ドッグフードの原材料「ナマズ」の栄養は?アレルギーの犬におすすめ

ドッグフードの原材料「ナマズ」

ナマズ(なまず/鯰)は、日本においては食用とされることの少ない魚です。
黒っぽくヌルヌルとした外見から、食べることに抵抗感を覚える人も多いのではないでしょうか。
しかし、良質なスタミナ食としてナマズ料理が頻繁に食べられている国も多いのです。
諸外国の人々から愛されるナマズの栄養素や、ワンちゃんのフードへの使用状況などについて解説します。

食材としてのナマズ

日本人にとっては馴染みの薄いナマズ

ナマズ目ナマズ科に属するナマズは、川や池、湖、または農業用水などに棲んでいる淡水魚の仲間です。
約60センチ程度の体長を誇るナマズは、長い口髭を持ち、上顎に比べて下顎が突出したユーモラスな外見に特徴があります。
体表には鱗(うろこ)が存在せず、その代わりにヌルヌルとした粘液に覆われています。
イラストなどでは真っ黒な色で表現されることが多いですが、実際のナマズは黒系統、茶系統、黄色系統などさまざまな体色をしています。

ナマズは中国やベトナム、カンボジア、アメリカなどの国で養殖されており、東南アジア諸国では当然のように人々の普段の食卓に上るほどポピュラーな食材です。
日本においては古くから、岐阜や栃木、群馬、埼玉、千葉などの地域を中心に食べられてきましたが、現代ではあまり一般的ではありません。
日本に棲む野生のナマズの数も、生息域の減少に伴い年々少なくなっているのが現状です。
国内での養殖もされていますが、産地は限られています。そのため、日本産のナマズの市場価格の相場は高めになっているのです。

ナマズを使ったドッグフード

ナマズを使ったドッグフードの種類は少ない

日本においては貴重な食材ともいえるナマズですが、使用されているドッグフードも非常に少数です。
しかし、低カロリーで低アレルゲン、タンパク質がしっかりと摂れるといったナマズの特性が評価され、ナマズを使ったフード類は徐々に増加傾向にあるようです。

2017年現在において、ナマズをメインとしたドライフードには、ごく一部の日本産やアメリカ産の商品などがあります。
また、ナマズのミンチ肉をレトルトパウチ状にしたものも、わずかではありますが販売されています。
ナマズを小さく切りフリーズドライ処理をしたものや、チップス状に加工された犬用おやつなども出ていますので、ネットショップや店頭をチェックしてみてください。

「ナマズミール」については、メーカーの公開情報をしっかりと確認する

ドッグフードの原材料欄に表示されるナマズの名称は、「ナマズミール」や「ナマズ(なまず)魚粉」などとなっていることが多いです。

「ミール」というと、食用には適しておらず、栄養価もあまり期待できない部位(鶏でいうと内臓や頭部、脚などの肉以外の全ての部分を指し、副産物とも呼ばれます)が使用されているのではないかと、飼い主さんたちからは警戒されがちです。
しかし、安全な品質のフードを製造しているきちんとしたメーカーのいうところの「ミール」とは、通常食べられている肉の部分を乾燥し粉砕したものを指しています。
食材から水気を抜くことによって、タンパク質量を上昇させることができるのです。

したがって、「ミール」という言葉だけで、全てのドッグフードに対して拒絶反応を起こす必要はありません。
メーカー側が公表している情報をよくチェックして、飼い主さんが「信頼できる」と感じた商品を選んであげるようにしましょう。
具体的には、「当社で使用しているミールには、副産物は使用しておりません」などの記述があり、更には「ヒューマングレード」や「人間が食べられる品質の材料のみを使用」というような文言が確認できるとより安心です。

食物除去試験において使用されるナマズ入りフード

前述の通り、ナマズを使ったドッグフードの種類はまだまだ多くはありません。
しかし、ワンちゃんのアレルギー発症時に行われる食物除去試験において、ナマズ入りのフードはよく用いられているのです。

食物除去試験とは、犬が何の食材に対してアレルギーを起こしたのかを調べるために行われるテストです。
その犬が食べた経験のない食材をメインとしたフードを一定期間与え、体調の変化(アレルギー症状が良くなるかなど)を確認します。
その際に使用されるフードのタンパク源には、七面鳥やアヒル、羊などがあるのですが、ナマズが使われることもあるのです。
いずれの肉も、日本人の食生活においてあまり口にすることがない(すなわち、犬に食べさせる機会も少ない)食材です。(

基本的にアレルギーは、今までに食べたことのない食材のほうが発症しにくいとされています。
そのため食物除去試験に使うフードの原材料には、ワンちゃんがこれまでに接してこなかったであろうと思われるタンパク源が選ばれるのです。

※ただし犬の食物除去試験においては、日本人に馴染み深いタラやサケなどを原料としたフードが用いられることもあります。ワンちゃんたちは普段の食事で肉類を摂取していることが多く、これらの魚類を食べる機会が少ないためです。

ナマズの骨は非常に硬い

ナマズの身は上品でクセがなく、ウナギの味のようだと表現されることもあります。
皮は独特の香りと強いうま味を持ちます。
加熱しても身は柔らかさを保ちますが、その反面、骨は非常に硬いです。
特にナマズの大きな頭部の骨の硬さは、魚類の中では一二を争うのではないかとさえいわれています。

