ドッグフードの原材料「タラ」はヘルシーな魚!犬への注意点は?

ドッグフードの原材料「タラ」

淡白でクセのないタラは、どんな料理にもしっくりと馴染み、昔から日本人に愛されてきた魚です。
真っ白な身の味や食感からも想像できる通り、タラは非常に脂肪分が少なく低カロリーであることが大きなセールスポイントです。
消化性も高いため、ワンちゃんのお腹に優しいというメリットもあります。
ここでは、タラの栄養素やどのようなワンちゃんにオススメか、気を付けたい鮮度や寄生虫などについて詳しくみていきたいと思います。

タラといえば「真鱈」

タラ(鱈/たら)は、タラ目タラ科に属する白身の魚です。
日本人になじみ深いタラの仲間には、スケトウダラやコマイ、マダラなどがいますが、中でも最も食べられている種類はマダラ(真鱈)です。
一般的には「タラ」といえば「マダラ」を指すケースが多く、鍋物や焼き物、刺身、乾物など幅広く利用できることも魅力のひとつです。
スケトウダラは身が傷みやすいため、そのままの状態(加工されていない状態)で食べられることはあまりありません。
スケトウダラの身はかまぼこやちくわに、卵巣は明太子やタラコとして利用されます。

タラが最もおいしくなる時期は12~1月頃です。
毎年初雪が見られる時期から漁獲量が増えることから、「雪」という漢字が当てられて「鱈(たら)」と書くようになったといわれています。
また、身と腹部が雪のように白いことから名付けられたという説もあります。

タラはドッグフードの原材料としても非常に人気が高い魚です。日本産外国産を問わず、ドライフードやウェットフードなど多くの種類が販売されています。
肉類にアレルギー持つワンちゃんのために作られた、アレルギー専用フードのタンパク源として用いられることもあります。
ワンちゃん用のおやつでは、さばいたタラを干して乾燥させたものや、細かくしてふりかけにしたものなどが多く売られています。

タラは非常にヘルシーな魚

脂肪分の含有量が極端に少ない

タラとその他の魚類の各種栄養素の含有量
(可食部100g当たり)
タラ 真アジ ニシン マイワシ
カロリー kcal 77 121 138 216 217
タンパク質 g 17.6 20.7 22.5 17.4 19.8
脂質 g 0.2 3.5 4.5 15.1 13.9
ビタミンA μg 9 10 27 18 40
ビタミンC mg 微量 微量 1 微量 微量
ビタミンB1 mg 0.1 0.1 0.26 0.01 0.02
ビタミンB2 mg 0.1 0.2 0.15 0.23 0.29
ビタミンB6 mg 0.07 0.4 0.41 0.42 0.44
ビタミンB12 μg 1.3 0.7 9.4 17.4 9.5
ビタミンE mg 0.8 0.4 1.3 3.1 0.7
ビタミンD μg 1 2 33 22 10
カルシウム mg 32 27 10 27 70

上記の表は、タラをはじめドッグフードに利用される魚類の栄養素を比較したものです。
注目すべきタラの栄養素の箇所を赤く表示しています。

タラの栄養素の最も大きな特徴といえば、極端な脂肪分の低さではないでしょうか。
100g中約3.5gの脂肪分を含んでいるマアジでも低脂肪と呼ばれる中、タラの0.2gという脂質の少なさは群を抜いています。
その反面タンパク質量は多く、100g中17.6gも含まれています。これは和牛の肩肉(17.7g)や鳥の手羽肉(17.5g)、豚の肩ロース(17.1g)などと同程度のタンパク質量です。

タンパク質は多くても脂質が少ないタラは、カロリーもコレステロール値も低く、肥満や生活習慣病の予防に役立つといわれています。
さらにタラの身は消化吸収性にも優れており、胃腸に負担をかけにくいというメリットもあるのです。
そのためタラを使ったフードは、ダイエットを頑張っている太り気味のワンちゃんを始め、消化器官の発達が未熟な子犬や胃腸機能が衰えたシニア犬などには非常に適しています。
また、病気などで一時的に消化機能が落ちているワンちゃんや、まだ体力が戻りきっていない病気の回復期などにもオススメです。
このような特徴があるタラは、私たち人間が入院した際の病院食や、赤ちゃんの離乳食などにも頻繁に使われています。

その一方で、仕事をする(警察犬や盲導犬、牧羊犬など)、スポーツをする、散歩の時間が長いなど活動量の多い成犬の場合には、タラのみの食事は少々物足りないかもしれません。
脂質などもしっかりと含有した食材をプラスして、エネルギーを補給してあげる必要があるでしょう。

 

