前項のドッグフードの上手な切り替え方とは?では、ドッグフードの切り替え方についてご説明しました。
それでは具体的に、フードを切り替えるのはどのようなタイミングになるでしょうか。
詳しくみていきましょう。
ドッグフードを切り替えるタイミングとは?
わんちゃんの寿命はおよそ12~15年程度ですが、それだけ長い時間を生きていれば、当然ドッグフードの種類を替える必要性が出てきます。
生まれてから歳をとって死ぬまで、ずっと同じドッグフードだった…というわんちゃんは少ないのではないでしょうか。
とくに、生後数か月といった小さなころから飼っているワンちゃんであれば、子犬用フードから成犬用フードへの切り替えは避けて通れないものだと思います。
そうでなくとも、ワンちゃんの好みや体調によって、ドッグフードを切り替える場面に遭遇する飼い主さんもいるでしょう。
それでは具体的に、どういったタイミング・時期に切り替えるものなのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
ライフステージによる切り替え
ドッグフードを切り替えるにあたり、最もメジャーな要因となるのが「ライフステージによる身体の変化」です。
犬のライフステージは大まかに分けて子犬(パピー)期・成犬期・高齢(シニア)期の3つがあります。
ワンちゃんの年齢によって必要な栄養やカロリー量は異なってきますので、その都度ドッグフードを切り替えてあげなければなりません。
子犬期から成犬期へ
生まれてから約1年程度のワンちゃんを子犬といいますが、子犬が成犬になる際にはフードの切り替えが必要になります。
子犬の時期はいわゆる「成長期」に該当します。
身体の基礎をつくっていく大切な時期です。
そのため、子犬期に必要とするカロリーは、体重に対して成犬のおよそ2倍にまでなるのです。
子犬用にフードは、少量でしっかりと栄養が摂れるようにカロリーが高めに設定されているため、成犬時にも子犬用フードを与え続けていると、カロリー過多になってしまいます。
成犬時のフードの切り替えは、子犬期からワンちゃんを飼っていれば必須となりますので、そのタイミングや切り替え方法をしっかりと熟知しておきましょう。
身体の大きさなどによって異なりますが、成犬になる平均的なタイミングは以下の通りです。
- 超小型犬・小型犬…約8か月
- 中型犬…約12か月
- 大型犬…約18か月
- 超大型犬…約24か月
成犬期からシニア期へ
犬は生き物ですから、生きていれば徐々に年老い、シニア期へと突入します。
年を取ると身体の機能も低下してきますので、身体に負担のかけないドッグフードを選んで与えることが重要になってきます。
具体的には、高たんぱくで低カロリー、消化のしやすいフードが好ましいとされています。
そのため、シニア期のワンちゃんのためにドッグフードを高齢犬用に切り替える飼い主さんも多くなっています。
高齢犬と呼ばれるワンちゃんの年齢は、主に以下の通りです。
- 小型犬・中型犬…約10歳
- 大型犬…約7歳
- 超大型犬…約5~6歳
愛犬が上記の年齢に達したら、シニア用フードへの切り替えを検討してみるようにしましょう。
去勢・避妊手術後
一般的に、去勢・避妊手術のあとは犬は太りやすくなるといわれています。
性欲のエネルギーが食欲に向かうため、術後の安静で運動不足になるためなど原因は諸説ありますが、術後に急激に太ってしまった、というワンちゃんは実際多いようです。
筆者の飼い犬(ヨークシャテリア♀)も二歳の時に避妊手術を行いましたが、当時2~3kgだった体重が、術後4kgに増えてしまいました。
そのため、手術後に獣医さんから「避妊・去勢犬用」または「ダイエット用」のドッグフードを勧められることも多いようです。
肥満は犬にとって万病のもとですので、明確に太るであろうタイミングで予防をすることは、賢明な判断であるといえます。
しかし、すべてのワンちゃんが去勢・避妊手術後に太るかといえば、決してそんなことはありません。
手術の後に、いつも通りの食事をさせても全く太らなかったというワンちゃんは大勢います。
特に、避妊や去勢手術を行う最もメジャーな時期は生後数か月と、「子犬」の時期に相当します。
この時期は成長期にもあたり、身体つくりのためにたくさんの栄養とカロリーを摂らせてあげなければなりません。
ですので、必ずしも食事制限をする必要はないのです。
術後経過を見て、太ってきたなと感じてからダイエット用のフードに切り替えてあげてもよいかもしれません。
→避妊・去勢後の犬用ドッグフードの特徴は?
