため、毎日少しずつミルクを摂取して体に慣らすことにより、次第にラクターゼの分泌量が増加するという実験結果が出ているのです。
乳糖不耐症のワンちゃんへの対策
ラクターゼの分泌量が少ない愛犬を乳糖の影響から守るには、ミルク類を与えないことが最も簡単で確実な方法です。
授乳期の子犬を除けば、ミルクを飲まないと生きていけないという犬は存在しないので、体調へのリスクを冒してまで無理に与える必要は一切ありません。
とはいえ、ミルクが大好きなワンちゃんは多いですし、ミルクを手作りフードやドッグフードに混ぜることで、栄養補給や食い付きアップの効果も期待できます。
体調が優れなくて食欲がない時でも、ミルクであれば飲んでくれる、という子もいるでしょう。
愛犬にたくさん水を飲ませたい時に、ミルクをほんの少し飲み水に混ぜている、という飼い主さんもいます。
このように、「愛犬はミルクが大好きだし飲ませたいけれど、いつもお腹の調子が悪くなってしまう」というお悩みは、以下のような方法で解決できる可能性があります、
犬用ミルクやヤギミルクを与える
ワンちゃん用に作られたミルクは、栄養分が調整されており、乳糖の含有量もカットされています。
また、脂肪分も低めに設計されていることが多く一石二鳥です。
ヤギミルクは、もともと含まれている乳糖が少ないため、ワンちゃんのお腹に優しいことが特徴です。
これらのミルクは、粉末状のものも、パックや瓶入りの液体状のものも販売されていますので、用途に合わせて選びましょう。
粉ミルクであれば、いつものフードにふりかけて風味付けなどにも利用できますし、そのまま飲ませるのであれば、液体状のミルクの方が手間がかかりません。
乳糖不耐症の人向けの牛乳を与える
乳糖不耐症の人のための牛乳も、ワンちゃんに与えることができます。
上でご紹介した犬用のミルクやヤギミルクは、ペットショップや通信販売、デパートや大きめのスーパーのペット用品売り場などで購入することができますが、小さなお店では扱っていないこともあります。
対して、乳糖不耐症の人用の牛乳であれば、近所の小さなスーパーでも手に入りやすいでしょう。
ただし、犬用ミルクに比べて脂肪分などが多く含まれていることもありますので、入手が可能であれば、ワンちゃんにはワンちゃん専用のミルクを与えた方が無難です。
ミルクを温める
冷蔵庫から出したばかりの冷えたミルクは、ワンちゃんのお腹にとって優しくありません。
「冷たいミルクでは下痢をするけれど、温めたミルクで体調が悪くなったことはない」といったワンちゃんの場合は、乳糖不耐症ではなく、ただ単に冷たいミルクでお腹が冷えてしまっているだけである可能性も考えられます。
いずれにせよ、ワンちゃんにミルクを与える際には、常温以上の温度で与えるようにしましょう。
とはいっても、沸騰した熱々のミルクを与えることはもちろんいけません。理想は人肌程度の温度に温めてあげることです。
乳糖は熱を加えてもなくなることはないので、根本的な解決にはなりませんが、温かいミルクの方がラクターゼの活性が高まり、乳糖が分解されやすくなるといわれています。
ごくごく軽めの乳糖不耐症の子であれば、ミルクを温めてあげるだけでも症状が出ないケースもあります。
また、症状の軽いワンちゃんの場合は、お湯や常温の水でミルクを薄めてあげることも有効です。
ミルクだけを与えるのと同じ量を飲ませても、ミルク自体の割合が少なくなるので、その分乳糖を摂取しなくて済みます。
しかし、味や匂いが薄まることから、食べ物へのこだわりが強いワンちゃんの場合、飲んでくれないケースもあることがデメリットです。
チーズやヨーグルトを与える
「乳糖の心配をせずにミルクの栄養を補給させたい」といった場合には、ミルクを原料として作られているチーズやヨーグルトを与えるという方法もあります。
これらの食品はどちらも乳糖があまり含まれていないため、乳糖不耐症のワンちゃんにも安心して与えることができるケースが多いのです。
チーズの製造過程では、ホエイ(乳清)と呼ばれる水分が出てきます。
ホエイには乳糖がたくさん含まれていますが、チーズを固めるために邪魔な水分は取り除かなければなりません。
そのため、完成したチーズには乳糖があまり残っていないのです。
日本で多く消費されているゴーダチーズを例に挙げると、含まれている乳糖の量は牛乳の約3%程度です。
チーズに関する詳細は、こちらの記事をご参照ください。
→ドッグフードの原材料「チーズ」の種類と栄養素
ヨーグルトに使われる乳酸菌類は、乳糖を利用して乳酸などを生成し、ヨーグルトを発酵させます。
原料のミルクにたっぷりと含まれていた乳糖は、発酵段階で乳酸菌類に使われ、ヨーグルトの中から次第に減っていくのです。
乳糖不耐症の動物(人間も含む)が、ヨーグルトを食べても消化器系の症状を起こさない仕組みに関しては、まだハッキリと分かっていないことも多いのですが、概ねこうした理由からであろうと考えられています。
以上のように、乳糖不耐症のワンちゃんでもミルクを摂取できる(可能性のある)方法は色々とあります。
しかし、繰り返しになりますが、ワンちゃんの乳糖分解能力は個体差が大きいため、全ての子に有効な方法はありません。
中にはこれらの方法のいずれでも、下痢をしてしまうワンちゃんもいることでしょう。
犬用ミルクもチーズやヨーグルトも、乳糖の含有量はゼロではないため、ワンちゃんの体質や体調によっては合わないことがどうしても出てきてしまいます。
こうした方法を取る場合には、まずはごく少量を与え、愛犬の体調に変化はないかを確認しながら徐々に量を増やしていくようにしましょう。
また、乳糖を分解したミルクでもお腹を壊してしまう場合には、アレルギーの可能性も疑われます。
アレルギーといえば、くしゃみや鼻水、皮膚のかゆみなどを連想しがちですが、下痢や嘔吐などの消化器症状が起こることもあります。
もしも愛犬がミルクに対するアレルギーを持っているとすれば、いくら乳糖が分解されていたとしても反応が出てしまいます。
それは、アレルギーの原因は乳糖ではなく、乳タンパク質に含まれる全く別の成分だからです。
ワンちゃんが何に対してアレルギーがあるのかは、動物病院の血液検査や除去食試験などで調べることができますので、心配な場合には一度獣医さんに相談されることをおすすめします。
まとめ
そのまま飲ませることも、手作りフードの調理に活用することもできる便利さも、嬉しいポイントです。
ミルクを喜んでくれる愛犬に対しては、体調に影響を及ぼさない程度のミルクの量や、乳製品の種類を把握して、適切に与えてあげましょう。
「犬用ミルクはダメだけれど、ヤギミルクならOK」や、「チーズは大丈夫だけれど、ヨーグルトでは軟便になる」など、ワンちゃんごとに差が出る可能性があります。
繰り返しになりますが、ミルクを好まない子、体質に合わない子に無理やり与えることはNGです。