ドッグフードの着色料「青色1号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「青色1号(ブリリアントブルーFCF)」

青色1号(ブリリアントブルーFCF)は、食品に使用することで青く爽やかなイメージを演出できる着色料です。
ワンちゃん用のフードやおやつを始め、人が食べるお菓子や漬物、飲み物などにも使用されています。

希釈次第で深い青色から透明感のある水色まで表現できる青色1号を使った代表的な食品には、鮮やかな水色のかき氷シロップが挙げられます。
その他にも、カクテルに使用される青い色のリキュール、ラムネ味やソーダ味の飴やグミ、ジュースなどにも頻繁に添加されています。

このように、青色1号は日本において高頻度で使用されている着色料であるため、市販されている食品の原材料欄で一度は目にした経験のある方も多いことと思います。
巷では「青色1号は発ガン性の高い危険な色素である」という説も流れていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

着色料「青色1号」の特徴

青色1号は、「あおいろいちごう」、もしくは「せいしょくいちごう」と読み、天然には存在しない合成着色料の一種です。

青色1号には、「ブリリアントブルーFCF」という別名称もあります。
「FCF」の由来は、「食べ物に使用される着色料」を表す「For Coloring Food」の頭文字ではないかと推測されていますが、確かなことは分かっていません。
命名した人が適当に付けた言葉であり、あまり深い意味はないのではないかともいわれています。
常温では粉末状で匂いのしない青色1号は、水やアルコールには溶けますが、油には溶けにくい物質です。
光や熱、酸などでも壊れにくく安定しています。

青色1号は食品に使用される以外にも、動物用や人用の医薬品(カプセル、うがい薬への着色など)、化粧品など幅広い商品に添加されています。
また青色1号は単独で使用される以上に、他の色と混ぜ合わせて使われていることも多い着色料です。
具体的には、青色1号と黄色の色素と混ぜて緑色を作ったり、そこに赤色を加えてチョコレートのような茶色を作り出すために頻繁に利用されています。

青色1号は「タール(系)色素」と呼ばれることがありますが、これは、過去にコールタール(石油を分解して得られる物質)から作られていたため、慣習的に現在でもこの呼称が使われているのです。
しかし、2017年現在はタールから製造されることはなく、石油を精製する際に得られるナフサが原料となります。

青色1号の発がん性についての議論

青色1号の発がん性においては、「発がんリスクが高い」という意見と「安全性が高い」という意見が対立しています。

まずは「発がんリスクが高い」とする意見からみていきましょう。
青色1号でがんが発症する可能性があるという見方は、ラットの実験結果を根拠としています。
94~99週間にわたり、ラットに皮下注射で青色1号を与えた際に、実験に用いたラットの7割以上に発がんが認められたというのです。

しかし、これに反論する意見もあります。
ラットの寿命は2年強、どんなに長くても3~4年(ラットの系統によって差があります)であるため、加齢による発がんの可能性が否定できないのではないかという見解です。

確かに、上記の実験において、青色1号の投与期間は94週間以上という長期間です。
1年は約52週間ですから、2年近くの期間に渡って実験が行われたということになります。
長い年月を生きる人間と、平均で2年強程度の寿命のラットでは、老化速度が全く違います。
ご存じの通り、がんは年齢と共に患者数が上昇します。
実験期間中にラットがどんどんと老化していき、青色1号の作用とは関係なく、がんが発症したのではないかという考え方も可能なのです。

また、実験では注射によって直接ラットの体内に投与されていますが、通常ワンちゃんや人間が青色1号を摂取する場合には口から取り込みます(経口摂取)。
青色1号は消化器官からの吸収性は低く、そのほとんどが排泄されるといわれるため、経口摂取では皮下摂取ほどの毒性を表さないのではないか、という意見もあります。

IARC(国際がん研究機関)(※1)においても、青色1号は「グループ3」と呼ばれる「人間に対して発がん性が分類できない」という項目に分けられています(※2)。
これは、「動物実験においても人間に対しても、発がん性を示す根拠が不十分である物質」が分類される項目です。
グループ3には青色1号の他に、カフェインや原油なども含まれています。

このように、青色1号の発がん性についてはハッキリとしたことは判明していないのが実情です。
「危険な添加物である」と言い切ることもできなければ、ハッキリと「安心して口にできる」とも言い切れないのです。

※1 IARC(国際がん研究機関)・・・WHO(世界保健機関)に属し、ガン発症のメカニズム、原因、対策などを多角的に調査検討する期間です。

※2 国際がん研究機関では、さまざまな物質の発ガン性を、どの程度の根拠があるかを基準に分類しています。各物質は、人に対する発ガン性が「ある」、「おそらくある」、「可能性がある」、「分類できない」、「ない」の5段階に分けられています。

青色1号に疑われているその他の危険性

残留している不純物の安全性は未確認

日本では使用が許可されている青色1号ですが、ベルギーやスイス、ドイツ、オーストリア、ノルウェーなど、使用禁止としている国々も存在します。

青色1号は、まれに刺激性をもたらしたり、アレルギーを誘発するという報告があります。
この原因ではないかといわれているのが、青色1号に含まれる不純物です。

青色1号に限らず、「○○色××号」という名の付く着色料は、「15%未満であれば不純物が残留していてもよい」と認められています。
そのため、製品化されている着色料には、原料由来の正体不明の不純物がいくらか混ざっている場合があり、それらが刺激やアレルゲン(アレルギーを起こす物質)となる可能性が指摘されているのです。

