ドッグフードの着色料「青色2号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「青色2号(インジゴカルミン)」

青色2号(インジゴカルミン)は、石油を原料として合成された食用色素の一種です。
人間用の食品はもちろんのこと、ドッグフードやワンちゃん用のおやつ、医薬品などにも着色目的で幅広く添加されており、愛犬が知らず知らず口にしていることもあるかと思います。

ここでは、青色2号とはどのような添加物なのか、ワンちゃんの体への安全性は保たれているのかなどを、現在(2017年12月)までに判明している事実を踏まえて解説していきたいと思います。

青色2号は藍色の色素「インジゴ」から合成される

青色2号は別名(化学名)「インジゴカルミン(インジゴカーミン)」や「インジゴチンジスルホン酸ナトリウム」とも呼ばれます。

「インジゴ」とは、ジーンズやデニムを独特な紺色に染めることで知られる藍色の染料を意味します。
インジゴというよりも「インディゴ」といった方がピンとくるかたが多いかもしれません。

藍色といえば、日本においても古くから、植物(※1)を発酵させて得られた藍色の染料が、浴衣や手ぬぐいなどを染めるために使われてきました。
これを藍染めといいます。

このように、藍染めは天然の原料から作られる染料(天然インディゴ)を用いて行われます。
対してインディゴ染めという言葉は、石油などから合成された染料(合成インディゴ)を用いた染め物に対して使われることが一般的です。
しかし天然と合成インディゴの化学的な構造は、天然ものに交じる除去し切れなかった不純物以外は違いがないといわれています。

青色2号はこのインジゴ(インディゴ)と濃硫酸などを使用して合成的に作られた着色料です。
常温では暗い紫がかった青色の粉末状として存在し、無臭です。
熱や光に弱く、有機溶剤にはほとんど溶けません。
ただし、水やアルコールに対しては比較的溶けやすい性質を持ちます。

※1 藍色の染料の原料となる植物は、タデアイ(蓼藍)やリュウキュウアイ(琉球藍)、インドアイ(和名:ナンバンコマツナギ)などさまざまです。中でもインド原産のインドアイから抽出された染料が世界中で広く使用されるようになったことが、「インジゴ(インディゴ)」の語源であるといわれています。

紫がかった青色やチョコレート色などの着色に使用される

前述のように、青色2号はドッグフードや人用の食料品に使われるほか、医薬品、内視鏡検査の補助(病変部を着色して目立たせる)などにも使われています。
青色2号は薄める濃度により、黒に近い深い紺色からジーンズの様な青色、明るめの水色まで多くの色味を表現できます。

日本国内で認められている青色を持つ合成着色料は、この青色2号と青色1号の2種類のみです。(青色1号に関する詳細はこちらの記事をご確認ください。→ドッグフードの着色料「青色1号」の用途と犬に対する安全性

青色1号は、ソーダ味のお菓子やかき氷の青いシロップなどに、涼やかな水色を付けるために頻繁に用いられるのに対し、青色2号は他の色の色素と組み合わせ、青みがかった紫色やチョコレートのような茶色といった複雑な色味の着色に使用されることが多いです。
具体的には、チョコレートやチューインガム、和菓子(餡子も含む)、ケーキ、清涼飲料水などに添加されています。

私たちがスーパーなどでよく見かけるお菓子の中では、ブドウや巨峰、ブルーベリー味などの紫色のゼリーやグミ、キャンディー、アイスクリームなどに使用されていることがあります。
下の写真はゼリーを写したものですが、このような紫色は、青色や赤色の色素単体では出すことができません。
青色2号と他の色味を持つ着色料を絵の具のように混ぜ合わせて、色が付けられているのです。

しかし、合成色素よりも天然色素(自然の植物などから抽出された着色料)を好む風潮に押されてか、青色2号を使っているお菓子は以前ほどにはみられなくなりました。
お菓子以外では、ナスの漬物の青っぽい紫色や、粉わさびの緑色などにも、青色2号が使用されていることがあります。
また、人間用のファンデーションや口紅、アイシャドウ、入浴剤などにも添加されています。

青色2号の安全性

評価が分かれる動物実験のデータ

青色2号に関してはさまざまな動物実験が行われていますが、安全性には諸説あり、専門家によっても判断が分かれています。

動物実験というとマウスやラットが真っ先に思い浮かびますが、犬が使われるケースもあります。
生後6ヶ月のビーグル犬に対して行われた2年間に渡る実験においては、青色2号の毒性は認められませんでした
青色2号を含んだ餌を2年間与え続け、その中の数頭は死亡してしまいましたが、これは青色2号とは関係のない、ウイルスによる感染症だったことが確認されています。