抗酸化力を持つグルタチオンが豊富

タラには、グルタチオンというペプチドが豊富に含まれています。
グルタチオンは、グルタミン酸とグリシン、システインという3種類のアミノ酸が連結した化合物(ペプチド)であり、非常に強力な抗酸化作用を有しています。
活性酸素を除去し、ワンちゃんの細胞を酸化から守ることにより、ガンや高血圧、心臓病などさまざまな生活習慣病や、老化の促進を防ぐことができると期待されているのです。

グルタチオンには、ビタミンCを再生する働きも認められています。
ビタミンCは体内で抗酸化力を発揮し尽くすと、それ以上働けなくなります。
この役目を終えたビタミンCをもう一度活性化し、再び活性酸素を除去できる状態へと戻す作用がグルタチオンにはあるのです。
そのため、タラとビタミンCを含む食材()を一緒に与えると、ダブルの抗酸化力が期待できるでしょう。

また、グルタチオンは、体内に溜まった老廃物や有害物質などを体外へと排出しやすくする働きもあるといわれています。
その排出効果は強力で、ガン細胞はグルタチオンを多く溜め込むことにより、薬剤や放射線治療などから身を守っているため治療効果が上がらないことがあるという研究結果も出ているほどなのです。

※ビタミンCの含有量が多い食材には、ブロッコリーや赤ピーマン、サツマイモなどがあります。
特にサツマイモのビタミンCはでんぷん質に守られており、調理による損失が少ないというメリットがあります。

ワンちゃんは人間とは異なり、ビタミンCを体内で合成することができます。
しかし、病気やストレス、激しい運動などで消費されて足りなくなる可能性も指摘されているのです。
余分に取り過ぎたビタミンCは体外へと排泄されるため、健康被害の可能性は低いといわれています。
そのため、ワンちゃんにビタミンCを補給してあげることはメリットこそあれ、デメリットは低いと考えられます。

カルシウムとビタミンDの相乗効果が期待できる

イワシには劣るものの、タラのカルシウム含有量は100g中32mgと高めです。
タラだけでなく、魚は全体的にカルシウムが豊富な食材ではありますが、その吸収率は決して高くはありません。

カルシウムに限らず、食品に含まれる全ての栄養素は、体内で吸収・利用できる量に限りがあります。
例えば、ワンちゃんが食べたタラに32mgのカルシウムが入っていても、32mg全てを摂取できるわけではないのです。
どの程度体内に吸収されるか(吸収率)は、栄養素の種類によってさまざまです。
また、その栄養素が含まれている食べ物の消化のしやすさや、摂取する側の生き物の消化器官の能力、体内の他の栄養素とのバランスなど、様々な要因によって変動します。

カルシウム吸収率が最も高い食品は牛乳で、平均で約40%ほどの吸収率を誇ります。
対して野菜類は最も低く、平均で約19%、少ない場合には5%程しか吸収されないといわれています。
では魚はどうかといえば、牛乳と野菜類の中間程度の33%が平均的です(正確には25~53%程度と差があります)。
このカルシウムの吸収効率をアップさせる栄養素がビタミンDです。

ビタミンDはカルシウムを体に吸収されやすくしたり、歯や骨に沈着することをサポートします。
さらにカルシウムが体外へ出て行かないようにコントロールしたり、欠乏した場合には骨から引き出す役割も持っているのです。

タラのビタミン類は、脂質とともに肝臓や精巣(白子として食用になります)に集中しており、身にはそれほど多く含まれていません。
しかし、他の魚類との比較ではなく、タラの中だけで考えるのであれば、ビタミンD(とビタミンB12)の含有量が多いことが分かります。
したがってワンちゃんにタラを与えることにより、ビタミンDとの相乗効果でカルシウムを効率的に摂取させることが可能となるのです。

ビタミンDは熱や酸化にも強いため、手作り食の調理時に壊れにくいという特徴もあります。
安心してしっかりとタラに火を通すようにしましょう。
タラの身は加熱しても硬くなりにくく、ホロリとほぐれやすいので、口の小さいワンちゃんのために細かくしてあげることも簡単です。

ビタミンB12で貧血予防

タラにはビタミンB12も多く含まれます。
ビタミンB12は葉酸と協力し合って血液中の赤血球を作り出す「造血のビタミン」として知られています。

また、ワンちゃんの遺伝情報(体の設計図のようなものです)が詰め込まれたDNA(デオキシリボ核酸)の合成には葉酸が不可欠ですが、葉酸を正常に働かせるためにはビタミンB12が欠かせません。
ビタミンB12には、末梢神経の傷を修復することにより、首や肩のこり、手足のしびれを改善する効果も認められています。また脳神経にも作用し、ワンちゃんの睡眠リズムを安定させる働きもあるのです。
ビタミンB12に関する詳しい情報はこちらの記事をご確認ください。
 →ドッグフードの栄養素「ビタミンB12」の働きと欠乏のリスクとは?

