ドッグフードに使われるキシリトール(甘味料)は犬にとって危険!

ドッグフードの甘味料「キシリトール」

甘さは砂糖と同程度なのにカロリーは低め、しかも虫歯にもなりにくい。
メリットだらけの甘味料のように思えるキシリトールですが、犬にとっては大変危険な物質であることをご存じでしょうか。
犬がキシリトールを摂取すると、重篤な低血糖症状や肝障害を引き起こす危険性があるのです。

近年ではその危険性が広く知られるようになり、キシリトールを使用した日本国内産のドッグフードは減少しました。
しかし、販売がゼロになったわけではありません。
また人間用のガムやタブレットなど、私たちに身近な食品に多く使われている甘味料でもあるため、犬が誤食をするケースも多いのです。

ここではキシリトールが犬に与える影響を中心にご説明していきたいと思います。

キシリトールとは

キシリトールの原料と特徴

キシリトールはイチゴやレタス、カリフラワーなどに元々含まれている甘味炭水化物です。
ただし食品などに用いられるキシリトールは、白樺や樫などの木から採れるキシランヘミセルロースと呼ばれる物質を化学変化させて作られています。

キシリトールの特徴といえば、

  • 砂糖と同程度の甘さを持つ
  • カロリーは砂糖の約7割ほど
  • 口の中で分解されにくいため、虫歯の原因である酸をほとんど生成しない(虫歯になりにくい)
  • 溶ける時に口内の熱を奪うのでスーッとした清涼感を得られる

などが挙げられます。

ドッグフードへの使用目的

キシリトールが「低カロリーで虫歯予防もできる夢のような甘味料」として話題になったころ、犬用のフードやおやつ、歯磨きガムなどにも広く使用されるようになりました。
フードに添加する主な目的は、甘味を付けるためと犬の虫歯予防です。

しかし現在は、キシリトールを犬に与えると低血糖症状や肝障害を起こす危険性が広く認知されるようになりました。
2017年現在、日本国内で購入できる犬用フードの中で、キシリトールが添加されているものはごくわずかです。
とはいえ100パーセント使用されなくなったわけではありません。
いまだに国産の犬用ガムやデンタルリンスなどに、キシリトールが配合されているケースもあるのです。

また日本とは考え方や規制の異なる外国産のドッグフードにおいては、何にどれだけの量のキシリトールが使われているかは未知数です。
ときに高濃度のキシリトールが添加されている可能性も考えられますので、油断は禁物です。
ドッグフードやおやつを購入する際には、原材料名をしっかりとチェックするようにしましょう。

犬の健康に与える影響

低血糖症状や肝障害を引き起こす

キシリトールを犬に与えることにより、低血糖状態を引き起こす可能性があります。

犬がキシリトールを摂取すると、膵臓が刺激されインシュリンが大量に分泌されてしまいます。
このインシュリンは血糖値を下げる働きを持つため、犬の血糖値が低下しすぎて低血糖の症状を起こすのです。

低血糖以外にも、キシリトールが犬の肝障害を引き起こす事例も確認されていますが、こちらのメカニズムはまだ完全に解明されてはいません。

キシリトールの中毒量は犬によって異なる

一般的に、犬の体重1kg当たり0.1gのキシリトールを摂取すると低血糖症状が起き、0.5gで急性肝不全を起こすと言われています。
しかし、もっと少ない量しか摂取していないにも関わらず重篤な状態になったり、反対に大量のキシリトールを食べても何の症状も出なかったという犬も存在します。

こうした現象の理由はまだあまり解明されていませんが、同じ体重の犬でも個体差によってキシリトールの中毒量はさまざまであるということだけは断言できるでしょう。

キシリトール中毒の平均的な数値だけを見て、「愛犬が食べたキシリトール量はこの数値を下回るから大丈夫だ」と安心してしまうことは危険なのです。

犬がキシリトールを誤食してしまった時の対処法

犬のキシリトール中毒の症状

犬がキシリトールの入ったフードを食べてしまった時にはどうすればよいのでしょうか。
まずはその症状についてお話します。

犬によっても差はありますが、一般的には犬がキシリトールを摂取してから30分~1時間ほどで症状が出てきます。
しかし中には摂取後2時間以上経ってから発症した例もありますので、注意が必要です。

キシリトールを摂取した際、犬の多くが嘔吐をすると報告されています。
その他の症状として、ぐったりと脱力したような状態になる、けいれんを起こす、意識の低下などが見られます。
この低血糖状態を放っておくと命にかかわりますので、迅速な治療が必要です。

犬がキシリトールを誤食した場合は速やかに病院へ

犬がキシリトールを誤食してしまった時には、速やかに獣医さんの診察を受けましょう
スムーズな診察のために、「犬が何に含まれているキシリトールをどれくらい食べてしまったか」を説明できるようにしておくことをオススメします。

とはいえ、ドッグフードや犬用おやつの場合は、キシリトールの含有量まではわからないことが多いでしょう。
もし人間用のガムなどを誤食した場合は、ガムを何個食べたのかを数えておくとよいですね。
ガムのパッケージがあればそのまま動物病院へ持っていきましょう。