→避妊・去勢後の犬に適したドッグフードの上手な選び方
妊娠・授乳中
妊娠・授乳中の母犬の食事は、成犬時のものとは大きく変えなければなりません。
人の場合も妊婦さんに対して、「お腹の子の分までしっかり食べなさい」と声をかけることもあると思いますが、わんちゃんの場合も同様です。
妊娠・授乳中のワンちゃんは、通常(成犬時)と比較しておよそ二倍のカロリーが必要になります。
お腹に赤ちゃんがいますので、物理的に消化も難しくなります。
また、授乳中の場合はカルシウム不足も起きやすいため、意識してカルシウムを摂らせてあげなければなりません。
このように、妊娠期には食事をがらりと変える必要性が生じます。
高カロリーで消化のしやすい、「妊娠・授乳中の犬用フード(※1)」に切り替えてあげましょう。
犬の妊娠期間はおよそ9週間(63日間)です。
胎児の成長は5週目頃から急激に速まり、8週目にピークを迎えます。
ですので母犬の食事量は5週目から15%ずつ増やしていき、出産時には妊娠前の60%増しの食事量になるように調整しましょう。
授乳が終わり、子犬が乳離れしたら、徐々に元の食事に戻してあげます。
※1 高カロリー、消化吸収率が高いなどの特徴が似ていることから、子犬用と妊娠犬用を併用して販売しているペットフードメーカーも多いです。特に分かれて売られていなければ、子犬用でも十分代用できます。
妊娠期のドッグフードに関して詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
→妊娠・授乳中の犬に適したドッグフードの特徴とは?
→妊娠・授乳中の犬に適したドッグフードの上手な選び方
体調によって切り替える
ドッグフードを切り替える機会は、何もライフステージによるものばかりではありません。
ライフステージによる切り替えは最低限であり、実際には様々な事情でフードを替えなければならなくなるわんちゃんも少なくありません。
その中でももっとも多い理由が、「体調」によるものではないでしょうか。
私たち人間は日々様々な食べ物を口にしますが、ワンちゃんの場合は基本的にドッグフードのみです(おやつなどの例外はあります)。
そのため、常食しているフードが犬の健康を左右するといっても過言ではありません。
ワンちゃんの体調・体質によっては、フードの切り替えが必要になることもあるでしょう。
それではどのような要因があるのか、具体的に見ていきましょう。
アレルギーを発症した場合
愛犬が特定の食べ物や成分に対してアレルギーを発症した場合は、ドッグフードを替えなければならない場合があります。
例えばワンちゃんが小麦アレルギーと判明したのであれば、小麦を原材料に含んだドッグフードは与えることができません。
常食させていたフードに小麦が含まれていた場合、フードの切り替えが必要になるということです。
手足を噛む、肌荒れがひどい、毛並みが良くない、身体を痒がるなどの症状が見られたら、アレルギーを引き起こしている可能性があります。
獣医さんに診てもらい、原因(アレルゲン)の特定を急ぎましょう。
ドッグフードにアレルゲンが含まれていたら、含まれていない別のフードに切り替えてあげてください。
あまりにアレルゲンが多く食べさせられるフードが見つからない場合は、手作りドッグフードに切り替えるのもひとつの手です。
ドッグフードが合わない場合
どんなに良いドッグフードを選んでも、愛犬の身体に合わないことがあります。
「合わない」の定義はそれぞれ(※2)ですが、ワンちゃんが無理なく食べてくれることが一番です。
便の状態や毛づや、食いつきなどを見て、与えているフードが愛犬に合っているかをよく観察しましょう。
※2 わんちゃんの体格や特徴は多様にわたりますので、粒が大きすぎる(小さすぎる)、カロリーやタンパク質の割合、味やにおいなど、「食べやすい」と感じる要因は様々です。
日頃から食事の様子を注意深く観察して、なにが原因で食べにくいのか、どこが気に入っているのかなどを把握しておくようにしましょう。
病気になったとき
わんちゃんが病気になったときは、食事も治療の一環として取り入れることがあります。
病気によって、積極的に摂るべきまたは控えるべきという栄養素は存在するでしょう。
ドッグフードの中には、各病気のケアを集中的に行えるフードがあります。
これを特別療法食(療養食)といいます。
市販品として店頭で売られていたり、動物病院で処方されたりと様々ですが、素人判断で選ぶことは危険ですので、まずは獣医さんの判断を仰ぐようにしましょう。
また、療養食は医薬品ではなく、あくまでも「食事療法のひとつ」です。
絶対的な効果や即効性はあまり期待できません。
「病気を治すためのサポートの一環」としてとらえ、焦らず上手に活用していきましょう。
そして「特定の栄養素を削る」または「特定の成分を多めに摂取する」ということは、いくら病気治療の一環とはいえ身体に負担をかけることがあります。
元の病気が治っても、療養食が原因で別の病気になってしまった…ということも珍しくありません。
病気の際のドッグフード選びや切り替えは、慎重に行うようにしましょう。
療養食に関して詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
→ドッグフードの種類「特別療法食」とは?与え方には要注意