前述のように、青色1号に対する毒性実験は行われていますが、含有される不純物に対する危険性のチェックまではなされていません。
このような現状と、発がんリスクの疑いが完全に払拭されていないという理由などから、上記の国々では青色1号の使用が禁止されているといわれています。
またこれらの国々では、青色1号よりも安全に使える着色料が存在するため、安全性が疑問視されている青色1号をあえて利用する意味がない、という理由もあるようです。

しかしこうした考え方にも、「代替品となる青い着色料であれば日本にも存在するが、青色1号の使用は禁止されていない。これは青色1号の危険性が低いからではないか」という反対意見が出ています。
この点においても、発ガン性と同様さまざまな推測がなされており、明確なことは分かっていません。

アルミニウムレーキについての問題

青色1号は水に溶けやすい物質ですが、水酸化アルミニウム化合物と結合させると水に溶けにくくなります。
また、均一に着色することが容易となるメリットなどもあります。
こうした効果を狙って作られたものが「青色1号アルミニウムレーキ」です。

以前より、「アルミニウム」にはアルツハイマー型認知症の原因となるという説がささやかれていました。
そのため、「青色1号アルミニウムレーキも危険である」という意見も根強くあるのです。

しかし、EFSA(欧州食品安全機関)(※3)は2008年に、「食品からの摂取によってアルツハイマー型認知症の発症率が上がるとは考えられない」といった内容の発表を行っています。
また2011年には、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)(※4)が、「アルミニウムとアルツハイマー型認知症発症との因果関係を証明するだけの根拠がない」と発表しているのです。

ただし、アルツハイマー型認知症との関連性は薄くても、アルミニウムにはその他の危険性が確認されています。
ラットを用いた実験において、アルミニウムの大量投与により、神経系や生殖器系の発達や膀胱、腎臓機能への悪影響、握力の低下などが確認されているのです。

こうした理由からアルミニウムには、人間へ向けての暫定的な摂取基準が存在します(1週間で体重1kg当たり2mgまで)。
このようなリスクをはらむアルミニウムを含んでいることから、青色1号アルミニウムレーキも、愛犬に安心して摂取させられる添加物であるとは判断できません。

※3 EFSA(欧州食品安全機関)・・・2002年に、食品や飼料のリスク評価や、それをもとにした安全性の情報提供などを行うことを目的に設立されました。食品や飼料の他、添加物やサプリメント、農薬、動物の健康など幅広い項目について取り扱っています。

※4 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)・・・FAO(食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)によって1955年に組織された機関です。各国の専門家が集まり、食品添加物の安全評価を行ったり、摂取の基準を作成しています。

敗血症で青色1号の吸収率が上がるという報告がある

青色1号は消化器官から吸収されにくく、ほとんどが排泄されてしまうといわれています。
しかし、人間の敗血症(※5)患者において、青色1号の吸収率が上昇し死亡したケースが確認されているのです。
青色1号は食品や化粧品に対しての着色料となるだけでなく、医療行為の補助的な目的で使われることもあります。
敗血症患者に青色1号を使用した医療行為を施したところ、腸からの吸収率が上がり、排泄物や血清、皮膚に至るまで青く変色し、死亡するケースもみられたという報告があるのです。

これは例外的なケースであり、健康体であるワンちゃんがフードから青色1号を摂取した場合とは全く異なる状況です。
そのため、単純に比較して危険視することはできません。
しかし、敗血症はワンちゃんにも起こる病気です。
このような病気を抱えている場合には、青色1号の吸収性がアップしてしまう可能性がある、ということは覚えておいても損はないでしょう。

※5 敗血症・・・細菌が血液中に入り、全身に重篤な症状をもたらす病気です。嘔吐、発熱、呼吸数の増加、食欲や活動性の低下といった症状がみられ、悪化すると死亡するケースもあります。
腎盂炎や子宮蓄膿症、腹膜炎などの内臓疾患が原因で発症することがあります。
通常、血液中に細菌が入っても、健康なワンちゃんであれば免疫で対処が可能です。しかし病気中のワンちゃんやシニア犬、子犬など免疫力が弱っていたり未熟なワンちゃんの場合には、敗血症に移行することがあるため注意が必要です。

脊髄損傷の治療に有効と確認される

危険性がハッキリとせず、つかみどころのない印象を与える青色1号ですが、薬として利用できる可能性も出てきています。
青色1号には、神経に炎症をもたらす仕組みを断ち切る働きが確認されているのです。
脊髄を損傷させたラットの血管へ青色1号を投与することにより、回復までの期間が早まるということが実験によって確認されています。
しかし、目や皮膚、脊髄までもが青く染まってしまうという副作用があることや、治療への実用化には更なる臨床試験を重ねなければならないことなどから、まだまだこれからの研究であることが分かります。

まとめ
青色1号は、IARCやJECFAといった公的な機関において、明らかな健康へのリスクは明言されていない添加物です。
使用を禁じている国もありますが、日本以外でも多くの国々で幅広く使われている着色料でもあります。
青色1号を食品に使用する際には、総量の約0.01%というごく少ない割合で使用されるということも、安全性が高いといわれる根拠となっています。

とはいえ、青色1号に関する発がん性を始めとした安全性に関しては、専門家の中でも意見が分かれているのが実情です。
治療薬として応用できるかもしれないと期待されてはいても、ドッグフードの中に含まれている程度の量では薬効は期待できないでしょうし、そもそも健康なワンちゃんにとっては必要のないものです。

ワンちゃんたちは食べる物を自ら選ぶことはできません。
「健康に悪いとハッキリ分かるまでは、気にせずに与える」のか、「リスクが明確に分かっていないからこそ警戒する」のか、ワンちゃんにとってはどちらが有益なのかを考えて判断したいですね。