ドッグフードで犬の皮膚が荒れる?考えられる原因と対処法

ドッグフードで皮膚が荒れたら

アレルギー性皮膚炎や涙やけなどの皮膚トラブルは、わんちゃんが獣医師にかかる理由の中で最も多いといわれています。
手足を噛んでいる、執拗に一ヶ所をかきむしるなど、痒そうにしている愛犬の姿を時々見かけるという方もいるのではないでしょうか。
瞳の大きいチワワや、鼻の短いパグやトイプードルなどによく見られる「涙やけ」も、広義では皮膚疾患の一種である場合があります。

そんな身近な皮膚トラブルですが、原因がドッグフードにあることも多いのです。
つまり裏を返せば、原因がストレスや害虫の寄生、衛生環境などではない限り、ワンちゃんの皮膚疾患の多くはドッグフードを改善することで解決するということです。

それではまずは、どのようなドッグフードがワンちゃんの皮膚トラブルを招いてしまうのかをみていきましょう。

考えられる原因

ドッグフードはどんなに安価なものでも、総合栄養食であればワンちゃんが生きるために必要な栄養素は最低限含まれています。
しかし、ドッグフードの原材料や質、わんちゃんの体質などによっては、総合栄養食を与えていても、皮膚トラブルを招いてしまう可能性があるのです。

タンパク質不足

ドッグフードでわんちゃんの皮膚が荒れる原因として、最も考えられるのが「タンパク質不足」です。
タンパク質は犬が最も必要とする栄養素で、身体をつくるもととなります。
体内に摂り込まれたタンパク質は、まずは内臓など「内側」をつくるのに優先して使われますので、皮膚や被毛などの「外側」の部分はどうしても後回しとなってしまいます。
そのため、タンパク質が十分に摂れていないと皮膚までその恩恵が届かず、皮膚トラブルを招いてしまうのです。

日本におけるドッグフード(総合栄養食)の栄養基準は、AAFCO(米国飼料検査官協会)の定めたものを採用しています(2017年現在)。
AAFCOの定める、ドッグフード中の「粗タンパク質」の最低値は、成犬用では18.0%、子犬、妊娠期の犬用のものは22.0%です。
そのため、市場に出回る総合栄養食のほぼすべては、タンパク質はこの数値以上含まれています。
しかしこれはあくまでも、「生きるうえで必要な最低限の値」です。
健全な皮膚や被毛の状態を保つには、これだけでは足りないというワンちゃんもいます。
わんちゃんの肌荒れが気になる場合は、まずはドッグフードの成分表示を見てみましょう。

一般的なドッグフードの粗タンパク質含有率は、20.0%~24.0%ほどです。
このタンパク質量でも全く問題ないわんちゃんもいれば、タンパク質不足で肌の調子が悪くなってしまう子もいます。
「高タンパクフード」と謳っているものであれば、26.0%以上が妥当かと思われます。
そして「プレミアムドッグフード」と呼ばれるものの中には、タンパク質含有率が30.0%や40.0%以上のものもあるのです。

犬はもとより肉食傾向が強く、多くのタンパク質、とくに動物由来のタンパク質を必要とする動物です。
そのため、タンパク質を摂りすぎて病気になるということはあまりありませんが(もちろん例外はあります)、タンパク質不足による症状は比較的早い段階であらわれます。
そしてそのひとつが、「皮膚疾患」なのです。

脂質不足

「太りそう」「身体に悪そう」などといったイメージから、つい避けられがちな脂質ですが、ワンちゃんにとっては重要な栄養素です。
脂質不足はタンパク質不足と同様に、皮膚疾患の原因となりうるのです。

脂質は効率の良いエネルギー源となることでよく知られていますが、それだけではありません。
皮膚や被毛の状態を良好に保つには、「皮脂腺」から分泌される「皮脂」というものが欠かせませんが、この皮脂の原料となるのが脂質なのです。
そのため脂質が足りなくなると、被毛につやがなくなり、肌のコンディションも悪くなってしまいます

