ドッグフードの着色料「赤色3号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「赤色3号(エリスロシン)」

赤やピンク色をした食品は、私たちに「おいしそう」、「華やか」といった印象を与えます。
また、食欲を刺激する赤色をした食品は、消費者の購買意欲をアップさせることも可能です。
食品にこうした色を付けることができる着色料のひとつが、赤色3号(エリスロシン)です。
赤色3号は石油を原料として作られる合成色素のひとつであり、動物実験においては赤血球の減少や甲状腺腫瘍の発生が確認されている添加物でもあります。
鮮やかで可愛らしい赤色とは裏腹に、少し心配な要素もある赤色3号について解説していきたいと思います。

赤色3号とは

赤色3号は化学的に合成された着色料

赤色3号は、やや青みを帯びた濃いピンク色から赤色をした着色料です。
正式名称はエリスロシンといい、ガソリンの原料として知られる、石油由来のナフサと呼ばれる物質から合成されます。

野菜や花、樹木など、自然界に存在する植物から抽出することができず、化学的に作り出される赤色3号は、合成色素(合成着色料)やタール系色素などと呼ばれます。
タール系色素とは、赤色3号を始めとする「〇色△号」と名の付く着色料が過去、石炭から採れるコールタールを原料として作られていたことから付いた呼び名です。
現在ではコールタールが原料とされることはありませんが、タール系色素という呼び名は慣習的に使われ続けています。

食品から化粧品、歯垢染色剤にまで利用されている

赤色3号は安価に取引されていますが、鮮やかでキレイな赤からピンクの色調を持ち、伸びが良く商品を均一に染色できる便利な着色料です。
ドッグフードやワンちゃん用のおやつを、可愛らしいピンク色に染めるために用いられることのある赤色3号ですが、その利用頻度は決して高くはありません。

対して、私たちが口にする食品の着色にはさまざまに利用されています。
赤色3号を使用した人間用食品の例としては、カマボコや紅ショウガ、ソーセージ、ケチャップ、福神漬け、タラコ、砂糖漬けの真っ赤なチェリーなどが挙げられます。
上の写真の団子にみられるような、春を感じさせる桜色にも、赤色3号が使用されているケースがあるのです。 また、他の青色や赤い色素と混ぜ合わせて、ドーナツやチョコレートの複雑な色味(下の写真のドーナツのような茶色)を出す目的でも使われることがあります。
赤色3号は、熱に強いという性質を持つため、揚げ菓子や焼き菓子に添加しても変色や退色の心配が少なく、安心して使えるのです。

食品以外では、口紅やファンデーション、アイシャドウなどの化粧品、プラークチェッカーやカラーテスターと呼ばれる歯垢染色剤にも赤色3号が使われています。
歯垢染色剤とは、口の中に入れて噛んだりうがいをすることにより、歯垢だけを赤く染めることのできる商品です。
錠剤や液体など幾つかの形状があり、歯の磨き残しの様子を調べるために使われます。
この歯垢染色剤による歯磨きチェックを、小学校で体験されたことのある方も多いのではないでしょうか。
あの真っ赤な色味が、赤色3号である場合もあるのです。

赤色3号は、キサンテン系色素と呼ばれる種類に属します。
キサンテン系色素を使用した口紅は飲食をしても落ちにくく、何度も塗り直さなくても良いというメリットがあります。
しかし、「唇に色素が沈着しやすい」、「強力なクレンジング剤を使わないと、完全に落としきれない」などのデメリットもあるため、特に肌の敏感な人からは避けられる傾向にある色素です。

赤血球の減少や甲状腺腫瘍が確認されている

犬への赤色3号の毒性実験に関しては、ビーグル犬6匹に対して、赤色3号を含んだエサを2年間与え続けるという検証が行われています。
この実験の途中で亡くなったワンちゃんは1匹もおらず、どの子の体にも赤色3号による影響は確認されませんでした。

