ドッグフードの着色料「赤色106号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「赤色106号(アシッドレッド)」

赤色106号はその名の通り、食品を紫がかった赤色に染めることができる着色料です。
正式名称は「アシッドレッド」といい、日本においては食品添加物に指定されています。

常温では固体を保っている赤色106号ですが、アルコールや水に溶けるため、色の濃淡を調節することが可能です。
加熱や紫外線にも強く変色しにくいため、メーカーにとっては非常に使用しやすい色素です。

赤色106号はワンちゃんのフード類やおやつに頻繁に使用されているものの、動物実験を通してさまざまな健康被害のリスクが指摘されています。
しかし得られているデータが少なく、決定的な毒性については不明なままです。
そのため、日本では食品への使用が認可されているのです。

赤色106号に関する情報は多くはありませんが、現在(2018年2月)分かっている範囲でご説明していきたいと思います。

ドッグフードから犬用ジャーキーまで幅広く利用されている

暗い茶色をした粉末状の赤色106号ですが、希釈していくと茶色がかった赤から、赤紫などの色味を出すことが可能です。
赤色106号は、ワンちゃんの主食となるフードから、ジャーキー、チップスなどの犬用おやつに至るまで、色々な商品に使用されています。
いかにも「合成着色料を使っています」というようなわざとらしい赤色ではなく、新鮮な肉そのものののような色味を出す目的で添加されることの多い着色料です。

無着色の鶏のササミ(生)。赤色106号と黄色い着色料の混色により、こうした色味を再現することも可能です。

上は無着色の鶏のササミを写した写真ですが、このようにキレイなピンク色は、加熱や乾燥、時間の経過、他の材料と混ぜ合わせるなど、さまざまな要因で変色していきます。
ワンちゃんは気にならないでしょうが、茶色く変色してしまったドッグフードは、飼い主である私たちの目には汚く映り、おいしそうには見えません。
その色をカバーするために、赤色106号や黄色い色素を混ぜ合わせ、生肉のような美しい色味を演出するのです。

人間の口に入る食品類にも、赤色106号を添加したものが多く存在します。
その種類は、魚肉ソーセージやお寿司に添えらえるガリ生姜、桜でんぶに桜エビ、キャンディー、ゼリーなどのお菓子類などさまざまです。
ドッグフードとは違い、人間用の食品の場合には、鮮やかなピンク色をつけるために赤色106号が用いられる傾向があります。
赤色106号で着色されたガリ生姜や桜でんぶは濃く明るいピンク色を、キャンディーやゼリー(イチゴ味やリンゴ味などが多いです)は可愛らしい赤色をしています。

魚介類の身を加熱し、ほぐして調味した桜でんぶです。名前の通り、桜のような美しいピンク色をしています。

多くの健康被害の可能性が指摘されているもののデータ不足

変異原性や内臓機能の障害などの可能性あり

赤色106号は、動物実験によって、変異原性(※1)や遺伝子損傷(※2)、肝機能障害、甲状腺の重量減少などを引き起こす可能性が指摘されています。

とはいえ、赤色106号についての毒性に関する研究はほとんど行われていません。
そのため、安全性に関するデータは不足しており、具体的にどのような動物に対してどのような毒性を持つのか、ハッキリとしたことは分かっていません
赤色106号を食品に使用している国は日本以外には存在しないために、わざわざ時間や予算をかけてまで安全性を検証する必要がないのです。

当然、長期毒性や短期毒性のデータも出そろってはいないため、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)(※3)でも、赤色106号のADI(一日摂取許容量)を設定できていません

「仮にその物質を一生涯、毎日欠かさずに食べたとしても、健康に悪影響を及ぼさないであろうと推測できる、一日当たりの摂取量」のことを、ADI(一日摂取許容量)と呼びます。
赤色106号と同じ理由から、ADIが決められない着色料には、赤色104号(フロキシン)と赤色105号(ローズベンガル)があります。
このふたつの合成色素も、日本を除いたほとんどの国で使用されていない着色料です(※4)。