AAFCOの定めた規定によれば、総合栄養食にのドッグフードにおける「粗脂肪」の最低値は成犬時5.0%以上、子犬・妊娠期には8.0%以上とされています。
市販で売られているドッグフードの多くは基準値を上回っていますので、脂質が不足することはそう多くはないかもしれません。
しかし、ダイエット用のドッグフードなどは脂質を大幅にカットしたものもあり、場合によっては脂肪分が不足してしまうこともあります。

脂質の摂りすぎは、肥満などの生活習慣病を招くこともありますので、決して良いとはいえません。
しかしかといって、極端に摂らないのもよくないのです
不健康なイメージが強い「脂質」ですが、ワンちゃんが生きるうえで必要な五大栄養素のひとつでもあります。
適切な量の脂質をわんちゃんが摂取できるよう、気を配ってあげましょう。

ドッグフードの質が悪い

タンパク質や脂質が、わんちゃんの皮膚の健康維持に必要不可欠であることは上記の通りです。
しかし量と同時に「質」も重要な要素となってきます。
どんなに量が適切だったとしても、その質が悪ければ期待したほどの効果は発揮されません。
それどころか、かえってワンちゃんの健康を阻害することもあるのです。

タンパク質は動物性のものがよい

犬は実に、人の4倍ものタンパク質を必要とします
タンパク質は犬にとって最も大切な栄養素であり、その質や量がわんちゃんの健康を左右するといっても過言ではありません。
そして犬は元来肉食動物ですので、植物性タンパク質よりも動物性タンパク質のほうが身体に適しています。
市販品のドッグフードはとくに、穀類をタンパク源(主食)として使用しているものが多いです。
可能であれば、動物性たんぱく質-つまり肉や魚-を主原料にしたドッグフードを選んであげましょう
穀類メインのドッグフードは犬にとっては消化が難しく、そこから引き起こされるタンパク質不足によって肌荒れを起こす可能性があるためです。

とはいえ動物性ならばなんでもよいというわけではなく、きちんとした肉(または魚)が使用されているものを選ぶことも大切です。
「きちんとした肉(魚)」というのは、「極端に品質が低くなく、可食部分を使用している」という意味です。
ここで、「すべてのドッグフードはきちんとした肉を使用しているんじゃないの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。
しかしドッグフード、特に低価格帯のものには、本来なら食べられないような部位(頭やとさか、つめ、くちばし、羽など)や、何の動物かわからないような肉が使用されていることもあるのです。
このような品質の肉類(タンパク源)が使用されたドッグフードを食べさせても、ワンちゃんの体調が快復しないということは、想像に難くないと思います。

粗悪な肉類を使用しているドッグフードの場合、原材料表示には「肉類(牛など)」と漠然とした表記がされていたり、「ミートミール」「肉骨粉」など、材料の原型をとどめていないものが記載されていることがあります。
このような表記を見かけた際は、「原材料は人も食べられるものを使用しています」などの注意書きがない限り避けるようにしましょう。
「ちゃんとした肉を使用していない」フードが犬の身体によくないことは明白ですが、皮膚疾患を抱えるワンちゃんにとっては、尚更与えるべきではありません。病状が悪化してしまう可能性があります。
反対に、質のよい肉を使用しているフードには、原材料表示に「骨抜きチキン」「鶏もも肉」など、具体的な表記がされていることが多いです。
「ヒューマングレード(人間も食べられる)」の記載があれば、より安心です。
皮膚にトラブルのあるワンちゃんには、良質なタンパク質を摂らせてあげるようにしましょう。

ドッグフードに使用される肉の品質に関しては、以下の記事を参考にしてください。
 →ちゃんとした肉の入っているドッグフードを選ぼう!