しかし、ラットを用いた毒性実験においては、赤血球やヘモグロビンの減少が確認されています。
赤血球は血液の構成成分のひとつです。
この赤血球の中には、大量のヘモグロビンが存在します。
ヘモグロビンは、血流に乗って全身へと酸素を届ける働きをする、たんぱく質の一種です。
血液の赤さは、このヘモグロビンの色に由来します。
さらにヘモグロビンには、体を巡りながら二酸化炭素を回収し、肺まで運ぶという役目もあるのです。
このヘモグロビンが減少すると、いわゆる貧血状態となります。

また、赤色3号にはヨード(ヨウ素)が含まれています。
ヨードは動物の体内では主に甲状腺に集まっており、甲状腺ホルモンの原料となる元素です。
昆布や海苔、貝類、魚、レバーなど、私たちの食卓でお馴染みの食品類にも多く含有されています。
ヨードの摂取量が少なすぎても、甲状腺ホルモンが不足してしまいますが、多すぎても甲状腺に悪影響を与えます。
そのことを裏付けるかのように、動物実験において、赤色3号を与えたラットに甲状腺腫瘍が確認されたという結果が出ているのです。

こうした実験結果を受けて、一部の国(ドイツ、アメリカ、ポーランド、ノルウェーなど)では赤色3号の食品への添加が禁止されています。
またヨーロッパ諸国のように、禁止しないまでも、使用量に上限を定めたうえで添加を認めている国もあります。

日本では、赤色3号に対しての基準は特に設けられていません。
しかし、一部の食品に関しては使用が禁止されています。
その食品とは、野菜や魚肉、豆類、醤油、茶、カステラ、味噌、海苔などです。
禁止の理由としては、赤色3号の過剰摂取を防ぐためや、着色料を用いてキレイな色を付け、食品の鮮度を偽ることを防止するためなどが挙げられます。

程度の差こそあれ、各国それぞれで使用制限が設けられている赤色3号ですが、ワンちゃん用のフード類に対しては何の措置も取られてはいないのが現状です。

赤色3号の健康リスク

アレルギー誘発の可能性

合成色素(タール系色素)は、製品化された際に15%までであれば、不純物が残っていてもよいと決められています。
しかし、その不純物にどのような種類があるのか、それぞれの毒性の有無や強さなどは充分に検証されてはいません。
そのため、体質的に敏感なワンちゃんであれば、こうした不純物に反応してアレルギーなどの症状が誘発される危険性もゼロとは言い切れないのです。

赤色3号アルミニウムレーキの健康への影響

赤色3号とは別に、赤色3号アルミニウムレーキ(エリスロシンアルミニウムレーキ)という着色料も使われています。
赤色3号アルミニウムレーキは、水酸化アルミニウムと赤色3号を化合させて作られた色素であり、元となる赤色3号以上に日光や熱に対して強く、油脂や水にも溶けにくいという性質を持ちます。
また、アルミニウムレーキにすることで粒子が細かくなり、着色時に色素が均一に広がるため、少量でも美しい色味を付けることが可能となるのです。

一見メリットだらけに思えるアルミニウムレーキですが、使用されているアルミニウムは「健康被害の恐れがある」として、人間に対しては摂取制限が設けられている物質です。
食品などを通して体内に入ったアルミニウムは、そのほとんどが尿として排泄されますが、体内に残存してしまった分による健康リスクが懸念されています。
その症状には、膀胱や腎臓の機能障害、神経や生殖器の発育不良、握力低下などが指摘されています。
しかし、アルミニウムのどのような働きにより、これらの症状が引き起こされるかは完全には解明されておらず、不明点が多いことも事実です。

とはいえ、人間に対して摂取制限がかけられている物質をワンちゃんに与えることに不安を覚える飼い主さんは多いことでしょう。
残念ながら、使われている着色料がアルミニウムレーキであるか否かは、原材料欄を見ても分からないケースがあります。
日本では2018年2月現在、着色料表示にアルミニウムレーキと明記しなくてもよいということになっているのです。
着色料を使用していること自体は明示しなければならないので、赤色3号を使用している食品には必ず「赤色3号」や「着色料(赤3)」などという表示はされているでしょう。
しかし、その赤色3号がアルミニウムレーキなのかどうかといったことは、この表示だけでは読み取ることは不可能です。