赤色104号と105号の詳細に関しては、こちらの記事をご覧ください。
 →ドッグフードの着色料「赤色104号」の用途と犬に対する安全性
 →ドッグフードの着色料「赤色105号」の用途と犬に対する安全性

※1 変異原性・・・何らかの原因により遺伝子、もしくは染色体が変質し、親とは異なる形質で子どもへと伝わることを意味します。2018年2月現在においては、特に「遺伝子の突然変異」を表す言葉として使われることが多くなっています。

※2 遺伝子損傷・・・生物の体に関するさまざまな情報が詰まっている遺伝子は、老化や内外のさまざまな刺激によってダメージを受けることがあります。遺伝子が傷付くと、発がんや細胞の死滅といった深刻な健康被害が起こるリスクが高まるといわれています。

※3 FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)・・・添加物や毒物の専門家によって、各種食品添加物や汚染物質、動物用の医薬品などのリスク評価、一日摂取許容量(ADI)の検証などを行っています。食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で運営しています。

※4 アルゼンチンでは、一部の食品に対してのみ、赤色104号の使用が認可されています。

アレルギーを誘発するリスクのある不純物について

また、赤色106号は日本において、不純物の残留量が15%未満まで許されています
しかし、この不純物の種類や含有量に関しても、詳細な検討は行われていないのです。
どのような不純物が混入しているか分からないわけですから、当然、どのような健康被害のリスクがあるかも把握されてはいません。

最も可能性の高いものとしては、アレルギーがあげられます。
アレルギーは、アレルギー体質を持つワンちゃんのみに起こるわけではありません。
今までどんな食べ物を与えてもアレルギーを起こしたことのない子が、ある日突然アレルギーを発症するケースも考えられます。
また、いつ、何の物質に対してアレルギー症状が出るかを予測することは困難です。

食品アレルギーは、摂取した回数が発症リスクの上昇に繋がります。
アレルギーの発症に100%の予防法はありません。
しかし、普段から愛犬のフードの原材料に気を配り、健康の維持に不必要な成分は極力摂取させないように注意することは、アレルギーのリスクを減少させることに役立つでしょう。

上記のようなさまざまな健康被害の可能性が否定できないとして、赤色106号の添加を禁じるというのが諸外国の考え方ですが、日本では1962年に認可されて以降、現在(2018年2月)まで使用され続けています。
日本国内でも、野菜類や味噌、醤油、きな粉、昆布やワカメなど一部の食品に限り、赤色106号の使用は認められてはいません(※5)。
しかし前述のように、市販されている多くの食品やドッグフードに対しては、当たり前のように使用されています。

※5 赤色106号以外のタール系色素も同様に、一部の食品に対して添加が禁止されています。タール系色素とは、赤色106号のように「〇色△△号」と表記される、人工的に合成された着色料の総称です。これらの色素は石油から採れるナフサという物質が原料です。しかし、以前は石炭から燃料を取り出す際に得られる副産物「コールタール」から合成されていました。そのため、現在でも「タール系色素」と呼ばれているのです。

赤色106号によって新鮮な肉のような色味を付けるまでもなく、ワンちゃんたちはおいしそうな食事はニオイや味で分かります。
反対に、いくら着色料で色をごまかしたとしても、味が悪かったり、健康に悪影響のありそうなフードは敏感に察知してしまうのです。
現に、繊細なワンちゃんであれば、添加物のわずかな臭気や苦みなどに反応し、食べないこともあります。

まとめ
食品の見た目の色で「おいしそう」、「まずそう」と判断できるということは、私たち人間がそれだけ豊かな色彩感覚や感情を持っている証拠です。
しかし同時に、実は古い材料とたっぷりの添加物を使って作られているフードであっても、見た目さえキレイに整えてしまえば、「新鮮そう」、「買いたい」とコロリと騙されてしまう可能性もあるのです。

明確になっていないとはいえ、さまざまな健康被害が指摘されている赤色106号を愛犬に与えることについて不安を感じる飼い主さんも多いことでしょう。
赤色106号は多くのフード類に添加されているため、見た目に騙されないためには、購入時にしっかりと原材料の表示欄をチェックする習慣をつけることが大切です。