日本においてナマズをワンちゃんに与える場合、既製品のドッグフードに含まれているものがメインとなり、ナマズそのものを食べさせる機会はそうそうないかとは思います。
ですが念のために、ナマズの骨は硬くて危険だということは覚えておきましょう。
また、生のナマズには寄生虫が潜んでいる可能性が高いため、調理する際にはしっかりと加熱をすることも重要です。

ナマズの栄養素について

ナマズには、ナマズからしか摂取できない特別な栄養素といったものはありません。
だからといって、栄養価的に価値がないわけではもちろんないのです。
ナマズは、しっかりとタンパク質が摂れる、アレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因)となりにくい、ビタミンが豊富など、メイン食材として充分に活用できる機能を備えています。

鶏肉や牛肉並みのタンパク質量

ナマズには、100g当たり18.4gのタンパク質が含まれています。
これは鶏肉(皮なしのモモ肉)の19.0gや、牛肉(肩ロース)の18.0gに匹敵する含有量です。
この数値からも、ナマズはメインのタンパク源としてワンちゃんのごはんに取り入れることが可能だということが読み取れます。
現に諸外国においても、ナマズは「良質なタンパク源となる白身魚」として高く評価されているのです。

さらにナマズのカロリーは100g当たり159kcal、コレステロールは73mgと、どちらも低めに抑えられています。
ちなみに同じ淡水魚であり、日本人にも(ナマズに比べれば)馴染み深いと思われるコイ(鯉)の100g当たりのタンパク質は17.7g、カロリーは170.9kcal、コレステロールは86mgです。

タンパク質 カロリー 脂質 コレステロール
ナマズ 18.4g 159kcal 8.6g 73mg
コイ 17.7g 170.9kcal 10g 86mg

上記の表は、ナマズとコイの100g当たりに含まれる栄養素をまとめたものです。含有量の多い方を赤字で示しています。
コイと比較しても、ナマズは高タンパク質で低カロリー、低コレステロールであることが分かります。

皮膚や被毛の健康に欠かせないオレイン酸

オレイン酸はオリーブオイルやこめ油、紅花油など、植物を原料とした油に多く含まれている脂肪酸です。
ナマズもオレイン酸の含有率が高い食材です。
ナマズの脂質は100g当たり8.6gですが、その中の36%がオレイン酸で占められています。

オレイン酸は不要なコレステロールを処理してくれる善玉コレステロールの数はそのままに、悪玉コレステロールのみを減少させてくれるというありがたい作用を持ちます。
さらに、ワンちゃんの皮膚の健康を保ったり、被毛にツヤや滑らかさを与える効果まであるのです。

オレイン酸は酸化しにくい脂質としても知られており、活性酸素と結びつき過酸化脂質となりにくいというメリットもあります。
これにより、酸化による健康被害(高血圧、高脂血症、ガンなど)が起こりにくいのです。

魚類には定番のDHAとEPA

ナマズは魚の仲間であるため、魚に多い成分であるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)という二つの脂肪酸も含んでいます。

DHAは脳神経を正常に保つことにより、学習能力を高めたり記憶力をキープする働きがあるため、さまざまな物事を覚える時期である子犬や、加齢による脳機能の衰えが心配なシニア犬などにも積極的に摂らせたい栄養素です。
また、中性脂肪を低下させ、脳梗塞や動脈硬化、心疾患の予防も期待できます。
EPAは血液をサラサラにしてくれるため、血栓ができることを防止する働きを持ちます。

DHAとEPAのどちらの脂肪酸にも、アレルギー疾患やアトピー性皮膚炎の原因となる炎症を抑制する作用があります。
アレルギー症状を緩和する栄養素を含んでいることに加えて、自身はアレルゲンとなりにくいナマズは、他のタンパク源によってアレルギー反応を起こしてしまったワンちゃんが食べるには最適な食品だということが分かります。

各種ビタミンにも富んでいる

また、ナマズに多く含まれているビタミン類は以下の通りです。

成分名 含有量
(100g当たり)
各栄養素の働き
ビタミンB1
(チアミン)
0.33mg ブドウ糖がエネルギーへと変わる時に必要なビタミンです。疲労回復や赤血球の溶血を防ぐ効果もあります。
ビタミンB12
(コバラミン)
2.3μg 葉酸とともに、赤血球の生成を補助します。また、神経機能を正常に保つことで、認知症予防効果も期待されています。
ビタミンE
(トコフェロール)
6.3mg 強力な抗酸化作用が認められています。活性酸素の害からワンちゃんの体を守り、若々しさを保ちます。
ビタミンD
(カルシフェロール)
4μg 骨を作ったり、カルシウムやリンの吸収を助ける作用を持ちます。カルシウムの血中濃度の調整もしてくれます。
まとめ
ワンちゃんたちにも私たちにもあまり馴染みのないナマズですが、実はタンパク質やビタミン類を多く含んだヘルシーな食材だったのです。
特に肉類に対してアレルギーを持つワンちゃんにとっては、非常に相性の良い食べ物となります。
ナマズを使ったドッグフードの販売はごく限られているのが現状ですが、愛犬の体調や嗜好に合わせて自由に選べるように、ラインナップの充実に期待したいですね。