ドッグフードの表示の基準
日本におけるペットフードの表示に関する基準は、「ペットフード公正取引協議会」の定める「ペットフードの表示に関する公正競争規約」によるものと、「ペットフード安全法」の設ける基準の二種類があります。
ペットフード安全法の定める5項目に、公正競争規約で定められた4項目を追加した全9項目が、日本におけるペットフードの必要表示事項です。
- ペットフードの名称
- 原材料名
- 賞味期限
- 事業者の氏名または名称・住所
- 原産国名 …ペットフード安全法による基準
- 成分
- 目的
- 内容量
- 給与方法 …ペットフード公正取引協議会による基準
この表示方法にのっとり、記載が行われています。
ペットフード安全法に関して詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
→ドッグフードに関する法律の内容と問題点
ペットフード公正取引協議会についての詳細は、下記の記事を参照してください。
→ペットフード公正取引協議会の基準をクリアしたドッグフードとは?
それでは、具体的にどのような表示義務が定められているのでしょうか。
まずは必須の9項目について、詳しく見ていきましょう。
ペットフードの名称
ペットフードの商品名を記載します。
その商品が「犬用であるのか、猫用であるのか」をしっかりと明記する必要があります。
「ドッグ○○」や「キャット○○」といった商品名であればそのままでも問題ありませんが、わかりにくい名称の場合は、パッケージなどに「犬用」または「猫用」の文字を入れなければなりません。
原材料名
原則として、使用した原材料(添加物も含む)をすべて記載します。
基本的に、使用料の多い順から記載する決まりです。
しかし原材料に使用した添加物に関しては、メーカー側の判断にゆだねられており、表記は任意ということになっています。
また、添加物の用途によっては、一括名による表記が可能(※)になります。
※例えば、微量の物質を調合して香料を作る場合は、「アセト酢酸エチル・アセトフェノン」などのように個々の物質名を記載するよりも、一括して「香料」と表示したほうがわかりやすくなります。以下の14種の用途で使用する際は、使用の目的を表す「一括名」での表示が可能です。
イーストフード/ガムベース/かんすい/苦味料/酵素/軟化剤/調味料(「アミノ酸」など、その構成成分に応じて種類別を表示)/豆腐用凝固剤/乳化剤/ph調整剤/膨張剤(ベーキングパウダー、ふくらし粉)
賞味期限
賞味期限とは、「定められた方法によって保存した場合、期待されるすべての品質が十分に保持できる期間」のことをいいます。
ペットフード安全法では、その期間を「年月日」または「年月」の順番で記載するように定めています。
「年月」の表記の場合、その月の末日まで品質が保証されている必要があります。
また、「月年」のように通常の記載とは異なる順序で表記した場合は消費者に誤解を与えない、わかりやすい書き方をすることが求められます。
賞味期限がメーカーによって設定される場合は、期間が3年を超えないようにすることが義務付けられています。
事業者の氏名または名称・住所
ドッグフードのパッケージには、表示に責任を有する「事業者の名前」を記載する必要があります。
このとき、「製造業者」などの種別も併記します。
種別の表示は「製造業者」または「製造者」、「輸入業者」または「輸入者」、「販売業者」または「販売者」とします。
また、住所を併記することもあります。
原産国名
ドッグフードが生産された国を表記します。
この場合の原産国名とは、「製品の最終加工が完了した国」です。
例えば、
のように三か国に渡って製造が行われた場合、「最終加工を行った国」はC国になるので、「C国産」と記載します。
しかし「最終加工」は「実質的な変更をもたらす行為」のことで、「袋詰め」などの行為は含まれません。
ドライタイプの場合は「押し出し成型工程(エクストルーダー)」、ウェットタイプならば「レトルト殺菌加工」、焼き菓子タイプならば「焼成工程」が最終加工として該当します。
例えば、ドライタイプのドッグフードを以下のような経路で製造したとします。
この場合、最終加工を行った国はB国となりますので、この商品は「B国産」として表記するのが正しいやり方になります。
そのため「国産」として売られているドッグフードも、最終加工の一歩手前までは日本以外の国で行われた可能性があります。
本来、経由した国すべてを表記するのが好ましいですが、最終加工を行った国以外の記載は正常業者側の判断にゆだねられていますので、なかなか難しいところです。
成分
粗タンパク質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、水分の重量比をパーセントで表示します。
例:粗タンパク質20%以上、粗脂肪5%以上、粗繊維6%以下、粗灰分9%以下、水分12%以下
この「粗」というのは「おおよその」「だいたいの」という意味です。
食品中のタンパク質量を正確に打ち出すのはとても難しく、大まかな量しか計測できません。
こういった計算上の難しさから、「粗」という表現が使われています。
目的
目的が「総合栄養食」であるのか、または「間食(もしくはスナック・おやつ)」、「その他目的食」であるのかを記載します。
「その他目的食」は細かく分けると「一般食(おかずタイプ)」、「副食」、「栄養補完食」、「カロリー補給食」、「特別療法食」などの種類があり、それぞれの名称で書かれています。
それぞれの基準や定義については、以下の記事を参考にしてください。
→ドッグフードの種類「総合栄養食」とは?メリットと注意点
→ドッグフードの種類「間食」とは犬のおやつ!与える際の注意点は?