「動物性油脂」は避ける

「脂質」の質もまた、皮膚病を治すうえで重要なポイントになってきます。
総合栄養食のドッグフードには、栄養バランスを整えるために油(脂肪分)が添加されることがありますが、この油の質は上から下まで非常に差があります。
特に、「動物性油脂」の表記があるものには注意が必要です。

「動物性油脂」とはその名の通り「動物の油」ですが、この動物性油脂の原料が一体どんな動物であったかまではわかりません。
なかには道端に落ちていた死骸や、病気で亡くなった動物を混ぜ合わせて油を抽出している、という話さえあります。
真偽のほどは定かではありませんが、漠然と「動物性油脂」としか書かれていない以上、可能性が捨てきれないことは確かです。
そういった粗悪な油は酸化しやすく、強力な酸化防止剤が添加されてしまうという問題点もあります。
決してワンちゃんの身体によいとはいえませんので、動物性油脂が使用されているものはなるべく避けるようにしましょう。
「サーモンオイル」や「ごま油」など、具体的な表記がされているものは比較的安心です。

あまりに添加物の多いものは避ける

ワンちゃんが皮膚トラブルを発症してしまう原因の一つとして、ドッグフードに含まれる添加物が挙げられます。
酸化防止剤や着色料、保湿剤などが代表的ですが、安価なドッグフードには特に添加物が多く使われる傾向にあります。
ドッグフードが加工品である以上、多少の添加物は必要になってきますし、添加物がすべて悪というわけではありません。
しかし必要以上の添加物()や、安全が確認しきれていない添加物の摂取は、ワンちゃんの身体に悪影響を及ぼします。
中にはそれがアレルギーという形で発症し、皮膚炎に発展してしまうケースもあるのです。
また、添加物の影響で腸内環境を悪くしてしまい、皮膚や被毛のコンディションが下がることも考えられます。

無添加とまではいかなくとも、危険な添加物が使用されていないものや、必要最低限の添加物のみにとどめられているフードを選んであげましょう。
皮膚だけでなく、身体全体の健康維持のためにも必要なことです。

※必要以上の添加物…売られているドッグフードの中には、粗悪な原材料をごまかすために大量の添加物を使用しているもの(栄養の添加、嗜好性の向上、匂いの上書きなど)や、着色料など犬の健康や嗜好性に直接関係のないもの(犬は色によって食欲を刺激されることはありませんので、人間の購買意欲を高めることのみを目的としている)を使用している商品があります。
原材料にきちんとしたものを使用していれば、本来は添加する必要のないことが多いです。

ドッグフードにアレルゲンが含まれている

皮膚トラブルの原因として考えられるもののひとつに、「アレルギー性皮膚炎」があります。
特定の食べ物を身体がアレルゲンとして認定することにより、皮膚の痒みなどが症状として出てしまうのです。
どんなに質の高いドッグフードでも、ワンちゃんのアレルゲンとなりうるものが原材料として使用されている場合は、病状が回復する可能性は低いです。

動物病院などでアレルゲンを特定してもらい、該当した食べ物を含むドッグフードは与えないようにしましょう。

対処方法

皮膚トラブルの原因がドッグフードにある場合、どのような対処法をとればよいでしょうか。
ドッグフードがワンちゃんに合わない、単純に栄養が足りていない場合など、原因によって適切な方法は変わってきますので注意しましょう。

ドッグフードの上手な切り替え方とは?

手っ取り早い手段として、「ドッグフードを切り替える」というものがあります。
粗悪なものから良質なフードに変更する、アレルゲンの含まないものに切り替えるなど、「普段与えているドッグフードに好ましくないものが含まれている」場合に有効です。
しかし主食であるドッグフードを頻繁に替えることは、ワンちゃんにとっての負担・ストレスになります。
切り替える場合は、新しく与えるフードの原材料や栄養価などをよく吟味したうえで、慎重に選ぶようにしましょう。
また、購入したその日にすぐに新しいものに切り替えることはせず、消化器に負担がかからないように徐々に切り替えてあげましょう
 →ドッグフードの切り替え方法

タンパク質や脂質不足の場合

タンパク質や脂質の含有量の少ないドッグフードを与えていた場合、それよりも含有量の多いフードに切り替えてもよいでしょう。
ドッグフードのパッケージ袋には、「成分表示」があります。
その「タンパク質」「脂質」の含有量を今までのフードと比べてみてください。
一般的に、タンパク質の過剰摂取によって引き起こされる弊害は、タンパク質不足の場合よりも少ないとされています。
ですので思い切って、タンパク質をかなり多く含んだフード(30%以上など)を選んでもよいでしょう。
脂質の場合は摂りすぎると肥満などの生活習慣病を誘発しますので、あまりにも「粗脂肪」の多いものは避けたほうが賢明かもしれません。

