ペットフード公正取引協議会の基準をクリアしたドッグフードとは?

ペットフード公正取引協議会の基準をクリアしたドッグフードを選ぶ

安全なドッグフードを選ぶ基準のひとつに、「ペットフード公正取引協議会の基準をクリアしたドッグフードを選ぶ」というものがあります。
日頃聞き慣れない言葉かもしれませんが、「ペットフード公正取引協議会」における基準は、日本におけるペットフードの表示・安全基準に関して多大な影響をもたらしています。
具体的には、 ペットフード公正取引協議会の運用する「ペットフードの表示に関する公正取引規約」は、日本のペットフード業界において、安全基準として一般的なものとなっているのです。

「ペットフード公正取引協議会」がどういったものなのか、安全性を保証する基準として適切であるかどうかなど、詳しくみていきましょう。

ペットフード公正取引協議会とは

ペットフード公正取引協議会に関して知る前に、まずは「公正取引協議会」、「公正取引規約」といった、各用語に関する理解を深めていきたいと思います。

公正取引協議会とは

公正取引協議会とは、消費者庁と公正取引委員会(※1)の認定を受けた協議会のことで、業界内における自主規制機関を指します。
公正取引規約の運用や周知徹底、規約に違反する事業者の措置に関することなどを、主な活動内容としています。
その種類はペットフードをはじめ、自動車や医療用医薬品、不動産など多岐にわたります。
平成28年時点で、80の公正取引協議会があるとされています。

※1 公正取引委員会…国の行政機関で、独占禁止法の運用、下請法の運用、景品表示法の運用などを行っています。

公正競争規約

景品表示法の規定に基づき、業界が自主的に定めている景品と表示に関するルールのことです。
公正な競争を確保することを目的としており、公正取引規約を遵守している限りは、景品表示法に違反しないようになっています。
公正取引協議会によって運用・施行されます。

ペットフード公正取引協議会とは

概要・基準

ペットフード公正取引協議会とは、ペットフードの表示に関する事項を定めることで公正な競争を確保することを目的とした任意団体です。
2017年時点で、69社のメーカー、輸入業者、販売会社などが会員(準会員含む)として名を連ねています。
一見さほど多くないように思えるかもしれませんが、日本国内で流通するペットフードの90%以上をカバーしていることを考えると、その規模がわかるかと思います。
上記の会員は、ペットフード公正取引協議会の運用する「ペットフードの表示に関する公正競争規約」にのっとり商品を販売・製造していることになります。

公正競争規約はあくまでも自主的なルールであり、非会員には罰則などもありません。
しかし公正取引協議会に所属していない業者であっても、基本的にこのルールにのっとり製品を製造・表示しているのが現状です。
そのため、日本のペットフード(とくに総合栄養食に関するもの)における一般的な指標・基準としての地位を、公正競争規約は確立しているといえるでしょう。

販売されているペットフードのパッケージには、「このフードは、ペットフード公正取引協議会の定める給与試験の結果、成犬用の総合栄養食であることが証明されています。」といった旨の表記がされていることが多いです。

歴史

ペットフード公正取引協議会の前身となったのは、「ドッグフードの表示に関する公正競争規約」を制定するために1974年に発足した「ドッグフード公正取引協議会」です。
当時はまだ、ドッグフードに関する世間的な認識はそれほど高くはありませんでした。
しかし、ドッグフードの将来的な発展のために、国際的な考え方を反映し、ドッグフードの栄養や製造に関する規則を設けることとなりました。
その際に制定されたのが、「ドッグフードの表示に関する公正競争規約」です。
主に「総合栄養食」の栄養基準を設定し、その基準には国際的に権威のある栄養基準が採用されました。
こうしたことからも、ドッグフードの栄養や安全に関する意識の高まりがうかがえます。

1991年には、そのころ市場が急速に拡大したキャットフードも項目に加え、名を「ペットフード公正取引協議会」と改めます。
同時に規約にもキャットフードを追加し、新たに「ペットフードの表示に関する公正競争規約」を定めました。

2001年には公正競争規約の再改定が行われ、1997年版のAAFCO(※2)の栄養基準に準拠することとなりました。

※2 AAFCO…米国飼料検査官協会(Association of American Feed Control Official)の略称です。
日本語の読みは「アフコ」や「アーフコ」で、ペットフードの栄養基準やラベルの表示に関する指針を制定しています。
AAFCOの定めた栄養基準は世界中で採用され、世界的にもスタンダードなものになっています。
しかしAAFCOは検査機関ではありませんので、製品の承認や認定は行いません。
「AAFCO認定」「AAFCO合格」などの表記は、本来は禁止されています。もしこのような表記のドッグフードを見かけたら、気をつけるようにしましょう。

基準として適正か

以上、ペットフード公正取引協議会についてみていきました。
それでは、「ペットフード公正取引協議会の基準をクリアしたドッグフードを選ぶ」という方法は、安全なドッグフードを選ぶうえで適切な基準となりうるのでしょうか。

結論としては、「最低限の指標にはなるが、過信しすぎてはならない」といえるでしょう。
ペットフード公正競争規約によって定められている基準は、あくまでも「不当な表記を避ける」「総合栄養食としての最低限の栄養を定める」といった、いわば「最低限」のものばかりです。
そして日本国内に流通するほぼすべてのドッグフードがその基準を満たしているとされています。
つまりいってしまえば、「出来て当然」な事項ばかりなのです。
むしろ、「ペットフード公正取引協議会の定める基準を満たしている」ことを過度にアピールするような商品は、「最低限の基準をクリア」したことしかアピールポイントがないということですので、逆に警戒する必要があるかもしれません。

そして、公正競争規約の栄養基準として採用されているAAFCOの栄養基準ですが、原材料に関してはそれほど厳格な基準を設けていません。
つまり「タンパク質○○%」という項目を、「ヒューマングレード(※3)の良質な鶏肉」で満たそうが「ほとんどゴミ同然の穀類」で満たそうが、言及はないということです。
わんちゃんが生きるうえで最低限の栄養は確保することはできますが、その品質までは保証することができないのです。
定められた栄養基準を高品質な原材料でクリアするか、粗悪な原材料や人口添加物でクリアするか否かは、メーカー側の善意にゆだねられています。
そして残念ながら、コスト削減のために決して良質とはいえない材料を使用するメーカーも、少なからず存在するのです。

そのため、「ペットフード公正取引協議会の定める基準を満たしている」という記載を過信せずに、安全な原材料が使用されているか、本来不要な添加物が含まれていないかどうかを、飼い主さん自身がしっかりと見極める必要があります。

※3 人間が食べられる基準と同等の素材で作られていること、の意。残念ながら、ドッグフードに使用される原材料は人の口にできないレベルのものが多いです。