キシリトールに関する疑問

果物や野菜に含まれるキシリトールは安全なのか

多くの野菜や果物にも含まれているキシリトール

キシリトールはイチゴやレタス、カリフラワーなどの植物にも含まれています。
では犬にこれらの野菜や果物を与えてはいけないのでしょうか。答えはNOです。

これら植物のキシリトール含有量は100g(生の状態)当たり、

  • イチゴ 40mg
  • カリフラワー 30mg
  • レタス 6mg

程度となっています。

5kgの犬がキシリトール中毒を起こすイチゴの量は約84粒

単純にイチゴ1g当たりに含まれるキシリトールは0.4mgだとして考えてみましょう。
中サイズのイチゴは1粒で15g前後の重さがありますから、含まれるキシリトールの量は6mg程度となります。

そして犬が低血糖症状を起こす危険性のあるキシリトール量は、体重1kg当たり100mgとされています。
仮に体重5kgの犬が低血糖を起こすだけのキシリトールをイチゴから摂取しようとしたら、中サイズのもので84粒近い大量のイチゴが必要になります。小さなイチゴでしたらさらに多くの量を食べなければなりません。
人間ですら、これだけのイチゴを一度に食べる機会はほとんどないといってよいでしょう。

野菜や果物を避ける必要はないが注意点もある

このように、植物の中に含まれるキシリトールの量はほんのわずかです。
したがって「野菜や果物の摂取により犬がキシリトール中毒になるのではないか?」という心配はほぼ不要です。

しかし野菜などに含まれるキシリトールと工場で作られたキシリトールとでは、成分の働きの強さに違いが出てくるという可能性が指摘されています。
工場で精製された純度の高いキシリトールと違い、野菜や果物の中にはキシリトール以外の成分も多く含まれています。
それらの中に、キシリトールに作用して働きを強めたり弱めたりする成分がないとは限らないのです。

こうした可能性も考慮すると、やはりキシリトールを含む野菜や果物は、ほどほどな量をご褒美感覚でたまにあげる程度がちょうどよいのではないでしょうか。

ドッグフードにキシリトールを添加するメリットはあるのか

虫歯予防には高濃度のキシリトールが必要

人間の場合、キシリトールを含んだガムやタブレットを、長時間かけて口の中で噛んだり溶かしたりすることにより、虫歯の発生と進行を抑制する効果が認められています。

なぜキシリトールはガムやタブレットなど、長い時間口に含むお菓子に添加されることが多いのでしょうか。
これは、キシリトールが充分に効果を発揮するためには「高濃度(50%以上)のキシリトールを長時間口の中に入れておく」必要があるからなのです。

しかし犬に高濃度のキシリトールを与えれば、健康被害のリスクが上昇するのは明らかです。
にもかかわらず、犬用フードにキシリトールが頻繁に使用されていたころに健康被害があまり騒がれなかったのは何故でしょうか。

これは犬用フードに含まれるキシリトールが少なかったからです。
犬によってはほぼ噛まずに丸飲みをしてしまうフードに低濃度のキシリトールを添加したところで、犬に対するメリットはほぼないということがお分かりいただけるかと思います。
仮に犬がしっかり噛んでくれたとしても、20分、30分と噛み続けられる犬用のデンタルガムは多くはありません。

ただアメリカなどでは過去、高濃度のキシリトールが犬用デンタルガムに添加されていたという事例もあります。
現在のアメリカにおいて、そのような危険性はほぼないでしょうか、国によってペットフードの規定は異なります。
その他の国で製造されたドッグフードに、大量のキシリトールが入っている可能性がゼロであるとは言い切れません。

また中には、少量のキシリトールが入ったフードを長期間に渡り食べ続けた犬が、肝障害と低血糖を発症して亡くなったという例もあります。
キシリトールの容量が少ないからといって、100パーセント安心はできないということも知っておいてください。

犬はそもそも虫歯になりにくい

前述したように、キシリトールをドッグフードに添加する大きな目的は虫歯予防です。
まずはキシリトールがなぜ虫歯になりにくいのかを簡単にご説明しましょう。

虫歯の原因となる酸は、口内に住み着くミュータンス菌などが糖質をエサとして作り出します。
しかしキシリトールはミュータンス菌のエサとならないため、酸が発生しにくく虫歯の原因となりにくいのです。

糖質は砂糖だけではありません。炭水化物や果物、乳製品などの糖分も含まれます。
これらは唾液の中の消化酵素「アミラーゼ」によって糖に分解されるのです。

しかしもともと犬はアミラーゼの分泌が弱いので、キシリトール以外の糖分を摂取したところで虫歯になる危険性は低いのです。
また、虫歯が発生しやすいのは酸性の環境です。
犬は口の中がアルカリ性のため、虫歯のリスクはさらに低下します。

こうした特性を持つ犬にとって、キシリトールはあまり必要のない成分だと言うことができます。

まとめ

虫歯予防や歯を強くする作用を持つキシリトールは、私たち人間にとってはオーラルケアの心強い味方となってくれます。(ただし人間に対しても、アレルギー発症の可能性が指摘されています。)

しかし犬にとっては毒性が強く、時には命にかかわるほどの重篤な症状を引き起こす危険性があります。
少なくなったとはいえ、まだキシリトール入りのフードが出回っていないとまでは言い切れません。
間違って犬に与えないように、ドッグフードやおやつを購入する際にはパッケージの原材料を確認する習慣をつけましょう。

虫歯には強くても、犬は歯周病になりやすい動物です。
キシリトールなどリスクの高い成分に頼ることなく、毎日の歯のケアや定期的な検診などによって愛犬の歯の健康を守ってあげることが私たち飼い主には求められています。