→病気の犬用の療養食(療法食)とは?種類と与える際の注意点
そのほかの理由
ワンちゃんとともに暮らしていれば、様々な場面に遭遇すると思います。
思いもよらないタイミングで、フードを切り替えなければならなくなることもあるでしょう。
少々番外編的ですが、上記とはまた別のタイミングで、ドッグフードを切り替える時期を紹介していきます。
常食していたドッグフードが手に入らなくなった
いつものフードが売り切れだった、家の近くのペット用品店ショップが潰れてしまった、など、普段与えているドッグフードが手に入らなくなることもあると思います。
中にはメーカーが倒産してしまったりして、商品そのものが市場に出回らなくなるケースも考えられます。
そういった場合はやむを得ませんので、新たに常食させるフードを見つけることが大切です。
切り替えは徐々に行うことが理想ですが、古い方のフードが手元にない場合は、やむを得ませんが新しいものを与えてあげてください。
中には突然の切り替えで胃腸が荒れ、吐いたり下痢をしたりするワンちゃんもいますので、フードの切り替え後数日は、愛犬の体調をよく観察してあげるようにしましょう。
フードローテーションを行っている
フードローテンションとは、主食となるドッグフードを定期的に(多くは数か月おきに)入れ替えることで、アレルギーの発症を防ぐというものです。(※3)
基本的に、アレルギーは同一のタンパク質を摂取し続けることで発生するとされています。
例えばドッグフードの原材料によく使用される鶏肉(チキン)ですが、同じフードばかり食べ続けていると鶏肉過多となり、チキンアレルギーになる可能性があるということです。
そこで、いくつかの種類のドッグフードを数か月おきにローテーションすることで、そのリスクを回避することができるといわれています。
そのため愛犬の健康に関心の強い飼い主さんの中には、栄養価の高いフードを交互に与えているケースもあるそうです。
フードローテーションを取り入れているワンちゃんの場合も、当然フードの切り替えが必要になってきます。
切り替えに慣れているからと慢心せずに、ワンちゃんの負担にならないようゆっくりと切り替えてあげてください。
※3 フードローテーションの効果に関しては、諸説あるためはっきりと良い、悪いと決めることはできません。
好き嫌いをする犬になる、むしろ多数の品目を与えることでアレルギーのリスクが高まるとする声もあります。
一方で、フードローテーションによりアレルギーのリスクを分散させたり、バリエーション豊富な栄養を摂らせることができるともいわれています。
どちらにせよ、わんちゃんの体調や食いつきを観察して、愛犬に合った方法で与えてあげましょう。
もっとよいドッグフードを見つけた
犬を飼うひとすべてが、最初からドッグフードに詳しいなんてことはありません。
もしかしたら最後まで、愛犬の食事にはあまり関心がなかった、という方もいるでしょう。
セミナーや愛犬の病気、またはふとしたきっかけでドッグフードに関心を寄せることもあるかもしれません。
そこでようやく、「今まで与えてドッグフードはなんてひどいものだったんだ!」と驚く飼い主さんもいることでしょう。
筆者は記事執筆時(2017年12月)までに、二匹の犬を飼ってきましたが、この二匹の間の食生活には大きな開きがあったように思えます。
一匹目の犬(チワワ♂)の食事は、ホームセンターなどで1缶100円以下で売られているウェットフードでした。
当時はドッグフードに関する知識はなく、何も考えずに与えていましたが、臭いがきつく、値段を考慮しても決してよいフードではなかったと思います。
死因は心臓病でしたが、13歳になる一か月前と、小型犬にしては早めに亡くなってしまいました。
二匹目の犬(ヨーキー♀)は、その反省も踏まえて「良い」とされる高めのドライフードを与えていました。
しかしその後の定期健診で、あまり健康状態が良くないと診断されてしまいました。
ちょうどドッグフードに関して詳しくなる機会があり、改めてフードの原材料表示に目を通してみましたが、動物性油脂や着色料が使用されており、値段に見合った商品ではないことに気が付きました。
そこで、さらに少々高価な外国産のヒューマングレードのドッグフードに変更したところ、その後の定期健診で「以前悪かったところがすべて良くなっている」と診断されました。
現在3歳9ヶ月ですが、大きな病気もなく元気に走り回っています。
こういった経験から、ドッグフードが愛犬にもたらす影響の大きさを痛感しました。
ひとくちにドッグフードといっても、その品質自体はピンキリです。
ゴミ同然の原材料に添加物まみれ、といった粗悪なものもあれば、人も食べられる材料のみを使用し、合成添加物も一切使用しないという高品質な商品もあります。
もし従来与えていたフードが質の悪いものだったら、すぐにでも良いものに替えたい!と思う方もいるでしょう。
新しく与えるフードに問題(アレルゲンの有無など)がなければ、徐々に切り替えてあげても大丈夫です。
愛犬の健康のためにも、正しいドッグフード選びを心がけましょう。
まとめ
ワンちゃんと長い間過ごしていれば、主食であるドッグフードを切り替えなければならないタイミングも出てきます。
しっかりとタイミングを見極めて、愛犬の健康をサポートしてあげましょう。