→副食タイプのドッグフードは犬のおかずとして与えよう
→ドッグフードの種類「栄養補助食」とは?使い方と注意点
→ドッグフードの種類「特別療法食」とは?与え方には要注意
内容量
「g(グラム)」または「kg(キログラム)」で正味量(※)を記載します。
間食(おやつ)のうち、粒の大きいものやスティックタイプのものは、「○○個」「○○本」などといった書き方をすることもあります。
※正味量とは…容器やパッケージなどの重さを含まない、実際に役に立つ部分の重さのこと。
給与方法
一日または一食に与える量が書かれています。
犬の体重などを参考にして、表や図を用いて詳細に書かれることが多いです。
不当な表示
ドッグフードの表示に関しては、以下のような表現が禁止されています。
どれも消費者に誤解を与えるものだったり、事実と異なる(法に触れる)ものであったりします。
万が一そのような表記のあるドッグフードを見かけたら、それは選ばないようにしましょう。
表示以外の部分でも、何らかのごまかしがある商品の可能性が高いです。
- とある製品に関して、他の製品よりも著しく優良であると一般消費者に誤解を与えるような表示。
- ある製品について、そのものが他の製品よりも際立って有利な取引であると、消費者の誤解を招くような表示。
- 1または2が公正な競争を阻害する恐れがある場合。
具体的な例としては、以下のようなものがあります。
断定的表現
断定的な表現は、消費者の誤解を招くため好ましくありません。
例)完全栄養食 など
食品と誤認される表現
基本的に、人の食べるもののような印象を与える表現は禁止されています。
例えばパッケージに「栄養食品」などと書かれていたら、「人間の食べ物かな?」と誤解して手に取ってしまうかもしれません。
ドッグフードと人間の食べるものとではそもそも用途が異なりますので、こういった事態は避けなければなりません。
加工食品にそぐわない表現
「新鮮」「フレッシュ」「生」などの、加工食品にそぐわない表現は避けなければなりません。
例)新鮮ドッグフード
あいまいな「無添加」の表記
「無添加」という表現は「安全」「身体によい」といった印象が強いためか、好んで記載される傾向にあります。
「無添加」の表記自体は禁止されていないのですが、使用していない添加物の具体例も挙げずに「無添加」の文字を掲げるのはよくありません。
例えば着色料や香料を添加していないのであれば、「着色料・香料無添加」と表記するのが正しいです。
誤解を与える強調表示
「一切使用していない」「○○などは一切不使用」といった強調表現は誤解を招く恐れがあるため、好ましくありません。
この場合の「一切」や「など」はそれ以外のものまで意味してしまいます。
原材料の説明以外の「天然」などの表現
原材料の説明以外で、「天然」「自然」「ナチュラル」などの表現は望ましくありません。
例)天然ドッグフード
客観的根拠のない表現
客観的根拠に基づかない「特選」や「特級」、「日本一」「ナンバーワン」などの表現は良くありません。
判定基準や比較対象がまるで分りませんし、他の商品と比較して著しく優れているという印象を受けかねないため、公正な競争ができません。
また同様に、客観的な根拠のない「ヘルシー」や「健康」などの記載もNGです。
「AAFCO認定」などの表記
「AAFCO(全米飼料検査官協会)」は、ドッグフードの栄養学的な基準値や検査方法を設けてはいますが、検査機関ではありません。
そのため、ドッグフードの認定や承認などは行わないのです。
にも関わらず、「AAFCO認定」や「AAFCO合格」などと記載した商品も存在します。
このような表現は(特に総合栄養食に関して)消費者の誤解を招く恐れがありますので、不当な表示であるといえます。
薬事法違反となる表現
ドッグフードは、薬事法によって定められた動物用医薬品および動物用医薬部外品ではありませんので、「病気(の予防)に効果がある」といった旨の表現が禁止されています。
ドッグフードで以下のような表示をすると、薬事法違反となってしまいます。
- 「予防」「改善」「痛みをやわらげる」などの、医薬品的な効能効果の表現
- 「弱りがちな」「疲労」「衰えた」などの、疾病名、病状、好ましくない意味の語句
- 「原料○○は肝臓に効くといわれている」などの、一部の原材料の薬効を表現したもの
- 効能や効果を間接的に第三者の解説などで表現すること
例)「うちの愛犬はこのフードのおかげでアレルギー症状が改善されました!」
などの一般使用者や学識者からの意見で商品の薬効を暗示させる表現 など
使用した材料の割合に誤解を与える表現
「チキン」「ビーフ」「まぐろ」などの特定の原材料を商品名とする場合は、商品中にその原材料が5%以上含まれていなくてはなりません。
例えば「ささみ」の割合が全体5%に達していないにもかかわらず、「ささみフレーク」などのような商品名にすることは禁止です。