ドッグフードの質が悪い場合

ドッグフードの原料が穀類主体になっている、またはきちんとした肉が使用されていない場合はフードを切り替えることをおすすめします。
一般的にプレミアムドッグフードと呼ばれる、高品質な肉を主原料とし、穀類や添加物の使用を抑えた商品もありますが、これらは皮膚病改善に効果的です。
良質なタンパク質と脂質、穀物不使用、危険な添加物を使用していないなど、ワンちゃんの身体を整える要素が軒並みそろっています。
価格帯は高めですが、可能な範囲でプレミアムドッグフードに切り替えてみるのもひとつの方法かもしれません。

ドッグフードにアレルゲンが含まれる場合

ドッグフードにアレルゲンが含まれている場合は、ドッグフードを切り替えてあげる必要があります。
動物病院でアレルギーの原因である食品(または添加物)の特定が済んだら、該当の原材料が使用されていないフードを選んで替えてあげましょう。
鶏肉や牛肉などのメジャーな材料にアレルギーを持つわんちゃんのために、比較的アレルゲンとなりにくい鹿肉や羊肉、馬肉を主原料としたドッグフードも売られています。
そういったドッグフードの購入が難しい場合は、手作り食に切り替えるという手もあります。
どちらにせよ、食生活を見直すことでわんちゃんの皮膚の状態が回復する可能性は大いにあります。
少々手間ではありますが、愛犬のためにも面倒くさがらず対応してあげるようにしましょう。

普段の食事にひと工夫する

「今のフードを愛犬が気に入っているから、できれば替えたくない…」
「フードがまだたくさん残っているから捨てたくはないけれど、愛犬の体調も気になる」
そういった理由から、むやみにドッグフードを切り替えたくない、という飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
実際、頻繁なフードの切り替えはワンちゃんの身体に負担をかけます。
アレルゲンが含まれている、質があまりに悪いなど、よほどフードに問題がない限りは、切り替えずに対処していきたいですね。
そのための方法をご紹介します。

基本的には、「足りない栄養」を補う食材を「トッピングする」形になります。
カロリー過多や栄養の偏りの原因となりますので、トッピングをする際は、フードの量を普段の4分の3程度に減らしてあげましょう。

  • タンパク質不足の場合…鶏ささみなどのタンパク質を多く含む食材をトッピングしてあげましょう。
  • 脂質不足の場合…スプーン1杯かそれ以下のオリーブオイル、サーモンオイル、ごま油などの良質な油をフードに振りかけてあげましょう。
  • 酵素不足の場合…市販のドッグフードにはほとんど含まれていないとされる酵素も、ワンちゃんの皮膚病改善に効果的です。キャベツなどの生野菜などに多く含まれています。酵素は加熱によって失われてしまうため、生食できるものをトッピングしてあげてください。

特定の栄養が足りずに皮膚トラブルを起こしているワンちゃんの場合は、トッピングをしてあげるだけでも病状が改善することがあります。
ワンちゃんが安全に食べられる食材をよく調べたうえで、適切な量を与えるようにしましょう。
 →市販のドッグフードにトッピングしてみよう!方法と注意点を解説

まとめ
以上、わんちゃんの皮膚トラブルとドッグフードの関係についてご紹介しました。
皮膚荒れの原因のすべてがドッグフードであるとは限りませんが、食生活と皮膚のコンディションは非常に密接な関わりがあるといえます。
ですので、愛犬の皮膚の状態が悪いと感じたら、まずはドッグフードが合っているか、品質はどうかなどを確認しておくのもひとつの手です。
適切な知識を身に着けて、ワンちゃんに合ったドッグフード選びをしてあげるようにしましょう。

それでも改善が見られない場合は、きちんと獣医さんの診察を受けることをおすすめします。
皮膚疾患は、目に見えて症状が表れやすい病気ですので、飼い主さんによる早期発見が比較的容易でもあります。
日頃から愛犬の様子を、しっかりと見てあげてください。