また、20ヶ月に渡って青色2号を含有する餌を与えたマウス実験でも、腫瘍の形成などの異常はみられなかったと報告されています。
ただし、ウサギの皮膚に青色2号を塗布した実験では、皮膚刺激は確認されなかったものの、点眼した際には虹彩炎に加えて、結膜や角膜の炎症などがみられたというデータが得られています。

さらに、哺乳類の細胞を使った実験では変異原性※2)が、マウス実験においては染色体異常(※3)のデータが一例のみ確認されています。
しかしこのマウス実験に関しては、通常の食品からの摂取ではあり得ないほどの、非常に高濃度の青色2号が用いられていました。
そのため、マウスにみられた染色体の異変は、青色2号そのものの毒性ではなく、浸透圧が高くなり過ぎたことから引き起こされたものなのではないかという見方もされています。

※2 変異原性・・・染色体や遺伝子の構造が何かしらの要因で変化し、親とは異なる形で子どもへと伝わる(遺伝する)現象を起こす働きを意味します。2017年現在では、特に遺伝子の突然変異を誘発するケースに限り用いられることも増えてきました。

※3 染色体異常・・・「生命の設計図」とも呼ばれる、遺伝情報の詰まったDNA(デオキシリボ核酸)が、タンパク質(ヒストン)に巻き付き、折りたたまれた状態が染色体です。この形態となることで、DNAが細胞内にコンパクトに収まることが可能となります。染色体が異常をきたすことにより、細胞の死滅やガン化、遺伝病などが起こると考えられています。

こうしたさまざまな実験結果を踏まえ、青色2号にはADI値が設定され、一部の食品に対しては使用制限もかけられています。

ADI値とは、「ある添加物を一生食べ続けても、健康に害を及ぼすことがない」とされる1日の摂取量のことです。
1日摂取許容量」とも呼ばれます。
青色2号のADI値は体重1kg当たり5gです。
とはいえこれは人間に限った話であり、ワンちゃんには適用されません

また日本国内では、人間用食品の一部(肉・魚の漬物、きな粉、カステラ、味噌、のり、醤油など)へ青色2号を使用することは禁止されています。

青色2号アルミニウムレーキについて

青色2号アルミニウムレーキは、青色2号を水酸化アルミニウムと化合させて合成されます。

アルミニウムレーキの利点は、水溶性である着色料が水に溶けにくくなり、また粒子も細かくなるため、ムラなく均一に着色することが容易になることです。
また、合成する前の色素そのままの状態よりも、耐熱性や耐光性がアップするというメリットもあります。
青色2号は他の着色料と比べても熱や光に弱いという特性があるため、アルミニウムレーキとするメリットの大きな添加物であると考えられます。

しかし、アルミニウムレーキはその便利さとは裏腹に、健康への悪影響の懸念もあるのです。

アルミニウムレーキに含まれるアルミニウムには、神経や生殖機能、泌尿器の障害、膀胱機能・腎機能・握力の低下といった健康への悪影響が指摘されています(動物実験において)。
そのためアルミニウムには、「1週間での摂取量が体重1kgにつき2mgを超えないように」という制限が設けられています(もちろんこれも人間用の制限です)。

こうしたリスクを踏まえ、アメリカにおいては、人間用の食品に対する青色2号アルミニウムレーキの使用は認められていません
しかし日本では一般的に使われており、原材料表示にも「アルミニウムレーキ」とハッキリ表示されていないこともあるため、意識して避けることは難しいという問題もあります。

まとめ
青色2号には、2017年12月現在までのところ、決定的な毒性は判明してはいません。
あくまでも「動物実験においてはこうした結果も得られていますよ」という程度です。
明らかな危険性が認められていないため、日本では現在でも青色2号が使われています。

しかし、青色2号を始めとした合成食用色素には厳密なADI値が設定されていることからも分かる通り、摂取や使用に注意が必要な添加物であることには変わりありません。
こうした着色料を自ら食べることに抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。

人間とは違い、青色2号のワンちゃんに対する使用制限や摂取許容量は決められていません。
そのため、愛犬に与えてもよいものかどうか悩まれることもあるかと思いますが、「自分であれば食べるか否か」という視点から判断することもひとつの方法です。