アルミニウムレーキ化されて食品に添加されているのは、赤色3号だけではありません。
〇色△号と名の付く合成色素には、アルミニウムレーキとしても利用されているものが多く存在します。
そのため、愛犬のアルミニウム摂取に気を付けたい場合には、合成色素を使用したフード類を購入しないことが最も確実な方法です。
ワンちゃんたちはきれいな色の食品を見ても、「おいしそう」、「食べたい」とは感じません。
着色料を使っていない素材そのものの色をしたフードを選ぶことにデメリットは一切ないのです。

併用されがちな赤色102号はADHD悪化のリスクを持つ

赤色3号は熱には変色しにくいですが、酸性のものに弱いという欠点もあります。
したがって、ジュースやスポーツドリンクなどの清涼飲料水、キャンディーなど、ビタミンCやクエン酸、炭酸といった酸性物質が含まれていることが多い食品に添加することには向きません。
この弱点をカバーするため、赤色3号は酸に強い性質を持つ赤色102号(ニューコクシン)と混色して用いられることが多々あります。

この赤色102号は、赤色3号と同じ合成色素ですが、EUにおいて「注意欠如多動性障害(ADHD)の子供たちの症状を悪化させる恐れがある」とされ、政府が食品に注意書きを義務付けている着色料なのです。
EUでは、赤色102号を使用した食品には、「子供たちの注意力や行動に悪影響を及ぼす可能性があります」といった文言を表示しなければならないこととなっています。

注意欠如多動性障害は、一つの物事に集中して取り組むことが苦手、身の周りの整理整頓ができない、忘れ物や落とし物が多い、自分の感情が抑えられなくなることがあるなど、さまざまな症状を呈する発達障害です。
2018年2月時点において、人間ではある程度広く知られるようになってきた注意欠如多動性障害ですが、ワンちゃんたちにもみられるということはまだあまり知られてはいません。
しかし稀に、この障害を持って生まれるワンちゃんがいるということが報告されているのです。

ワンちゃんの場合には、落ち着きがなく、静かな場所でもじっとしていられない、さまざまな物に興味を引かれすぎて散歩にならない、物を破壊する、他の動物や人間に対して急に飛び掛かるなど、飼い主さんが困り果ててしまうような過活動性がみられます。
その他にも、通常の子よりも心拍数・呼吸数が多い、ヨダレが過剰に出る、食欲はあるのに痩せるといった症状がみられることもあり、健康への影響も心配です。

ハイパーアクティビティーとも呼ばれる、こうしたワンちゃんの症状に関しては、まだあまり研究が進んではいません。
そのため、赤色102号との関連性もはっきりとしたデータが得られているわけではありませんが、こうした症状が顕著なワンちゃんの場合には、注意するに越したことはないでしょう()。
赤色3号と赤色102号は併用されていることが多いため、原材料表示は常にチェックするようにしましょう。

※上記のようなワンちゃんの問題行動の原因としては、ストレスや運動不足、しつけの不充分などの可能性も考えられます。また身体的な症状は、何らかの病気からきているケースもあるでしょう。
こうした場合には、適切な対処によって改善するケースもあります。心配な場合にはまず、獣医さんやドッグトレーナーにご相談されることをおすすめします。

赤色102号についての詳細は、こちらの記事でご確認ください。
ドッグフードの着色料「赤色102号」の用途と犬に対する安全性

まとめ
赤色3号(エリスロシン)の用途や危険性についてご説明しました。
当たり前のことですが、ワンちゃんたちには、自分で自分の食べるフードを選択することは不可能です。
赤色3号の健康リスクについては、全てが明らかになっているわけではありません。
しかし、実験や研究を通して体への悪影響が指摘されていること、また、使用を禁じている国が多数存在することは事実です。
これから先、赤色3号の決定的な毒性が判明する日が絶対に来ないとは、誰にも言い切れないのです。
もしもそんな日が来たとしても、後悔しないようなフード選びをしてあげたいですね。