タラを愛犬に与える際の注意ポイント

水分の多いタラは鮮度が落ちやすい

低脂肪なうえに消化の早いタラはワンちゃんの体に優しい食材ですが、あっという間に鮮度が低してしまうという欠点もあるため、ご家庭で調理をする場合には特に気を付ける必要があります。

タラにはうま味成分であるイノシン酸やグルタミン酸が豊富に含まれています。
そのため、脂肪が少なく淡白な味の中にも深みを感じ、おいしく食べることができるのです。
しかしこのイノシン酸という物質は分解速度が非常にはやいため、タラの鮮度低下とともに味が急激に落ちていきます。
また、タラは古くなると独特なニオイを放つのですが、その臭さはイノシン酸が分解されることによって発生するのです。

もともとタラは身の中の水分割合が83%と多く、非常に鮮度が落ちやすい魚です。
含有量は多くありませんが、タラには酸化しやすいDHA(ドコサヘキサエン酸)(※1)やEPA(エイコサペンタエン酸)(※2)などの脂肪酸も含まれています。
時間経過とともにこれら脂肪酸が酸化すると、過酸化脂質へと変化し、ワンちゃんの体内に取り込まれることで生活習慣病や老化を引き起こす原因となる可能性もあるのです。

このように、鮮度の落ちたタラを愛犬に与えることは味の問題だけではなく、深刻な健康被害をもたらすリスクもあります。
ワンちゃんには極力新鮮なタラを選んであげるようにしましょう。 新鮮なタラは、以下のようなポイントに注意をして見分けることができます。

  • 身に透明感があり、淡いピンク色をしている(切り身の場合)
  • 身がみずみずしく、張りがある
  • 皮にツヤがあり、ぬめりが見られない
  • 目が黒く潤んだように見える(一匹丸ごと買う場合)
  • 表面のまだら模様がくっきりとしている(真鱈の場合)

以上のような点に気を付けて購入した後も、低温化で保管し、なるべく早く調理してワンちゃんに食べさせてあげましょう。

※1 DHA(ドコサヘキサエン酸)・・・脂肪酸の一種であり、血管を柔らかくして血流を改善する効果があります。目や脳に含まれる成分でもあり、視力の維持や白内障予防、記憶力を良好に保つなどの働きも期待できます。

※2 EPA(エイコサペンタエン酸)・・・DHAと同じく脂肪酸の仲間です。血液の凝固を防ぐことによって、血がスムーズに流れることをサポートする働きを持ちます。血栓の予防効果が非常に高いといわれています。

寄生虫が潜んでいることがある

タラには、アニサキスシュードテラノーバといった寄生虫の幼虫が潜んでいる可能性があります。
アニサキスもシュードテラノーバも生きたまま体内に入ると、ひどい腹痛や嘔吐、じんましんなどを引き起こすことがあります。
ワンちゃんの強力な胃酸でも、これらの寄生虫を殺すことは不可能ですので、誤って食べてしまわないように取り除いておくことが大切です。
それぞれの特徴は以下の通りです。

アニサキス
全長2~3cm程度で、白っぽく透き通った糸のような姿をしています。渦を巻いたように、小さくくるりと丸まって潜んでいることも多いです。
シュードテラノーバ
アニサキスよりもやや長く(3~4cm)、太めの寄生虫です。丸まっていることはなく、糸くずのような状態で寄生しています。色も茶褐色や薄ピンク色をしているため、白いタラの身の中にいる場合には、発見しやすいでしょう。

どちらの寄生虫もマイナス20℃以上で1日以上冷凍すると死滅させることが可能なため、購入する際に冷凍されたタラを選ぶという方法でも、リスクを避けることができます。
また、60℃以上の温度で1分以上加熱することでも死にますので、しっかりと加熱調理することも大切です。

まとめ
タラの最大の魅力は高タンパクで低脂肪、低カロリーであるという点です。
肥満のワンちゃんにとっては良いダイエット食として利用できますし、消化器官が弱いワンちゃんの体にも非常に優しいという便利な食材です。
ビタミンの含有量が全体的にやや少ないところが残念ではありますが(※3)、ニンジン(ビタミンA)やカボチャ(ビタミンA・ビタミンE)、ブロッコリー(ビタミンE)などで補いながら、栄養満点なごはんを作ってあげましょう。

※3 「総合栄養食」と記載のあるドッグフードであれば、タラがメインの素材となっていても、ワンちゃんが1日に必要とする栄養素はまかなえるように作られています。手作り食にタラを用いる場合には、栄養が偏らないようにビタミンやミネラルのバランスに注意をしましょう。